夢見の森
ご覧いただきありがとうございます!
300万PV!たくさん見て頂けてるようでとても嬉しく思います!
これからもミツキの物語をお楽しみ下さい!
ヴァイスさんに続いて森の中を進みます。
ふとマップを見ると、大陸の端が表示されました。
大陸最南端の、夢見の森。
どんな森なのか、ドキドキします。
「私から10m離れると惑わされるぞ。なるべく離れないように」
「わ、わかりました」
「了解ですわ!」
ヴァイスさんは迷いなく森の中を進みます。
ヴァイスさんは惑わされないのですね……
なにやら森の様子も、少しずつ変わって来ました。
何と言うか、可愛らしい雰囲気です。
木々は桃色や朱色に染まってきました。
「目に痛い色ですな……」
「現実的ではない色ですよね……」
「……だがモンスターの気配は一切無ェ。……でも違和感がある」
レンさんは眉間に皺を寄せながら、視線を動かします。
「探索者は何も反応しねェし、マップに変わりは無い。でも、何か変な力の気配がする」
「………君は気配に敏いな。この森は色々隠すのに適しているため、様々な遺物や都合の悪いものが埋められている」
「ひえ」
「モンスターは近寄らず、人は一度入れば出られない。そのような術式が、森には刻まれている」
そんな物騒な森なんですか、ここ!
何ですか遺物や都合の悪いものって!
「………知りたいか?」
「あ、全然知りたくないです大丈夫です」
振り返ってニヤリと笑うヴァイスさんに、即否定します。
何か厄介事な気配を察知しました。
「兄弟子さんは、何か道標のような物をお持ちなんですか?」
「そうだな。道標と言うか、管理者権限と呼べる物か」
「管理者権限」
「この森はダンジョンだと考えてもいい」
ダンジョン……ダンジョンにしては、ちょっと違いますね。
まぁ太陽島で隠れ家にしか入ったことありませんが、扉から入る、特殊な場所に作られる遺跡をダンジョンだと思っていました。
こんなオープンなダンジョンは、初めてです。
まあ遺跡もいろんな遺跡がありますからね。
オープンなダンジョンもあるのでしょう。
「と言ってもここを作り出したのは師匠と数人の賢者だ。……探索しても構わないぞ」
「………そんな怖い森をどうやって探索すれば……」
「フッ」
ヴァイスさんは軽く笑うと、また前を見据えて歩き始めました。
「……ミツキ氏、レン氏」
「ミカゲさん?」
ミカゲさんがレンさんの腕とわたしの腕を引っ張って、小さな声で話します。
「モンスターが入れずヤバイものが埋められているこの森にいるモンスター、大分ヤバそうですぞ」
「……そもそもモンスターなンか」
「……モンスターかも怪しくなってきましたね」
「推測ですが、おそらく最高難度のダンジョンだと思います。ですがウィンドウも何も出てきませんし、そもそも入るのにも特殊なイベントや条件がありそうです。今は兄弟子さんのおかげで、裏ルートを通り抜けているみたいな物だと思うんですよね」
ミカゲさんは難しい顔をします。
モンスターが入れない森に存在するモンスターとは、一体どんなモンスターなのでしょう。
わたし達は、何と戦わされるのでしょうか。
そしてここは、どんなダンジョンなのか………
「……まぁ今考えてもどうにもならないですなー。気を紛らわせる為に、この森のスクショでも撮っておきましょ」
ミカゲさんは歩きながら森のスクショを撮り始めました。
わたしもこのカラフルな森のスクショを撮っておきましょう。
「ちなみに神器もあるぞ」
「神器!?」
兄と父がそわっとしました。
ああ、そういうの好きですもんね……
「使用するには多大な代償を支払わねばならないがな」
兄と父はスンとした表情になり、お互いに顔を見合わせて顔を横に振りました。
聞かなかったことにしたようです。
「……何故、この森にそんな物騒な物を置き始めたのでしょうか」
「……そうだな。まだ目的地まではある、少し昔話をしよう」
そう言ってヴァイスさんは歩く速度を緩め、淡々と話し始めました。
「そもそも神器が作られたのは、今より1000年程前だ。その時は様々な種族がハーセプティアを巡り争っていた。その中でも人や獣人達は数は多いが能力が平均的だったと言われていた。エルフは森に引きこもり、ドワーフは地下に潜っていた。それをみた神は、彼らに生きる道を与えるために神器を作り与えたと言われている」
1000年程前…………その頃にも戦いがあったのですね。
ハーセプティアの歴史は長そうです。
ユアスト、作り込みがすごいです。
「しかし能力が平均的であった彼らには、神器を扱うための力が足りなくてな」
「えっ」
「神器には要求されるステータスがある。攻撃1000以上のステータスを持つものや、魔攻1000以上のステータスを持つものが発動できる、そんな武器だったのだ」
「1000!?」
1000!?
それはどれくらいの時間をかければたどり着けるステータスなのか!
レベルアップし、全て魔攻に振ったとして、どれくらいレベルが上がれば……およそ200レベルくらいですか?
このゲーム、プレイヤーはそこまでレベル上げられるんでしょうか。
「当時そんなステータスを持っている者はいなかった。故にその時代に考え出されたのは、当時の最強の武器の担い手に他人のステータスを上乗せさせる禁術だ」
「き、禁術……」
「……代償は生命だったがな。他人の生命を吸い取り、他人に埋め込む。しかし人にも獣人にも、肉体には限界がある。限界を超えれば、どうなると思う」
ヴァイスさんは、こちらを真剣な目で見つめます。
………他人の生命を上乗せされても、その肉体の限界を迎えれば、
「………死んで、しまいます」
「そうだ。何人も、何百人も、何千人も亡くなった。だが生命を消費して使われた神器の威力は絶大だった。悪魔の軍勢を剣の一振りで消滅させ、天使の軍勢も魔法一つで扉ごと破壊した。……彼らは、よくハーセプティアの魂を求めてこちらに攻め込んで来るからな」
「……魂は、彼らにとっての餌なのですか」
「餌というより、位を上げる為のエネルギーだろうな」
………大変な話を聞かされています。
確かイベントの時、ハーセプティアを手に入れようと狙うものがいるとソル様も言っていました。
……今後、ハーセプティアが襲われるのかもしれません。
その時に、プレイヤーもハーセプティアを守るために、戦うのでしょう。
「まあ話は戻るが、神器は神から与えられたもの。壊せないし、壊す力も無い。使えなくても手元に置こうと狙われる。自国で管理出来ぬと数十年前に声を上げられてな。ならば誰も入ることのできない墓場でも作るかと、そういう話になった」
「それが、夢見の森ですか」
「最適な場所に上がったのがこの場所だったのだ。名前の由来はまた別にあるが」
戦う前に大変な話を聞いてしまいました。
ミカゲさんが頭を抱えています。
母はとても面白いものを見つけた、と表情が語っています。
レンさんと父は何か考えるかのように、兄は驚きつつも、ふぅんって感じです。
「さて、少し止まれ」
ヴァイスさんが立ち止まったので、わたし達も立ち止まります。
ヴァイスさんは空中で何か文字のようなものを描いたかと思うと、景色がぐにゃりと歪んで何か建物が出現しました。
け、結界でしょうか。
全くわかりませんでした。
円形の、まるでコロッセオのような遺跡?です。
「ミツキ、お前達はこのままあの入り口へ。師匠から鍵を預かっただろう」
ヴァイスさんは扉を指差します。
目の前の建物には、大きな扉がありました。
鍵……カードキーですね。
「見てわかると思うが、ここは闘技場だ」
「闘技場」
「……ソラさん達ご家族は、観客席へ案内しよう」
まんま闘技場でした。
……闘技場でモンスターと戦うんですね。
「詳しい説明は中でする。〈わし座〉」
ヴァイスさんはアルタイルを喚び出し、腕に留まらせます。
「ラクリマを呼んで来い」
アルタイルは小さく鳴いて、どこかへ飛んで行きました。
ひとまず、言われた通り進みましょうか。
わたしはレンさんとミカゲさんを見ます。
二人とも武器を装備して、こくりと頷きました。
わたしも杖を握りしめて、扉へと近寄ります。
扉の横に、カードをスキャンする機械が取り付けられています。
そこにお師匠様から渡されたカードキーをスキャンすると、扉が開きました。
………ちょっと緊張して来ました。
大きく深呼吸します。
「……一人じゃねェし、もっと気楽に行けよ」
「中々この緊張感には、慣れません」
「わかりますよー。ボクもちょっとドキドキしてます」
レンさんはいつもと変わらず、冷静です。
ミカゲさんは、にへらと笑います。
一人では無い、それだけで気持ちが少し楽になりました。
星座達もいます。全力で、挑みましょう。
「………よし、チャレンジャーミツキ、いきますよ」
「言い得て妙だな」
「闘技場ですしね!ボクらはチャレンジャーです」
よし!行きます!
わたし達は暗い通路を、進みました。
通路を抜けると、開けた空間に出ます。円形の闘技場ですね。
「………広いですねぇ」
「闘技場ってこんな広さなんですね」
思わず見回してしまいます。
レンさんは土の感触を確かめてます。
すると背後で大きな音を立てて通路へ鉄柵が降りました。
びっっっくりしました!
おもわず少しだけ飛び上がりました。
「し、心臓が出るかと……」
「ミツキ氏ーーー!救急車ーーー!!」
「呼べる訳わけねェだろ」
胸を抑えて落ち着こうとするわたしに、ミカゲさんが叫びます。
それを冷静に切って捨てるレンさん。
ふふ、確かにここに救急車は呼べませんね。
ちょっとしたやり取りに、気分が軽くなりました。
「………ここはかつて闘技場だった。以前はとあるモンスターが巣食っていたが、代替わりの儀式の際一番強い個体を生み出す為に、子供たちをここで戦わせ共食いをさせた。そうして生き残った子供へ全てを受け継ぐ筈だったが、当代は死にたくなかった。故に子供を乗っ取ろうとしたが、逆に子供に食われた。子供は全てに絶望し成体になることなく、自己封印し幼体のまま無為に過ごして来た」
ヴァイスさんの声が闘技場に響き、反対側の鉄柵が上がりました。
「彼女は言っていた、死にたいと。でも死ぬのなら、せめて誰か、何かの為に死にたいと。それをきょうだい達を食らって生き延びた事への、罪滅ぼしにしたいと」
何かを引き摺って進むような音が、段々と大きくなってきました。
「……彼女は、幻獣・夢見蝶の幼体」
通路から姿を現したのは、
「…フォース・キャタピラー《ラクリマ》という」
虹色の瞳をした、大きな青虫のようなモンスターでした。
話が進むペースが遅いと思われるかもですが、マイペースに投稿させて頂きます。
( ゜д゜)ハッ!これ創作なので造語も出来るんですわ…
夢見鳥(蝶の異名でつけた)は夢見蝶にしました!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




