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戦いと休息

ご評価、ご感想ありがとうございます!



モンスターを蹴散らしながら馬車へ追いつくと、ヴァイスさんがこちらを向きました。


「そろそろ馬を休ませる。この先に小さな池があるから、そこで馬車を停める」

「わかりました」


もう1時間半くらい戦ってました。

レベルは1しか上がりませんでしたが、モンスターのレベルが低かったのでしょうがないですね。

むしろこの辺りからモンスターのレベルが跳ね上がりました。


今後気を引き締めないとです。

その池まで、油断せずいきましょう。










「モノセロス!」


わたしはモノセロスから飛び降りて、布を回収して目の前のモンスターから距離を取ります。


ちょっとモノセロスだけだと危ないかもしれません。

他の星座を喚びます。


「〈おおいぬ座(シリウス)〉、〈おおぐま座(ウルサ・マヨル)〉」




レッドジャイアントベア Lv.37

アクティブ

【突進】【爪撃】【狂化】

【剛力】【雄叫び】




「グオオオオオオオッ」

「【魔力強化(星)】、【魔力強化(太陽)】!」


皆を強化して、わたしは初めて喚び出したウルサ・マヨルへと向き合います。

おおぐま座は星の固有名が多いです。北斗七星が有名ですね。

おおぐま座の呼び方はおおぐま座のラテン語ですね。


「………」

「ウルサ・マヨル。どうか共に戦って下さい」


黒い大きな熊の姿をしたウルサ・マヨルは、わたしへ向けて両手を上げました。


「…ッオイ!」


馬車は離れたところで止まり、近くでウォーキング・ツリーと戦っていたレンさんが、焦ったように叫びます。


わたしはウルサ・マヨルから目を逸らさず、ウルサ・マヨルもわたしから目を逸らしません。


そしてウルサ・マヨルは、軽くわたしを抱きしめました。


「……大丈夫です。わたしはあなたを傷付けず、あなたはわたしを傷付けません」

(……かわいい子。ありがとう)


かの大神に見初められ、紆余曲折あり熊の姿に変えられてしまい、息子に殺されそうになった女性の逸話が元になったと言われるおおぐま座。

であれば、彼女は、子供を大切に思う心優しい女性のはずです。

現実で会うと死を覚悟するくらいには恐ろしいですが、彼女の目はとても真っ直ぐで、むしろ触れることに怯えているようでした。


(貴女のためにも、頑張るわ)

「一緒に頑張りましょう!」

(ええ!)


ウルサ・マヨルは拳を握る?と、レッドジャイアントベアの元へ向かうとその巨体を利用してレッドジャイアントベアとの取っ組み合いを始めました。


その隙間からシリウスはレッドジャイアントベアに噛み付き、右腕を焼き焦がします。


モノセロスも風を纏わせた角で胴体を穿ちます。


「……驚いた」

「大丈夫です。彼女はとても優しいですから」

「……そうか」


レッドジャイアントベアとウルサ・マヨルの取っ組み合いをみて小さく笑うと、ワサワサ近付いてくるウォーキング・ツリーに、再び殴りかかりました。


ウォーキング・ツリーの表面にある顔が、恐怖に歪んだように見えました。


「……いやー、アレは怖いですわ」

「ミカゲさん」

「ウォーキング・ツリー、木材をドロップするので積極的に倒したい所ですが、レン氏が無表情で殴りかかるの見るとちょっと同情しますわ」

「枝がバキバキですね……」

「むしろ少しずつレン氏から離れてますな。……ボクも伐採してきますわ!」


ミカゲさんが大鎌を構えながらウォーキング・ツリーの群れに飛び込みました。

伐採…………よく切れそうです。



(こンのタフだな!)

(痛いじゃない!)

「グオオッ!」

「【身体強化(魔)】【ブースト】!ウォーターボム!」


赤黒いオーラを纏い見境なく攻撃するレッドジャイアントベアから距離を取り攻撃の隙を窺うシリウスとウルサ・マヨル。


モノセロスも走り抜けながら、角で攻撃しています。


わたしも離れた所から、魔法で攻撃します。

確かにタフですね!HPの減りが遅いです。


「ウォーターボム!ウォーターボム!」

「グッ…オオオッ」

「!」


レッドジャイアントベアがこちらを見ました。

そして両手を地面につき、こちらへ走り出しました。


「ウォーターボム!ウォーターボム!」


急いで距離を取りながら魔法を放ちますが、レッドジャイアントベア速いですね!追いつかれそうです!


(いっかせないわよ!)

(オラァ転べ!)


タックルの勢いでレッドジャイアントベアに突撃したウルサ・マヨル。

レッドベアと転がりますが、すぐに体勢を立て直し動けないように押さえつけます。


シリウスが脚を重点的に燃やし、モノセロスが風を纏った蹄でレッドベアの上半身を勢い良く踏みつけました。

い、痛いです!!


「ガッ」

(ミツキッぶちかませ!)

「んぐ、よし!【流星(メテオ)】」


ぶちかますと言われたら流星(メテオ)しかありません。

MPポーションでMPを回復して、わたしは叫びました。


空中の魔法陣から流れた流星は、今までよりも大きい流星となりレッドジャイアントベアへ直撃し爆発しました。

レッドジャイアントベアの残り3割のHPを、全て吹き飛ばしました。




‐レッドジャイアントベアを倒しました‐

レッドジャイアントベアの毛皮、爪、魔石(中)を手に入れました。




………威力がすごい上がってました。

驚きました。

新しい杖、すごいです……!


(お疲れ様ね)

「はい、ありがとうございました!」

(後で肉食わせろなー)

「わかったよ」


近寄ってきたモノセロスを撫で、シリウスも撫で回します。

ウルサ・マヨルは器用に肉球の部分で頭をポンポンしてくれました。




その後はウォーキング・ツリーの群れを殲滅し、馬車はセーフティエリアの池にたどり着きました。

プレイヤーの反応は、この辺りには一切ありません。


「はふぅ………」

「中々ハードでしたな…」


レンさんはケロッとされていますが、わたしは息が乱れています。どうにか深呼吸して落ち着けます。

スタミナ系のパッシブスキルを後で吟味しましょう。


「少し休むといい」

「はい…」


ヴァイスさんはそうわたしに声をかけて、カペラさんと共に馬を池に連れていきました。


馬車から家族達が降りてきます。

母はちゃんと日傘さしてますね。


「うお、熊でけえ」

「お疲れ様ねミツキ」

「いい戦いぶりだったよ」

「あ、ありがとう……」


わたしはシリウスに、ハニーピグのステーキを分け与えます。


(お、ありがとな)

「いつもありがとうね、シリウス」

「……おおいぬ座(シリウス)、ね」


兄がシリウスを見つめ、シリウスも口を動かしながら兄を見つめます。


「……めっちゃかっこいいな!兄のリューです。妹をよろしくお願いします」

(おう)

「なあ!今なんて言ったん?なんて言ったん?」

「おう、って言ったよ」

「クールだな!」


………仲良くなれそうです。

すごい一方的に兄がシリウスに話しかけてます。


「馬車の中でヴァイスさんから、契約書を用いてジョブについて聞いたよ」

「とても素晴らしいジョブね。ウルサ・マヨル……おおぐま座ね。娘がお世話になってます」

(あら、母親と、父親なのね。それにお兄さんもいるのね。……家族は仲良い方がいいわね)

「はい、母と父です。……ウルサ・マヨルも、シリウスも、家族のようなものでしょう?」

(……!そう、そうね!)


ウルサ・マヨルは嬉しそうに手を合わせました。

やはり所作が女性らしさを感じます。

ウルサ・マヨルはりんごを嬉しそうに食べてました。

モノセロスも、りんごを一欠片食べると小さく嘶いて還りました。


……もうすぐお昼の時間です。手早くログアウトしましょうかね。


「ヴァイスさん、一度自分の世界へ戻ります。すぐに戻ってきます」

「ゆっくり戻るといい。食事の準備をする」

「あ、わたしお弁当作りました」

「………ならば飲み物とテーブルのセッティングをしよう」


そう言ってヴァイスさんは馬車へ戻りました。

今のうちに、ログアウトしましょう。


「レンさん、ミカゲさん。一度お昼休憩しましょう」

「ああ」

「そうですな」

「お昼はバッチリ準備しましたので!」

「…それは楽しみだな」

「すぐ戻りますわ!」


レンさんとミカゲさんがログアウトしました。

特にヴァイスさんが変な反応してないので、普通にNPCの前でログアウトしても大丈夫そうですね。

消えるのはおかしいかと思っていたから、ジル様と会ったときにはテントでログアウトしましたけどね。


「手早くお昼食べてこよう」

「そうね」

「おうよ」

「そうだね」


シリウス達を還し、わたしたちもログアウトしました。






本当に手早く済ませました。

黙々と即席サンドウィッチを作って食べて、父と母は仕事のメールの確認してからログインするとの事で先に部屋に戻りログインしました。


「わぁ……!」


小さな池の近くに、大きなテントとおしゃれなテーブル、チェアがセットされています!

グランピングみたいです!


ヴァイスさんこんな物までお持ちなんですね!


「……む、戻ったか」


サダルスウドと共に飲み物を準備していたヴァイスさんが、こちらを振り返りました。


サダルスウドは柔らかく微笑み、アイスティーを作り始めました。


……なんだか大人っぽいですね!

これは喚び出した人にちょっと引っ張られるんでしょうか、精神が。

わたしが喚び出すサダルスウドは子供らしさを感じます。


「うお、すげえ」

「お兄ちゃん」

「グランピングみたいだな」


さっき同じような感想を言いました。

森の中のグランピング……素敵です。


「めっちゃオシャレな空間が出来上がってる…!」


ミカゲさんもログインし、こちらへ駆け寄ってきました。

その後レンさん、両親もログインし、ヴァイスさんが準備してくれた席に座りました。


えっと、人数多いので備蓄してた他の料理も出しましょう。

ステーキですけど。


昨日作った料理をテーブルへと並べます。

小皿を取り出してテーブルに並べた所でわたしは気付きました。


………人数分のカトラリーやお箸が、無いです!


「……人数分のお箸やカトラリーを用意するの忘れました!」

「あ、ボクは自前のあります。レン氏にもこの間買わせました」

「……おう」

「いつも用意して貰ってましたからね。せめて食器くらいは用意しようかな、と」


ミカゲさんとレンさんはアイテムボックスからお箸を取り出しました。

買わせたんですね……


「………私が用意した物を使うといい」

「ありがとうございますヴァイスさん……」


ヴァイスさんからカトラリーをお借りして、家族に配ります。

わたしも自分のお箸やカトラリーを取り出します。


では、


「いただきます!」


わたしは肉巻きおにぎりにかぶりつきます。

んむ!やっぱりご飯とお肉は美味しいです!


ハニーピグの豚バラ大根も、味がしみてて美味しいです。

サラダも小皿に取り分けて、オーロラソースでいただきます。

シャキシャキ!さっぱり!美味しい!


コッコの卵を使った野菜チヂミも、美味しい!

小麦粉や片栗粉を王都で買っておいたので良かったです!


「うま……ミツキ腕上げたな……」

「美味しいわ〜」

「とても美味しいですわ!」

「レンくん、お肉食べる?」

「ありがとうございます」


こんなに大人数で食事を取るのは、初めてです。

なんだか嬉しくなりました。

この和気藹々とした雰囲気、とても良いです。


「ヴァイスさん、お口に合いますか?」

「美味い」

「良かったです」

「日輪の国の料理と似ているのだな」

「そうですね。わたし達の世界と、日輪の国はよく似ています」


日本モチーフですからね。

でもお口に合ったようで良かったです。

日本食が苦手な外国人もいましたからね。


ヴァイスさんとサダルスウドが用意してくれたアイスティーも、さっぱりして美味しいです。


濃いめの料理には、さっぱり系の飲み物が良いですね。

今度準備する時には飲み物の事も考えないとです。



「ごちそうさまでした!」



皆食べ終わると、お皿を洗ったり片付けたりしてくれました。

ありがとうございますです。


片付けを終えると、ヴァイスさんがある一定の方向を指差します。


「この先を進むと夢見の森だ。夢見の森にモンスターは近寄らないから、このまま歩いて進むとしよう」

「わかりました」



皆気持ちを切り替えて、真剣な表情になります。

では向かいましょう、夢見の森へ。



この物語は!フィクションです!(今更)


これからもこの作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] お母さんさらっと星座と会話してね?
[気になる点] 熊に乗れたら『電車道』ができるかな? 伐採……枝打ちして倒したら品質が上がるのですか?
[良い点] 構成、内容全て素晴らしい [一言] この物語は!フィクションです!(今更) これからもこの作品をよろしくお願いします! な、なんだってー!?こんなにリアルなのにフィクションなわけが無い…
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