ルクレシア南下中
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ギルドカードをみせて門を出ます。
見た目やレベルが違うプレイヤー集団とNPCが共に行動しているからか、ちょっと注目集めています。
視線が煩わしいですが、無視しましょう。
杖を取り出して装備します。
「お!ミツキ氏新しい杖ですな!」
「ずっと初期に手にいれた魔花の杖を使ってましたが、魔法の威力が40%しか出てないと言われまして……」
「アレで40%!?」
ミカゲさんが目を見開きます。
ミカゲさんもわたしと同じ反応ですね。
レンさんが進むのを邪魔するスライムやウルフを殴ったり蹴り飛ばしたりしてます。
あ、忘れてました。
「レンさん、ミカゲさん、一応パーティー申請して良いです?」
「いいともー」
「おう」
ひとまずパーティー申請しておきます。
これなら何かあったときに一蓮托生です。
よし、進みましょう。
わたしも近寄ってきたスライムへ杖を振り下ろします。
ミカゲさんも離れたところで大鎌を振り回しています。
なにやらミカゲさんの大鎌もフォルムがちょっと違いますね。
新しい武器でしょうか。
とても強そうです!
しばらく進むと、人気が無くなって来ました。
プレイヤーは割と王都の方向、つまりルクレシアを北上するため南下する人は少ないみたいです。
マップをみても、街らしきものはありませんでした。
あとモンスターのレベルが15〜になってきました。
レベルは兄は14、父は8、母は7なので、ちょっと危ないですね。
ちなみにヴァイスさんのレベルは見えません。
カレンさんのレベルは見えましたので、カレンさんよりも高いか、もしくは隠蔽されてるかですね。
「……そろそろ馬車で移動しよう」
そう言ってヴァイスさんは黒い穴から茶色い小さな箱を取り出しました。
それに魔力を込めて、放りました。
放りました!
すると箱は徐々に大きくなり、馬車になりました。
なんとファンタジー……そういうアイテム的な馬車もあるのですね。
「ソラさん達は馬車へどうぞ。窓から外は見えますので」
「お邪魔します〜」
「お前ら頑張れよ」
「馬車なんて初めて乗るね……」
三人は馬車へ乗り込みました。
「〈ぎょしゃ座〉」
ヴァイスさんがカペラさんを喚び出しました。
ヴァイスさんのカペラさんは、御者台に登ると敬礼しました。
……わたしが喚び出すカペラさんはよく親指立ててましたが、ヴァイスさんが喚び出すカペラさんは敬礼するようです。
……その違いは謎です。
個性、ですかね。
ヴァイスさんは御者台の隣に腰掛けて、懐から本を取り出しました。
完全に読書モードに入りましたね。
「馬車の護衛依頼もある。いい訓練になるだろう」
「はい、わかりました」
わたし達はモンスターを蹴散らしながら走ります。
護衛依頼……そういうのもあるんですね。
「ボク達は馬車に並走しつつモンスター蹴散らしタイムですな」
「レベルも上げたいですし、何かあれば騎乗出来る星座を喚びます」
「ひとまずレン氏が斜め前、ミツキ氏とボクで馬車を挟みましょ。後ろは無視で。追いかけてきて、追いつきそうだったら迎撃した方が良さそうですな」
「そうですね」
「……行くか」
馬車が動き出したので、わたし達三人は走り出しました。
馬車は歩く速度より速く進みます。
馬車と並走しつつ、モンスターを倒しながら街道を進みます。
「【ブースト】【二重詠唱】、ウォーターアロー!」
空中から炎を吐いてくる火の鳥、ファイアーバードへ水の矢を放ちます。
ファイアーバードは、そのまま地面へ落下し消えました。
‐ファイアーバードを倒しました‐
ファイアーバードのムネ肉、手羽先を手に入れました。
おお、お肉です。
ティナさんの所で食べたファイアーバードのお肉は、お肉がちょっとピリ辛でした。
味付きお肉……中々斬新です。
後で食べるとしましょう。
では次です。
モンスターを倒したアイテムを拾わなくて良いのは本当に助かります。
「【二重詠唱】、サンドアロー!」
「ギッ」
身体が水で出来ているような青い鳥を攻撃します。
ウォーターバードです。
砂の矢はウォーターバードを貫き、ウォーターバードは落下しながら消えました。
空中への敵はわたしが魔法で倒します!
レンさんもミカゲさんも、空中の敵への対処法は持ってそうですが、ここはわたしにやらせて貰いましょう。
足を止めずに、魔法を放っていきます。
馬車はカペラさんのおかげでモンスターを寄せ付けなくなってますので、必然的に並走しているわたし達を、モンスターはロックオンする訳です。
レンさんは馬車より速く動けるので、馬車の斜め前で近寄ってくる地上のモンスターを走る勢いに乗って身を捻り腕を引き殴りつけてます。
モンスターは悲痛な声を上げて消えていきます。
可愛らしい見た目のモンスターにも容赦なしです。
わたしは躊躇してしまうかもしれませんが、レンさんは公平な方ですね。
「っと、【二重詠唱】、ファイアーアロー!」
空からこちらへ急降下する風を纏った緑色の鳥、ウィンドバード2体へ炎の矢を放ちます。
炎の矢は違わずウィンドバードへ突き刺さり、その身を燃え上がらせました。
身に纏う風のおかげでよく燃えてます。
‐ウィンドバードを倒しました‐
ウィンドバードの手羽元、ササミを手に入れました。
「そい!」
爆発音。
「まだまだありますぞー!」
爆発音。
ミカゲさんはわたし、馬車、ミカゲさんと馬車を挟んで並走していますが、元気な声と爆発音が聞こえてきます。
全然余裕そうですね。
……ふむ、横から気配が近付いて来ます。
「ファイアーボム!」
横から飛びかかってきたウルフを爆発させ、気配を探ります。
………気配は感じますが、こちらに近寄って来なさそうです。
では気配を探りながら走りましょう。
まだ走るのは余裕ありますからね。
「………ちゃんと魔法使いしてんなぁ」
「とても頼もしいね」
「ちゃんと周りの気配も探れてるみたいだし、成長してるわねぇ」
「……あのレンって奴、強いな」
「ミカゲさんも、大鎌の扱いが上手だね」
馬車の窓から、三人は少女達の戦闘の様子を見る。
白衣を翻しながら大鎌を振るう少女と、無表情にモンスターを殴り飛ばしていく黒ずくめの少年。
そして、杖を握りしめてモンスターへ的確に魔法を放つ少女。
身体を動かすのを得意では無く、勿論殴り合いの喧嘩などした事のない少女がモンスターと戦えているか、少しだけ不安に思っていた家族達だったが、少女の戦う様子をみて安心した。
「うお」
馬車から離れてはいるが、近い場所で爆発が起きる。
リューは反対側の窓を見やる。
ミカゲと呼ばれた少女が、モンスターへ向けて再び試験管を投げつけた。
「おお、すげえな。錬金術師っぽいとは思ってたけど錬金術師って爆発物も作れるんだな」
「中々有用よね」
「戦闘においてはあのようなアイテムも必要そうだね」
「武器も予備が必要よね。私は何を扱おうかしら」
「君にはレンくんみたいなガントレットも良さそうだね」
「母さんにはメリケンサックも合いそうだけどなぁ」
「………まあ保留ね。リューは後で覚えておきなさいな」
「なんで!?」
「言外に私の攻撃手段の事、殴る限定にしているでしょう?私はそんなにヤンチャしないわよ、今は」
「ウッスサーセンした」
(……思っていたよりも、好戦的な家族だな)
窓が開いているため聞こえてきた会話を聞き、ヴァイスは言葉には出さないがそう思った。
少し天然のような反応をする母親が、一番物理的な戦いをするのかもしれないと考えると、この家族のヒエラルキーのトップは母親なのかもしれない。
(……母は強し、か)
自分には両親はいないが、一つの家族の形を見たヴァイスは、小さくため息をついた。
‐クレイジーモンキーを倒しました‐
種族レベルが上がりました。
任意の場所へステータスを割り振って下さい。
SPを2獲得しました。
種族レベルが40になったため、【簡易結界】のアクティブスキルを手に入れました。
メインジョブレベルが上がりました。
クレイジーモンキーの毛皮、骨を手に入れました。
「はぁ………ふぅ………」
今のクレイジーモンキーのレベルは、32でした。
進むにつれてレベルが上がるので、一撃で倒せなくなってきました。
そして群れで出てくるモンスターも増えてきたので、次は星座を喚んでもいいかもしれません。
わたしは近距離に来られると戦いづらいですからね。
手早くステータス操作を済ませ、MPポーションでMPを回復させます。
ミツキ Lv.40
ヒューマン
メインジョブ:アストラルハイウィザード Lv.11/サブ:薬師 Lv.7
ステータス
攻撃 48 +1
防御 64 (+40)
魔攻 138 +2 (+40)
魔防 60 (+40)
敏捷 44 +1 (+15)
幸運 57 +1
新しいアクティブスキルも気になります。
響き的にはまぁなんとなく分かりますけどね。
【簡易結界】
フィールド上に一定時間結界を構築する。
結界を構築した場所はセーフティエリアとなるが、一定以上の攻撃を受けると破壊されるため注意が必要。
継続時間:2時間 構築範囲:14㎡
おお、セーフティエリアを!
攻撃を受けると破壊されるのは怖いですが、ちょっと休憩するには良さそうです。
……構築範囲は、8畳くらいでしょうか。
まぁ十分な広さですよね。
「…何かあったか」
「あ、いえレベルが上がりまして」
「そうか」
わたしが足を止めていたからか、レンさんがこちらまで来てくれました。
あっ馬車があんな遠くに!
「星座を喚び出して追いかけますので、レンさんはわたしにお構い無く」
「わかった」
レンさんは走り出すと、徐々に加速します。
おお速いです。
「〈いっかくじゅう座〉」
わたしはモノセロスを喚び出します。
そして魔道具の鞍を手に持ちながら、モノセロスに問いかけます。
「わたしを乗せてくれる?」
モノセロスはわたしを見つめ、ゆっくりと瞬きをしました。
肯定の意が伝わってきます。
布をモノセロスの背にのせて魔力を流し、鞍になったので背に乗ろうとしたところ、モノセロスは膝を折って乗りやすくしてくれました。
「ありがとう、モノセロス。…あの馬車を追ってほしいの」
モノセロスは小さく嘶くと、馬車の方向へ走り出しました。
本当に賢いですね!
これなら追いつけそうですが、空からモンスターが近寄ってくるのも見えます。
………ある程度攻撃して蹴散らしましょう。
わたしは杖を握る手に力を込めて、強化を施しながら魔法を唱えるのでした。
ほにゃららスプレーとかあれば低レベル帯の所も突っ切って行くんですけどね……まあミツキの場合は騎乗して逃げる手段がありますけども( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!




