アストラルウィザードとしての依頼
ご感想、ご評価ありがとうございます!
ミツキの物語をお楽しみ下さい!
おはようございます!
あっという間に休みです。
昨日一昨日はちょっとした筋トレをやったり、母から宇宙や天体に関する蔵書を借りて頭に叩き込みました。
テストより本気で取り組みましたね………
ランニングして、ご飯も食べました。
リビングにいる母に話しかけます。
「お母さん今日は?」
「ゲームの図書館で、信仰先で出てきた存在について調べるわよ」
「一日中?」
「本がたくさんあるから、気になる本は片っ端から読み進めたい所ね。何かあった?」
「その信仰先の候補に、加えてもらいたい方がいてね。その相談をしたいなと思って」
「……そうなのね。ルクレシアの図書館で話す?」
「確か相談室とかあったから、借りられたらそこで話したいかな」
「じゃあ図書館で本を読みながら待っているわ。今日はほぼ図書館にいると思うから」
「わたし午前中は用事があるから、午後に行くね」
お昼の時にまた状況を伝え合うとしましょう!
では、アストラルウィザードの依頼を受けにログインしましょう!
ログインしました!
よし、調子はいいです。
身嗜みを整えて、ディアデムを喚び出します。
「いつもありがとう、ディアデム」
髪の毛を一房摘んでそう伝えると、一瞬淡く光りました。
………意思は、あるのでしょうか?
キッシュを食べて、気合を入れます。
よし、行きましょう!
「おはようございます、お師匠様」
「おはようミツキ」
お師匠様はいつもと同じようにソファでコーヒー片手に新聞を読んでいました。
「ホレ」
「?」
お師匠様が片手で1枚の紙をヒラヒラさせます。
近寄って、その紙を手に取ります。
特殊職業依頼
《アストラルウィザード》
・王都ミゼリアの世界樹の世話
場所:クリスティア城
報酬:要相談
「ほあ」
「ミツキにはそれに行ってもらうよ」
せ、世界樹!?
世界樹って世界樹ですか!?(混乱)
「前に植物に関するパッシブスキル持ってるって言ってたろう。ついでに世界樹の様子を見てきておくれ」
「お世話とは、何をすれば!?」
「まぁサダルスウドの水やりと………後は世界樹に聞くといい」
「???わ、わかりました。いつもはお師匠様がやっていたのですか?」
「1ヶ月に1回だね。世界樹には、ランクが高く不純物のない特殊な水が必要なのさ。各国に世界樹はあるが、今回はクリスティアの世界樹の世話をしてもらう」
1ヶ月に1回の世話で良いんですね………
それに、世界樹って1本の大きな木がドーンとそびえ立っているイメージでした。
各国にあるのですね。
庭師とか木に詳しい職業の方が世話しているのかと思っていました。
「……お師匠様」
「なんだい」
「正門以外から王城に入る手段はありませんか……」
「……あるにはあるが」
「渡り人でわたしが初めて王城に入ったものですから……ちょっと騒がれてしまって」
「なるほど、ね。ならば裏門から入るといい。王城の正門からぐるっと裏手に周りな。途中から惑わせるための術式が展開されているが、お前さんは通行証もあるし、難なく通れるだろう」
「わ、わかりました」
「通行証と依頼書を門番に見せれば入れるはずさ」
無くさないようにアイテムボックスにしまいましょう。
「……では行ってきますね」
「そう難しくは無いから気楽に行ってこい」
「はい!」
「後これも持っていきな」
立ち上がりこちらへ歩いてきたお師匠様から、手鏡を渡されました。
「通信用の手鏡さ。世界樹の様子が変だったら魔力を流してワタシの名を呼びな。応答するさね」
「わかりました。お借りします」
通信用の手鏡!
そんな便利なものがあるんですねぇ。
それをアイテムボックスに同じようにしまって、お師匠様に声をかけます。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
お師匠様に見送られ、いざ王都ミゼリアへ向かいます!
王都ミゼリアへ来ました。
休みの日だからなのか、これが通常なのかわかりませんが、人が多いです!
よし、では坂道を登りましょう。
見上げる王城は今日も壮観ですねぇ。
坂道を登って、足を止めずにとりあえず右回りに進みます。
プレイヤーが城のスクショを撮っているみたいですからね。
まだ城の中に入れる人は、わたし以外にはいないのでしょうかね。
まぁ遠くから様子を窺っているようですし、入れないのでしょう。城に近付くプレイヤーを見てます。
……怖いですね。近寄らないようにしたいところですが、わたしの目的地は城です。
……早歩きで行きましょう。
………何人かが跡を付いてきているようです。
まさかとは思いましたが、そんなストーカーみたいなことしてくるとは。驚きです。
立ち止まると止まり、進むと付いてきます。
わかりやすいですね。
惑わせるための術式はどの辺りからあるのでしょう?
考えながら進んでいると、地図上少し先で道が2手に分かれていました。
王城へ続く道と、街の方へ下る道です。
しかも曲がり角です。
走って王城に続く道へと足を踏み入れると、何か膜のようなモノを通り抜けたような気がしました。
「ッいない!」
「どこに行った!?」
「一本道なのにもういないなんて!」
数人のプレイヤーが街へ下る道を駆け抜けて行きました。
え、人の跡を付けるのそんな堂々とやるんです?
え、こわ………マナーは何処へ。
ゲームだからと言ってもマナーは守ってほしいですよね。
わたしは王城へ続く道を進み、門番に通行証と依頼書を見せます。
「……何故裏門から?」
「じ、事情がありまして…正門から入ると人目を集めてしまうので」
「……成程、どうぞお入り下さい」
「ありがとうございます」
ちょっと訝しげに見られてしまいました……
ですが小さな扉を開けてくれたので、腰を屈めて通り抜けます。
………ここから何処へ行けばいいんでしょう。
裏門の内側にいた騎士様に、聞いてみましょう。
「お、お仕事中失礼します。この依頼書の場所はどこを通れば行けますか?」
「……申し訳ございません。そちらの場所は一部の者しか知らないのです。今報せを飛ばしますので、お待ちいただけますか」
「お、お手数おかけします…いくらでも待ちます」
「どうぞこちらのベンチでお待ち下さい」
流れるようにエスコートされて流れるようにベンチに座りました。
こ、これが騎士………すごいです。
騎士様は何か紙に書き込むと、それは鳥になって王城へ飛びました。
すごいですね!
太陽光が暖かくて全然待つのは苦にならないですね。
ぽかぽか、日当たり良好です。
ゲームは日焼けの心配無いですし、思う存分陽光を浴びれます。
しばらくすると、遠くから走ってくる影が見えました。
立ち上がって待っていると、それは軍服を着た男性と白衣を着た女性でした。
おや、あの軍服は……
「ミツキ様!お待たせしました」
「イオさん!」
「今回依頼書を持ってきたのが少女だと伺いまして、もしやミツキ様かと思ったら本当にミツキ様でしたね」
「は、はい。今回はわたしがお世話させて頂きます」
いやイオさん王様の秘書官でしょう!!
なにゆえ!?
その後ろから、ヨタヨタと白衣の女性が近付いて来ます。
「はぁ、はぁ……はひぃ……なんで、走らせるのぉ…」
「待たせる訳にはいかないでしょう。ミツキ様、こちらは世界樹の研究と世話をしている学者のモンクスフードです」
「はぁい……モンクスフードです……長いから…ふぅ…モンちゃんって呼んでくださいねぇ……」
「渡り人のミツキです。今回はお世話になります」
「植物を愛するために存在する、しがない研究者ですぅ…」
モンちゃん……いえそんな気さくに呼べないです。モンクスフードさんは、息を整えながら自己紹介してくださいました。
わたしも自己紹介します。
「じゃあ、私が案内しますねぇ……」
「くれぐれも失礼のないようにな、モンクスフード」
「なんで私名指しなのぉ!?」
「世界樹の事となると貴女落ち着かないでしょう」
「仕事は真面目に熟しますよぉ。ではミツキ様、この白衣の裾をちょいと摘んでくれますぅ?」
「あ、わたしに敬語は不要ですよ?」
「これはもうわたしの癖ですのでぇ。では秘書官様失礼しますぅ」
「イオさんありがとうございました」
会釈と同時に世界が回りました。
一つの、温室?の前に到着しました。
「こちらに、世界樹が存在してますぅ。扉開けますねぇ」
モンクスフードさんが扉の横のタッチパネルに手を当てると、ピッと音をたてて扉のロックが外れました。
「ほぁ……」
太陽光に照らされる、1本の大きな木。
それは伸び伸びと枝を伸ばし、青々とした葉を揺らしています。
こんなに大きな木が、サンルームに存在しているなんて驚きです。
………明らかに研究してます!と言った机と本棚もサンルームにありますが………
「……世界樹とはどのような存在かご存知ですかぁ?」
「いえ、詳しくは……わたしに教えてくださいますか?」
「はぁい!」
モンクスフードさんは、んんっと咳払いをして机に地図を広げます。
「世界樹とは、世界の中心にあると言われる神聖な樹木ですぅ。地図で見ると、クリスティアの北西部と、レペツェリアの南東部、セレニアの南西部がぶつかるこのすんごい深い森に存在していると言われていますよぉ」
「存在がわかっている訳ではないのですか?」
「ここは禁足地ですからねぇ。結界が張ってあるのと、文字通り世界が違うので誰も入ることができません。森を見渡せる場所から見渡しても世界樹と思わしき木は見つけられませんでしたからねぇ」
「世界が違う、とは?」
「高位の妖精や精霊から聞けた話だと、『ここにはあるが、ここにはない。開けばあるが、開かねばない。世界樹へ辿り着くには、特別な鍵が必要。選ばれしものしか、通れない』なんて歌われましてねぇ。なんのこっちゃですよぉ」
「ぜ、禅問答みたいです」
「見えてるものが全てとは限らないんですねぇ。…話は戻りますけど、ここにある世界樹は世界樹本体の枝のようなモノらしいですぅ。各国にありますねぇ」
「この立派な木が、枝……?」
「世界樹の役割は、マナを生み出し循環させることですぅ。光合成ってご存知ですかぁ?」
「はい」
「世界樹は呼吸でマナを生み出しますぅ。世界樹がマナを生み出さなければ世界にマナが満ちず、マナを取り込むことで存在するモノたちは存在出来なくなり、魔法も使えなくなりますぅ。クリスティアのマナは、この世界樹の枝が担ってますぅ」
ほ、ほぁぁ……知らない事ばかりで勉強になります。
世界樹が存在するおかげで、世界にマナが満ちるのですね。
「本体は違う世界にあり、世界を支えています。その代わりに枝を各国に伸ばしてるんですねぇ」
「なるほど……とても重要な存在なのですね」
「そうなんですよぉ!中々興味深いですよねぇ」
世界樹を見つめるモンクスフードさんの目は、とてもキラキラしています。
本当に世界樹の事が好きなんだなと感じますね。
「なのでこの世界樹の枝達はとても強固に守られていますぅ。この世界樹に何かあれば、クリスティアに影響がありますからねぇ」
「そう、ですね。とても大変なことになります」
ちゃんと、お世話しないとです。
わたしは頬を軽く叩いて、気合を入れます。
「…間に合ったな」
「ぴぎゅあ」
「クク、どんな鳴き声だ」
恐る恐る振り返ると、そこにはイオさんと、
「な、ななな何故ここに王様が」
「今回はミツキが来たと聞いてな。息抜きに覗きに来た」
「申し訳ございませんミツキ様……陛下はミツキ様がいらしたと聞いて、休憩するなどと言って執務室から逃げ出しまして」
「……頭の固い臣下と話すのは疲れる」
密会振りの王様がいました。
フットワーク!あ、いえここ王城?ですけれども。
「俺の事は気にせず依頼に集中すると良い」
「は、はい……ガンバリマス……」
ふとモンクスフードさんが静かだなと横を見ると、
「も、モンクスフードさんん!?」
白目をむいて固まってました。
だ、大丈夫ですかこれ!?
「ミツキ様、お気になさらず。陛下を前にすると彼女はいつもこうなのです」
「……い、いいんですか1人で世界樹に近付いてしまって」
「俺がいるからな。……お前は変な事しないだろう」
「しませんが!」
わたしへの信頼が高くて嬉しいですが!
じゃあ近付きますよ!【鑑定】しちゃいますからね!
わたしは少しずつ世界樹へ近寄ります。
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
少し乾燥気味。
《枝》:キミ【植物学者】だね?ならこれが読めるね。とりあえず水をおくれ
「わーーーー!?みずがめ座!」
【鑑定】の結果が何やらフレーバーテキストのように!?
か、会話文みたいなのが!?こ、これも【植物学者】のおかげでしょうか!?
とりあえず乾燥気味のようなのでサダルスウドを喚び出します。
「ど、どうかしましたかぁミツキ様」
「いえあのえっと乾燥気味みたいなので、水撒いてきます!」
サダルスウドを連れて世界樹の根本に、ぐるっと回りながら丁寧に水をかけます。
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
とても瑞々しく潤った。
《枝》:生き返った〜ありがとう。次は右上の枝が伸びすぎて天井突き破るから剪定してほしいな。
「は、はい!えっと、枝を下に下ろしてくださいますか…」
とりあえず言われた通りにやるしかないです……!
枝が高すぎて届かないので、そう伝えると枝をこちらへ下ろしてくれました。
「モンクスフードさん!剪定バサミとかありませんか?」
「………ミツキ様」
モンクスフードさんの方向を振り返ると、両肩をガシッと掴まれました。
「……ミツキ様は、何と会話してるのですか」
「………せ、世界樹の枝、と?」
「精霊の加護とか持ってるんですかぁ!?何故世界樹と会話できるんですかぁ!?」
「ももも持ってないです!【植物学者】って言うスキルしか持ってないですううう!」
「な、なんですかそれはぁぁぁ!?」
モンクスフードさんが爆発しました。
ゆ、揺らさないでくださいぃぃ!?
マナーを守って楽しくユアスト!(?)
これからもこの作品をよろしくお願いします!




