使徒と杖 ①
ご評価、ご感想ありがとうございます!
長くなりそうなので2つに分けます。
おはようございます!
すっきりとした目覚めです。
制服に着替えて、スマホの通知を開きます。
Your Story -ミツキ-
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職業依頼達成しました。
薬師として、依頼に貢献しました。
子羊の宿り木で食事をしました。
多くのメニューが貴女を満足させたでしょう。
とても美味しそうでしたね。
お疲れ様でした。
食事、とても美味しかったです!
その後の兄との会話で中々精神的に疲れましたが、わたしのプレイは変わりませんので良いでしょう。
プレイヤーよりきっとNPCの皆さんと話すことのが多いでしょうからね!
よし、今日も学校頑張りましょう!
「そういえばユアスト、レベルが10になったわ」
「わ!花ちゃん忙しいからあまりやれてないかと思ってた」
花ちゃんとお昼を食べながら話をします。
花ちゃんは弓道部の部活が忙しそうです。試合が近いと尚更です。
「結構、動く的を撃つの練習になるのよ。動かない的の方が狙うの簡単だからね」
「そ、そうなんだ」
「ゲームだと風の流れとか天候とかあるからいい練習だわ」
「部活に活かせてすごいなぁ」
花ちゃんは花ちゃんなりに楽しめてるようで良かったです。
「わたしもウィザードとして頑張ってるよ」
「満月っぽいわね」
「皆そう言うけどそんなに魔法使いっぽい?」
「とてもね」
「とてもかぁ」
「後で一緒にプレイしましょ。夏休みとか」
「うん!」
夏休みはたくさんプレイ出来そうです!
我が家は仕事が忙しい両親に代わって家事手伝うことでのお小遣い制ですからね。
欲しいものも月刊の雑誌とか写真集なので、割と貯金できます。
そういえばユアストには課金アイテムとやらがあるらしいですね。
………でも課金するとこわいので、見るの止めときましょう。
放課後になり、部活に向かう花ちゃんを見送ってわたしは帰路につきます。
電車の中にユアストの広告を見つけます。
自由度が高すぎてやる事たくさんです。
やる事が多いって、楽しいですね。
「ただいまー」
「おかえり」
リビングにはお兄ちゃんしかいません。
おや、お母さんとお父さんはどうしたのでしょうか。
「父さんと母さんなら30分前にランニング行ったぞ」
「そっか」
「夕食は焼きうどんな」
「わぁい!」
焼きうどんを食べて、お風呂を済ませて、いざログインです!
身嗜みを整えて、ウィンドバードの串焼き(塩)にかじりつきます。
美味しい……塩うまですわ……さっぱりしてます。
よし、ごちそうさまでした!
ディアデムを喚び出して、準備完了です!
部屋から出て、リビングを覗きます。
お師匠様とヴァイスさんが、地図を眺めて話し合っています。
「こんばんは。お師匠様、ヴァイスさん」
「あいよ」
「ミツキか」
「ちょっと狩りに行ってきます」
「…気を付けて」
「遅くならないようにね」
「はい!」
元気よく返事をして、外に出ます。
大きく深呼吸して、どこに行こうか考えていると、お師匠様のはと座さんがこちらへ飛んできました。
またオリーブを咥えてますね…
(あら、どこか行くのね)
「はい!モンスターを狩りに!」
(頑張んなね。あ、コレあげる)
「わ、ありがとうございます」
わたしの手にオリーブを落とすと、どこかに飛んで行かれました。
………オリーブ………あっ!
わたしはオリーブを【鑑定】します。
知恵と平和のオリーブ
知恵と平和の象徴、オリーブの葉と実。
植えた場所にはモンスターが近寄らなくなる。
実は最高級素材としても扱われる。
特殊情報(アストラルウィザードにのみ開示)
はと座を喚び出すことにより低確率で入手可能
こ、これですーーーーーーっ!!!
植えた場所にモンスターが近寄らなくなります!
どのレベルのモンスターにまで影響があるかわかりませんが、これを浮島に植えればいいのでは!?
ひとまずアイテムボックスにしまいます。
オリーブ、植えるの良さそうです!
ありがとうございますファクトさん!
大変助かりました!
なんだか今日は良いことありそうです!
わたしは懐中時計を握ります。
モンスターと出会えそうなのは………あ、アイレ村近くの森が良さそうです。
………レッドグリズリーと遭遇して、レンさんに助けてもらった森です。
あの辺りを、探索してみましょう。
ネブラの森、というらしいですね。
霞?ネビュラじゃないですもんね。謎です。
ネブラの森に到着しました。
今日は三日月なので、オリオンさんを喚びましょう!
ちょっと魔物を多めに瀕死にしてもらいましょうかね……
「〈オリオン座〉」
魔法陣から、オリオンさんが出てきました。
辺りを見回して、こちらをみてニカッと笑います。
「お、今日は俺だけなんだな」
「今日は生贄が欲しくてですね、オリオンさんにモンスターを瀕死にして貰おうかと」
「ハハハッいいぜ。やってやらぁ」
オリオンさんは朗らかに笑います。
頼りになりますね、オリオンさんは。
「たまには弓も使うかね」
「!」
「狙った獲物は逃さねえぜ?」
「よろしくお願いします!」
オリオンさんの弓!
狩人として、楽しみですね!
森の奥深くまで進むと、モンスターのレベルが上がってきました。
レベルが25〜の夜行性のモンスターが多めです。
この辺りなら生贄として良さそうですね。
視界に入ったクレイジーモスをファイアーボムで瞬殺します。
クレイジーモスは許しません。
「お、ナイスだな!」
「クレイジーモスには一度酷い目に合わされましたので……」
「なるほど、魔法の判断が早いのはその理由か」
即燃やします。
クレイジーモスは長く見てはいけません。
キュアポーションがあるとはいえ、有限ですからね。
ポイズンバットやパラライズバットの群れをオリオンさんが弓で次々と木から落としていきます。
わたしも負けじとアロー系の魔法で木から落とします。
中には当たりどころが良すぎて何体か瞬殺してしまいましたが、これくらいならお話できますかね?
ほぼ瀕死ですし。
「オリオンさん、ちょっとアルタールでコスモス様とお話ししてきます」
「お、了解!」
「〈さいだん座〉」
オリオンさんに一声かけて、アルタールを喚び出します。
-生贄を捧げますか-
生贄の対象はプレイヤー、モンスターとなります。
対象:ポイズンバット、パラライズバット、ポイズンバット・パラライズバット全て、ミツキ
今回はモンスター全て捧げましょう。
-ポイズンバット・パラライズバット全て を生贄に捧げます-
祭壇の前に跪きます。
コスモス様、どうか話をお聞きください。
『良いぞ。話してみよ』
「ありがとうございます!コスモス様」
『構わん。愛し子の願いは叶えたいものだ』
「コスモス様は、使徒という職業についてご存知ですか?」
『ほう?使徒とな』
コスモス様の声に楽しそうな雰囲気を感じられます。
『使徒とは、まぁ簡単に言えば遣わされた者、ぶっちゃけると我のような概念的存在の力の代行者に近いかもしれんな』
「だ、代行者?」
『太陽を信仰すればソルの力の一端を、月を信仰すればルーナの力の一端を扱う事が出来るようになるのじゃ』
「神官とは、違うのですね」
『神官はあくまで仕える者だからな。力の代行者ではない』
「なるほど、勉強になりました」
『信仰されればそれは信仰心となり、我ら概念的存在の力となる。使徒になれば、それは大層気に入られるぞ』
使徒は、概念的存在の力の代行者のような職業……
………凄すぎでは?お母さんなんてジョブを選んだのか。
もしソル様の使徒になったら、太陽光の下でも活動できますかね?
『はて、身近に使徒でもおるのかの?』
「えと、母が使徒になりまして。母はわたし以上に天体への知識と興味があります。なので、宇宙の概念的存在であるコスモス様の使徒になったらどうなるのかな、と」
『ほ』
コスモス様の気配が固まった気がしますね。
何かありましたかね?
『わ、わわわ我の使徒に?』
「まだ母には何も話してませんけれど」
『わ、我の……うええ』
「…え、コスモス様!?」
『わ、我の存在なんて愛し子達しか知らぬ故、使徒に出来る者など、おらぬと思っていたのじゃああああ』
そ、そうですよね……!
さいだん座を介してしかコスモス様とはお話しできませんし、宇宙様の事を知るのは、わたし達しかいないですね!?
……どうすれば母にコスモス様の事を知ってもらえるのでしょう!?
「……コスモス様、こちらに来れたりしますか?」
『依代を作るか、ランクの高い贄を捧げるかすれば一時的に実体化は出来るやもしれぬ』
「よ、依代?」
『概念的存在の依代を作るには最高練度の人形師が作る最高の素材を利用して作った依代が必要になるからの。贄の方が現実的じゃな』
「ランクの高い、モンスターですね」
『レベルではなく、モンスターとしてのランクが高い奴じゃ』
「それは、ええと、ドラゴンとかキマイラのような?」
『お、よく知っておるの!そやつらは1体で1日は実体化出来そうじゃ!』
「今のわたしには瀕死にすら出来ませんね………」
絶対に、どんな手段を使ったとしても負けます。
でも、母の冒険のために早めに相談しなければです。
お師匠様にも、相談しましょう。
「お師匠様にも相談します」
『そうじゃの。エトワールとヴァイスによろしく頼むぞ』
「ありがとうございます、コスモス様。……あ、コスモス様」
『どうかしたかの?』
「感謝の気持ちもあります。プラム、コスモス様もどうぞ」
祭壇にプラムを置きます。
生贄とは違うので、お渡しできないでしょうか?
『……我に、プラムを?』
「お世話になった方へ渡すと喜ばれると、ソル様も言ってました。コスモス様には、たくさんお世話になってますから」
『……ほんに、愛いやつよ。有難く貰おうかの』
少しひんやりとしていた空気が、ほんのり温かくなりました。
そして祭壇の上に置いたプラムが消えました。
『もし、我の使徒になってくれたら、嬉しいがの。でも無理強いはしないようにな』
「はい、わかりました」
『うむ!ではそろそろオリオンが待ちきれなくなっておる故、この辺りで終いにするかの』
「お応えいただきありがとうございました、コスモス様」
『なんのなんの。また喚ぶが良いぞ』
祭壇の真上で開いていた宇宙を覗く亀裂が閉じます。
ありがとうございます、コスモス様!
「戻りましぴぎゃぁぁぁ!?」
「お、戻ったか!」
立ち上がりながら振り返ると、背後に大きな蜘蛛のモンスターがひっくり返った状態で地面にいました。
慌てて距離を取ります。
「ソイツ、死んでねえからな。攻撃してくれ」
「は、はひ!」
「割とタフですばしっこくてな。案外楽しめたぜ」
フォレストスパイダー Lv.32
アクティブ 瀕死
【糸】【酸液】【産卵】
【捕食】【風魔法】
ひ、瀕死ですが!
わたしより大きい蜘蛛は恐ろしいですね……!
「【身体強化(魔)】【ブースト】、ファイアーボム!」
「ギィッ…!」
「ッ!」
最後の力を振り絞ってなのか、前脚を振り回します。
そしてその身体から、卵を産み落としました。
「!ファイアーボム!ファイアーボム!」
あ、あれは駄目です!
生まれたら駄目そうです!
子蜘蛛がたくさん蠢いています!
「ファイアーボム!ファイアーボム!」
と、鳥肌たちました……!申し訳無いですが……!
生まれたら大変なことになる気がします!
「オラァ!」
わたしがファイアーボムを打ち込んだフォレストスパイダーの卵のある辺りに向かって、オリオンさんが棍棒を振り下ろしました。
-フォレストスパイダーを倒しました-
種族レベルが上がりました。
任意の場所へステータスを割り振って下さい。
SPを2獲得しました。
メインジョブレベルが上がりました。
フォレストスパイダーの絹糸、針、魔石(中)を手に入れました。
よし!倒しました!
……子蜘蛛が生まれていたらどうなっていたのでしょう。
小さくて、仕留めづらかったかもです。
「子持ちの蜘蛛は死ぬ間際に産卵するんだよな」
「そうなのですね」
「産卵する前に倒すか、産卵した後殲滅するかだな。孵化すると面倒だぜ」
小さな蜘蛛が蠢くのを想像すると鳥肌が立ちます。
ステータスを操作して、お師匠様の所へ帰るとしましょう。
ミツキ Lv.36
ヒューマン
メインジョブ:アストラルハイウィザード Lv.7/サブ:薬師 Lv.6
ステータス
攻撃 46 +1 (+5)
防御 59 (+36)
魔攻 100 +2 (+10)
魔防 56 (+36)
敏捷 41 (+15)
幸運 53 +2
ついに魔攻が100を超えました!
なんとなく強くなれた気がしますね。
「オリオンさん、ありがとうございました」
「おう!また喚んでくれな!」
オリオンさんは手を振って消えました。
次はもっとレベルの高いモンスターの時にお喚びしますね!
では、お師匠様の所で使徒の相談をしましょうか。
ちなみに作者は虫全般が苦手です。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




