‐Your Only Story Online‐ 〘リュー〙
ご評価、ご感想ありがとうございます!
今回は兄、リューの視点です。
リューの数時間の出来事をお楽しみ下さい。
目覚ましを止めて起き上がる。
やっぱりテントよりベッドのがよく眠れるな。
皆さんおはようございます。
終夜流星です。
………誰に対して自己紹介してるんだか。
学校に行く妹と仕事に行く両親を見送って30分程度ランニングする。
…ニートじゃないぞ。
適当に朝飯を食って、写真集用の写真を編集する。
2時間程度編集して、今日の仕事は終わり。
ユアストにログインするとしよう。
なんやかんやで俺もハマったなぁ。
宿屋のベッドから起き上がり身体を動かす。
ん、現実とのズレはないな。
適当に買っておいたパンを食べながら自分のステータスを眺める。
リュー Lv.9
ヒューマン
メインジョブ:槍使い Lv.9/サブジョブ:観測者 Lv.3
ステータス
攻撃 28 (+5)
防御 18
魔攻 13
魔防 16
敏捷 19
幸運 16
ジョブスキル
【突き】【薙ぎ払い】【スラッシュ】【チャージ】【観測】【可視化】【解析】
パッシブスキル
【鑑定】【暗視】【夜目】【気配察知】【隠蔽】【気配察知】【直感】【清潔】【槍術】
装備
[頭]なし
[上半身]見習い槍使いの服
[下半身]見習い槍使いのズボン
[靴]見習い槍使いのブーツ
[武器]見習い槍使いの槍
[アクセサリー]なし
[アクセサリー]なし
見習い槍使いセットボーナス 攻撃+5
「レベル上げねえとな……」
何にせよレベルを上げなきゃ出歩けないのでな。
妹はかなりレベル上げてるし、追いつくまではいかないが近づけないとな。
そこは兄としての意地というか。
兄は頼られたいので。
「じゃあそろそろ行くか」
当分は依頼をやりながらレベル上げだな。
ギルドでウルフ10体討伐依頼を引き受けてルクレシアの門から外へ出る。
チラホラプレイヤーがいるが、まぁ平日の昼間だからそう多くはない。
のんびり自分のペースで討伐するとしよう。
出現したスライムを切り上げて両断しながら、ひとまず草原を歩き回る。
………唐突だが、俺は長物の扱いには自信がある。
家族で通っている道場で、俺は長物を扱っている。
妹は回避、母親は合気道を利用した徒手空拳、父親は組手をメインにやっていた中、俺は好んで長物を扱っていた。
……妹の回避って考えると謎だな。何か得物使わせておけば良かったか。
その理由からとりあえず槍使いを選んだが、中々戦いやすい。
現実では打ち合いくらいしか出来ないがゲームなら手加減せず攻撃できるしな。
飛びかかってきた角ウサギを身体を捻って回し蹴りの勢いで蹴り上げて、落ちてきた所を貫く。
角ウサギは呆気なく消えた。
この辺りのモンスターは手応えが無くなってきたな。
もっと遠くに行ってもいいが、まだ野宿するにもアイテムがなぁ………
人気が少ない山の方へ向かって歩く。
え、全然プレイヤーいないな。なんで?
「お」
ウルフを発見した。
……チッ5匹か。まぁ時間はまだまだあるし、ゆっくり倒せばいいか。
「は?増えてねぇか?」
無心にウルフを刺したり薙ぎ払ったり蹴り飛ばしたり貫いたりしていたらなんか15匹くらい倒してたんだが?
それに毛色の違うやつも混ざってた気がするな。
倒したからわかんねぇけど。
「……なんかのギミックか?」
ウルフ討伐繰り返すと何か出てくるみたいなパターンか?
まぁ周りにプレイヤーもいないし、レベル上げのために倒すからいいけどこのゲーム経験値は繰り越されるのか?
繰り越されるといいんだが。
「ッと」
噛み付こうと口開けたウルフの口元に槍を穿つ。
地面に伏して消えるウルフを見送る。
倒しては襲い来るウルフ共を蹴散らすこと15分。
これで30匹だな。
そろそろ終わってくれて良いんだが、アナウンスが無いってことはまだ出てくんだよなぁ……
気配と足音を聞き取り振り返ると、巨大な体躯で淡い紫の体毛をしたウルフがこちらを見据えていた。
紫雷のグレイウルフ 〈トニトルス〉 Lv.15
アクティブ
【噛み付き】【突進】【鼓舞】
【雷魔法】【紫雷】【爪撃】
‐ネームドモンスターと遭遇しました-
「は」
「グルルルル…」
牙を剥き出しにして唸るグレイウルフ……トニトルス。
は、これが名持ちの特殊なモンスターってやつか。
「俺いつそんなイベント踏んだッとぉ!?」
振り下ろされる前脚を避けて距離を取る。
でけえ図体の割に、ウルフだから敏捷値高いなコイツ。
「【チャージ】からの【スラッシュ】ッ!」
槍に魔力を【チャージ】して次に放つアーツの威力を高める。そして槍を構えてトニトルスに接敵、【噛み付き】を真横に避けてそのまま斬りつける。
チッあんま減らねえな。
レベル差だよなぁ……ウルフ30匹分の経験値くれよ。
まぁちまちま削るしかねえか。
「中々強そうなヤツだしなァ!」
強敵と戦えるなんていい事だ!
ハァ??ふざけんな??
タフ!タフすぎ!
んでウルフもどっかから呼んで来やがる!
そんでそれを【鼓舞】してなんか連携めっちゃ上げてくる。
割と倒してるがめっっっちゃ邪魔!
「【解析】……チッ弾かれた」
何度か【解析】をトニトルスに仕掛けるが弾かれる。
この【解析】は、サブジョブの観測者に連なるスキルだ。
ステータスまで視ることができ、弱点部位のようなものも視えるようになる。
今までそれを使って雑魚を一撃で倒してきた。
そもそも観測者ってなんぞや?となるだろう。
俺も詳しくは知らない。
キャラクリの時に女神と話してたら、最終的にこれになってた。
あの女神割とフレンドリーで、迷ってるヤツには人にあったジョブ勧めてくれるみたいだ。
調べたけどこのジョブ出てこなかったんだよな。
出来る事は【観測】、観測したものや解析したものを【可視化】、そして細かく視る【解析】という謎なアーツ。
本当にわかんねえけど弱いモンスターに使ったらステータスまで見れたし、ウィークポイントみたいなのも出現するから使うようにしている。
MPポーションでMPを回復する。
何度か攻撃をしながら【解析】チャレンジをした時、それは唐突に視えるようになった。
「【解析】ッ……!視えたッ!【可視化】!」
何度目かの【解析】で視えたものを忘れないように【可視化】する。
【可視化】したものは、観測者アルバムに自動的に挟まれる。
俺専用のアルバムだ。めっちゃ便利。
そう考えると研究者向けなのか?このサブジョブ。
天気の流れとか読むのにも【観測】は使えるんだが。
まぁ現時点でのステータスだから、レベルが上がったモンスターと戦った時にはあまり役立たないけどな。
(左前脚の付け根!……よく見ると毛色が違うな)
古傷、か?
まぁウィークポイントであるなら狙うのみ。
初心者の槍は壊れなくて助かる。攻撃力低いがな!
寄ってきたウルフをトニトルスの方向へ蹴り飛ばし、【突進】の邪魔にする。
穂先を利用してウルフを転がし頭を貫く。
それに激高するトニトルスの攻撃が単調になっていく。
「ガッ」
「んぐっ」
槍で爪や突進をいなしているが爪も爪で重い!
転がった時に手にした土を目元に向かってバラ撒く。
すまんな!戦闘だから邪道と言われても何でも使うぜ!
「グッ」
「【チャージ】ッ、【突き】!」
目を瞑り顔を背けたトニトルスの左前脚の付け根へ槍を突き出した。
「グオオッ!?」
「おわっ!?」
暴れた拍子に吹き飛ばされて地面を転がる。
チッ痛えな。ポーションで回復しつつ息を整える。
おお、HPがすげえ減った。残り4割だ。
やっぱあの部分弱いんだな。よくわからねえけど。
落ち着きを取り戻したトニトルスがこちらを睨みつける。
お互い距離を取って睨み合う。
俺は槍を持つ手に力を込める。
トニトルスは、その体躯に帯電し始めた。
そう言えば【雷魔法】ってなんだ?
基本の4元素と光と闇以外にまだ魔法あるのか?
まとめサイトには、そんなの載って無かった気がするんだが。
徐々に纏う雷の量が増える。
……決めに来てんな、しょうがねえ。
ここまで来たら腹を括る。
相打ちは難しくともせめて一太刀ってやつだな。
もうポーション類も使ったし。
「【チャージ】」
「グオオオオンッ」
俺がチャージをした瞬間に、雄叫びを上げたトニトルスがこちらへ突進する。
俺トニトルスから目を逸らさずに、接敵のタイミングで槍を振りぬいた。
「【スラッシュ】ッ!」
槍から伝わる衝撃と轟音で槍から手を離してしまい、俺はその場から吹き飛ばされた。
クッソ!手が痺れた!
槍も遠くに転がってしまった。そして俺と槍の合間にトニトルスが立ち塞がる。
あー、今度から槍は複数持ってないと駄目だなこりゃ。
戻って来いって念じても槍は戻って来ない。残念。
「チッ次は負けねえ」
こちらを見詰めるその目を睨み返し、捨て台詞を吐く。
はぁ、悔しいわ。
『……気に入った。ここまでHPが減らされたのは久しい。まさか古傷を抉られるとはな。貴様は我が好敵手となるだろう』
「…は?喋った!?」
『良い眼を持っているようだし、次相見える時に更に強くなる事を期待しよう』
- 称号 トニトルスの好敵手 を入手しました-
「はァ!?」
『それに武器も弱すぎではないか?これやるから良い武器にしてもらうのだな』
ちょまておいおい思考が追いつかないんだが!
急に喋り始めたと思ったら爪を伸ばしてそれをバキッと折ったんだが??
それを持って近付いて来て、俺の前でペッって捨てたんだが?
あれ?殺し合いしてなかったか俺達。
『どうした、受け取らないのか』
「あ、おう貰うけど」
とりあえず拾ってアイテムボックスにしまう。
急にフレンドリーになって俺困惑。
『我も強くならねばな。貴様、渡り人だろう?名は?』
「お、おう。リューだけど」
『殺しても死なないと女神に聞いた』
お、嫌な予感がするな。
『では次相見える時までに強くなれ、リュー』
身を引こうとした次の瞬間に首元に噛み付かれる。
いっっっってえ!?
『貴様の名、覚えておくぞ』
前言撤回。
フレンドリーじゃねえわ。
いきなり首は無えわ。
痛みに薄れていく意識の最中、俺は思いっきり悪態をついた。
(……次はぶっ飛ばしてやるからな!)
「はぁ……」
俺はルクレシアの石碑の前に立っていた。
何だったんだあのモンスターは………
掲示板でネームドモンスターについて調べてみると、チラホラスレをみかける。
しかしトニトルスに関する物ではないようだな。
とりあえず、ウルフ30匹分の経験値は貰ったからギルドで達成報酬貰って、この爪を武器に出来る鍛冶師を探さねえとな。
トニトルスの雷爪
紫雷を蓄えるトニトルスの爪。
武器加工に技術を要する。
加工に技術を要するのか……
プレイヤーには無理そう、か?
妹を見習ってギルドで物知りそうなNPCに声でもかけてみるかぁ
俺はゆっくりとギルドへ向かうのであった。
家族も設定練ってたらみーんなおかしいことになりそうでどうしようかと思っています( ˘ω˘)
これからもこの作品をよろしくお願いします!




