浮島とわたしについて
ご感想、ご評価ありがとうございます!
「…………つかれた。つかれました」
「お疲れ様でしたなーミツキ氏。かっこよかったですぞ」
「こういうのは苦手なんですよね……」
「いや、大分押せ押せで強気に話せていましたぞ」
結構必死に話していたので何話したかあまり覚えてないんですよね………
「まぁウィズダム氏の言うこともわからなくはないんですよね。NPC、めっちゃ多いですし。片っ端から話しかけると不審者ですしね」
「まぁそうですね……だからこそ図書館の利用や、ギルドの職員さんとの会話をちゃんとした方がいいと思います」
「……ボクも行きつけのお店の店員さんともっと仲良くしようっと」
皆さんもっと交流しましょう。
きっとたくさん助けてくれますよ。
に、しても………
「退屈な時間でしたよね………」
「ボクは聞いてて面白かったから大丈夫ですぞー。レン氏は?」
「俺も別に。……お疲れ」
「うええ、ありがとうございます」
今の時間でどっと疲れました。
人のいない所に行きたいです。
今は視線に敏感なので、ちょっと気になります。
「………人気のない所でゆっくりしたいですね……」
「そうですなぁ…」
浮島、行ってみましょうかね。
というかこれ誰かと一緒に飛べるんでしょうか?
お師匠様とヴァイスさんは、わたしを連れて行ったことのない場所へと飛ぶことが出来ました。
懐中時計を見てみましょう。
わたしは懐中時計をアイテムボックスから取り出します。
銀の懐中時計
エトワールにより、【瞬間移動】と【転移】のアクティブスキルが刻まれている。
星と月の意匠が施されている。
【転移】??
【瞬間移動】のアクティブスキルだけでなく【転移】というアクティブスキルも刻まれています。
あれ?最初からありましたかね?
お師匠様から、【瞬間移動】が刻まれた〜としか聞いてなかったですし、それからは気にせず魔力込めて使ってましたからね。
ちょっとミカゲさんの袖を掴んで、いつものように魔力を通します。
-転移先を選んで下さい-
魔花の花園
ルクレシア
星詠みの魔女の島
名もなき浮島
ルクレシアの冒険者ギルド
ブティック《スカーレット》
リゼットの薬屋
同行者を連れていく際には使用者の身体の一部に触れている必要があります。
!行けます!身体の何処かに触れていれば、移動出来そうです!
というか、【転移】なら細かく指定できます!
【瞬間移動】は街しか選べませんでした!
……今度から【転移】を使いましょうかね?
………浮島を見たら、お二人はどんな反応するんでしょう。
ちょっと、気になりますよね?
「レンさん、ミカゲさん」
「ほいほい?」
「わたしがクランホームを建てたい場所があるのですが、ちょっと行ってみませんか?」
「………街の中じゃないんです?」
「別の場所、ですね……」
「………それはヤバいですね」
「………歩くびっくり箱だなァお前は」
「えっ」
「今クランホームを持ってるクランは、ほぼ街や都に借りるか空き地に建てるかしてるんですよ。そう多くないみたいですけどね」
「えっ」
うええええ街も良いですけど、自然あふれる場所とかに建ててもいいんじゃないですか???
ヘルプでクランホームについて確認します。
ヘルプを開くと、レンさんとミカゲさんも覗き込んできます。
………街の中や都、村などに建てられる。
他に建てられる場所はあるが、都や街の外だとモンスターに襲われる事もある、と。
なるほど、それなら皆さん都や街に借りるのもわかりますね。
………お師匠様の島でモンスターを見たことはありませんが、星座達が外で警戒していたのを思うと、あれは護衛でしたかね!?
わ、どうしましょう。
………元は王様のですし、そこは大丈夫、ですかね?
「………見て、考えましょう。わたしもまだ行ってないので!」
「行きあたりばったり!」
「何かあったらレンさん、ミカゲさん、よろしくお願いします……」
思わず真顔になって2人を見ます。
すると2人は小さく笑って、
「任せろ」
「任せてくださいな」
と笑いました。
わたしもつられて笑顔になりました。
いざ、クランホーム候補地の浮島へ!
ここだと目立つので、路地裏へ入ります。
人目が無くなったのを確認します。
「わたしのポンチョとか、袖とか掴んでて貰えますか?」
「はーい。………レン氏が女の子のポンチョ掴むのウケる」
「殴ンぞ」
「……飛びますよ!」
わたしは懐中時計に魔力を込めて、名もなき浮島を選択します。
すると、慣れた浮遊感を感じた次の瞬間、強い風を感じてギュッと目を瞑りました。
爽やかな風を感じて目を開けると、森の入り口にいました。
……浮島に森があるのはデフォルトなんですかね?
振り返ると、
「ひえ」
さ、桟橋みたいなのがありますがほぼ崖です!
え、何故桟橋????
空飛ぶ船でもあるんですか???
あとやはり雲の上です。
「…………すっっっご!!!」
「ぴっ」
びっくりしました!
ミカゲさんが叫びました。
レンさんも、崖ギリギリに近付いて下を覗き込んでいます。
驚きの行動!怖くないんですか!?
「ちょ!浮いてる!浮いてます!」
「そ、そうですねねね」
「ボク今雲の上にいます!!」
ミカゲさんが雲海を見つめながらわたしの肩を揺らします。
あわわわわ……
「……すげェな」
「ももも森の方も見てみませんか?」
「おう。……いい加減揺らすの辞めてやれ」
「ハッすみませんミツキ氏!驚きの余り思考が吹っ飛んでました!」
レンさんの言葉でミカゲさんが戻ってきました。
頭がガクガクしました……
大興奮でしたね。わたしも驚きましたから!
よし、では三人で森の中を進みます。
割と普通に森です。
しばらく歩くと、ぽっかりと空間があいてました。
ふむ、ここに家を建てるのが良さそうですね!
島も、全然わたしが通う学校の敷地くらいの広さがあります。
お師匠様の島はあれです。ドーム5個分くらいって奴です。
それが空に浮いているのはどんな仕組みなのか……凄すぎです。
「ここにクランホームを建てましょう!」
「いいですね!!」
「いいンじゃねえの」
よし、ランクを上げたらここにクランホーム設置しましょう!
……建築でしょうか。
「………あとで調べましょう。建築なのかポチッたら建てられるのか」
「ボクも調べますわ。リル稼ぎしないと」
「適当に素材集めとく」
「にしてもミツキ氏この、う、浮島?どこで入手したんですか!」
レンさんとミカゲさんはプラムの事知ってますし、お伝えしても大丈夫でしょう。
「えと、プラムを王様へ渡したら、お礼に貰いました?」
「…………ハァ」
「……例のプラムは確かにやべえブツでしたが、お礼のスケールもデカすぎなんですわ………」
「そうですよね………」
「……ボクらにも、話せる範囲でお話聞かせて欲しいんですわ………」
「そう、ですね」
プラムのお礼と聞いてミカゲさんとレンさんが頭を抱えました。
これからもレンさんとミカゲさんとは、長い付き合いになると思います。
お二人は、わたしのことを心配しよく助けてくれました。
わたしもそんな二人の事よく知りたいですし、わたしの事もちょっとずつ知っていただけたらと思うのです。
「……お師匠様に相談してくるので、少しお待ちいただけますか?」
「あ、いえ知りたいのは知りたいですが、ミツキ氏のペースで良いんですよ?」
「……俺らはお前の情報目当てでつるんでる訳じゃねェし」
「そうです。ミツキ氏と一緒にプレイするの好きなのでここにいるんです」
「……はい。わたしもお二人とプレイするの好きです。なので、わたしの能力とか知ってもらえたら、今度また一緒にイベントとか参加させてもらうとき、戦いやすくなると思うんです」
「ミツキ氏………」
「…もうお昼の時間です。午後も、ちょっとお時間いただけますか?」
「……今日はお前に全部やるよ」
「そうですな。今日の時間は全部あげますぞ!」
レンさんはしょうがない奴、とでも言いそうな表情をしてます。
ミカゲさんは、歯を見せてニシシと笑います。
「…ふへへ、ありがとうございます」
「じゃあ一旦ログアウトしますかなー」
「ここで大丈夫ですか?」
「問題ねェだろ」
「まぁ死んでもどうにかなりますからね」
まあ、そうですね!
お二人がログアウトするのを見送って、わたしもログアウトします。
食べたらすぐにお師匠様に相談しに行きましょう。
二人には、誠実にありたいのです。
手早くご飯を食べてログインしました。
まだ二人は戻ってきてませんね。
お師匠様の所へ向かいましょう。
お師匠様の家に着きました。
お師匠様はいるでしょうか?
「お師匠様」
「…どうかしたかい」
お師匠様はソファでリラックスしながら宝石を磨いていました。
「ご相談がありまして」
「なんだい」
「わたしの、いえアストラルウィザードの事を、話したい人達がいるのです」
「……座りな」
お師匠様の雰囲気が少し変わりました。
やはり話すのは良くないのでしょうか。
「話したい相手ってのは渡り人だね」
「はい」
「……信頼してるんだね?」
「はい。わたしの危機を救って頂いて、無知なわたしをよく助けてくれました。何度も、気を付けるようにと助言もくれました」
ゲームに不慣れなわたしに、嫌がらずにゲームの事を教えてくれます。
……ゲーム慣れてる人は、初心者が嫌いだという話もよく聞きますしね。面倒だからと。
でも二人は不慣れなわたしに教えてくれますし、わたしの行動に驚きつつも引かないで一緒にプレイしてくれます。
それが、わたしにはとても嬉しかったのです。
「……ワタシ達は、いずれの国にも所属せずいずれの国にも力になることを求められる存在さね。だからそれぞれの国によく呼ばれるし、国の闇に触れることもあるだろう」
「国の、闇……」
「そりゃ歴史が長ければ、負の遺産も歴史もあるからね」
………お師匠様は、そんな闇に触れてきたのでしょうか。
アストラルウィザードとして、国の助けになってきたのでしょう。
それは簡単な事では、無いはずです。
そんなお師匠様の力に、わたしはなりたいです。
「巻き込むにも覚悟が必要だ。一度こちら側に引き込めば逃してやれないからね。……覚悟はあるかい」
「巻き込む、覚悟………」
……お師匠様の力にはなりたいです。絶対なります。
ですが、二人の都合はどうでしょう。
二人の冒険を、確実に邪魔することになります。
黙り込んだわたしを見て、お師匠様は考え込む素振りを見せます。
「……まぁ、聞いてみればわかるだろう。連れてくるといい」
「……よろしいのですか?」
「話してみないと分からないこともあるからね。ミツキの連れてくる渡り人が、巻き込んでいいって言うなら契約の上教えてやるさ。……ワタシがお前の冒険に着いていける訳じゃないからね」
「……はい、お話しして来ます」
「ちゃんともてなしてやるさ」
お師匠様に挨拶して、浮島へ戻ります。
本当に思っていたより、アストラルウィザードの影響力が大きいです。
……二人に、ちゃんとお話ししないとです。
そろそろ道連rじゃなくてミツキの事情を本当に理解してくれるプレイヤーを増やそうと思っていました。
基本ソロプレイなのは変わりません。
次回、最強の保護者(お師匠様)との顔合わせです。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




