いざ王都へ! ④
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「こ、これは……」
「…【創造の箱庭】とは、フィールドに特殊なフィールドを作り出す魔法です」
「フィールドを、作り出す?」
「例えばそうですね……もし、うお座を喚び出すとしたら、水場もしくは川、海が必要です。ですがこの場には水の気配は無いです。このような時、【創造の箱庭】を使えば水場を作り出す事が出来ます」
「この森の中でも、水場を!?」
「と言っても、システムに干渉するものではなく、あくまで魔法で一定時間具現化されるものだと、知識は言っていますが」
フィールドを、作り出す………魔法で具現化……
魔法で、森の中に池もしくは川も、作れる……?
………む、難しいです。頭から煙が出そうです。
ゲームに干渉する訳では、ないんですね。
それはシステム的に駄目だと思います。バグが出そうです。
というかそれはゲーム的に、ありなんですか!?
「………とんでもないことだと思うんですが」
「とんでもないことをするのが、アストラルウィザードなんですよ。……だからこそ、狙われた訳ですが」
……アストラルウィザードになる前に図書館でヴァイスさんから渡された、星詠みの一族の本の内容を思い出しました。
山に住んで、外界と隔絶した生活を送り、人間を助けて、欲深き人間に襲われた、星詠みの一族。
お師匠様、ヴァイスさん、そして、わたし……
他にもいるのかもしれませんが……
……思っていたよりも、アストラルウィザードはユアストで重要そうな存在のようです。
「……今回は、使うの、やめてもいいですか?」
「……それも1つの選択です。……人目も、ありますからね」
そのような大きな力を使うのは、少し恐ろしいです。
馬車の事もありますし、【創造の箱庭】は今回は発動を止めることにします。
-発動を止めますか? -
はい
いいえ
キャンセルボタンがあったので、今回はキャンセルします。
人目のないところで、試すようにしましょう。
「………教えて頂き、ありがとうございます」
「…それも学びです。貴女は、多くの事を学ぶ必要があります。……まずは、オークを倒してしまいましょう」
「………はい」
わたしは杖を握る手に、力を込めました。
「【身体強化(魔)】、【ブースト】 ウィンドボム!」
「グォッ!?」
「ウォーターボム!ウォーターボム!」
「グガッ」
【1:魔術師】のおかげで、オークを狂化する間もなく倒すことが出来ました。
「……ありがとうございます、皆さん!」
(戦闘中の指導は時と場合で考えて欲しいんだがな)
(ミツキはまだわからぬことが多い。仕方ないだろう)
「戦闘をお任せしてすみませんね」
(サジタリウスは教えるの得意だからな……仕方ないな)
「まだまだ未熟者ですみません!もっと頑張ります……」
「……すごいですね、貴女!」
「ひうっ!?」
聞きなれない少年の声が響きました。
振り向くと、馬車からメイドさん?に守られていた少年が身を乗り出してこちらを見ています。
「危ないですよ!ジル様!」
「助けて頂き、ありがとうございます!」
「い、いえ。冒険者として当然の事かと」
「それでもです!ありがとうございます」
さっきまでとても怖がっていましたが、とても目をキラキラさせています。
……まだ、時間に余裕はあります。
どうしてこうなったのか、話を聞いてみましょう。
「えっと、わたしは冒険者のミツキです。皆さんは……」
「助けて頂きありがとうございます。こちらはジル様、わたくしどもが仕える主人です。私はメイドのルーシー、ミツキ様が助けてくださった男性は、執事のレグランです」
「ジルです。ありがとうございました」
「ジル様、ルーシーさん、レグランさんですね」
ジル様と呼ばれた金髪赤眼の少年は、胸に手を当てて頭を下げます。
ジル様、ということはやはり高い身分の家のお子さん、なんですね?すごく礼儀作法が身についているようです。
なのでひとまずジル様とお呼びしましょう。
「護衛の方とかはいないんですか?」
「冒険者を雇いましたが、先程のオークとの戦いで逃げたようです」
「それは護衛として失格ですね………どちらへ向かうご予定だったんですか?」
「王都へ、向かう予定でございました」
ルーシーさんがそう答えます。
護衛が逃げるとは!その冒険者たちなんなんでしょう!
「ここでお会いしたのも何かの縁、よろしければ王都まで共に向かいませんか?」
このままここでお別れは、薄情すぎます。
行き先は同じですし、一緒に向かったほうが良いでしょう。
カペラさんがいれば、モンスターに襲われません。
「!…よろしいのですか?」
「ミツキ様は冒険者と聞きました。何かご用事があったのでは?」
「いえ、わたしも14時までに王都へ向かわないといけないのです。行き先は一緒です。レグランさんもまだ安静にしていた方がいいと思います。カペラに御者をして貰いましょう」
「……そう、ですね。お願いしてもよろしいでしょうか」
ジル様が申し訳なさそうにそう言います。
わたしより年下、おそらく10歳くらいでしょう。
放ってはおけません。
「ではせめて馬車へどうぞ。お話も聞かせてください」
「えっ………会ったばかりの冒険者ですが、良いのですか?」
「助けて頂いた方を無下にするのはしてはいけないことです。僕も、貴女のお話を聞きたいのです」
わたしはサジタリウスさんと顔を見合わせて、サジタリウスさんが小さく頷いたので、お邪魔することにします。
カペラさんがいるので、皆は還します。
シリウスだけは、御者台でカペラの隣に座っています。
「シリウス?」
(カペラと話すついでに索敵してやるよ)
「……変な人達が近付いてきたら教えてね」
(おう)
「じゃあカペラ、王都へ馬車を走らせてください」
カペラさんは親指を立てて頷きます。
親指を立てるおじいさん……中々シュールです。
「……では、お邪魔します」
「ミツキ様、どうぞこちらへ」
ルーシーさんの隣に、座らせてもらいます。
馬車の内装は、ちょっと凝った作りをしています。
椅子も、ソファのようにふかふかです。
外装はこういうのも悪いですが、ちょっと安っぽい感じでしたが、内装は貴族の馬車、という感じがしますね。
馬車が動き始めました。
2頭立ての馬車です。馬に怪我が無くてよかったです。
……わたしが小走りするより速いですね。
「……先程は、ありがとうございました」
「怪我は大丈夫でしたか?」
「どうにか回復致しました。ポーション、ありがとうございます」
外の様子を見ていたとき、ジル様の隣に座っていたレグランさんが、こちらへ軽く頭を下げました。
ポーションが怪我に効果があってよかったです。
万能薬みたいですね。
「では改めて、僕はジル=ヴァルフォーレンと申します。クリスティアの西北に位置するヴァルフォーレン侯爵家の者です」
「ミツキです。……えと、失礼ですがお抱えの護衛とかはいらっしゃらないんですか?」
「……今回はお忍びでして。急いでいたのもあって、途中の街で冒険者を雇ったのです。まぁ見事に逃げられてしまいましたけど」
ジル様は苦い顔をします。
なるほど、お忍び………
「……ジル様、急ぎすぎてご自身の武器も忘れるポンコツぶりです。ミツキ様に助けて頂かなかったら、どうなっていたことか……」
「ルーシー、庇ってくれてありがとう」
「ジル様は、鍛えてらっしゃるんですね?」
その年で武器をお持ちとは、驚きです。
まぁゲームですし、この年齢の住人もモンスターと戦わざるを得ない感じ何でしょうけど。
「……ミツキさんは、渡り人でしたね。僕らヴァルフォーレンは霊峰マグナ・パラディススにほど近い場所に領地を抱えています。霊峰、そして霊峰の周りには強いモンスターが多いので、それらがミゼリアへ向かわないよう、日夜戦っています。ヴァルフォーレンの人間は、幼い頃より戦う術を教えられるのです」
「そ、そうなんですね」
また新しい知識が!
それに霊峰……星詠みの一族が、昔住んでいたと言われた場所ですね。
「霊峰は、クリスティアとセレニア神聖王国の間にあります。ちなみに霊峰は、とある一族や司祭、巫女しか入る事は許されていません。………エトワール様のお知り合いであるミツキさんは、恐らく入れるでしょう」
「うぇっ!?」
「……ふふ。僕らヴァルフォーレンはエトワール様と交流がありますから。そのブローチの意味も、良く知っています」
あっブローチ!
リゼットさんのブローチは、薬師やルクレシアの住人からの好感度が上がりやすいと書いてありましたが、お師匠様のブローチはハーセプティアの有力者からの好感度が上がりやすくなる、というものでした……!
「今回のお礼もそうですが、今後ヴァルフォーレンへいらした時には、ぜひ滞在先に我が家をご利用ください」
「はい、旦那様にも今回の事をちゃんとお伝えさせて頂きますからね」
「……はぁ……訓練が5倍になるな……」
ジル様がぽそりと呟きました。
……幼い頃から鍛えられてきたジル様が武器を忘れて飛び出す急用、中々ヤバそうな用事なのでは……!?
(……ミツキ。そろそろ馬を休憩させるぞ)
「……わかりました」
「?ミツキ様?」
シリウスに返事をしたら、ルーシーさんがこちらを覗き込みました。
そうでした!シリウスの声、わたしにしか聞こえないのでした!
「そろそろ馬を休ませるとのことでした」
「そうでしたか。確かに、王都まではあと1時間半くらいですね。休憩しましょう」
今は11時過ぎたくらいです。
わたしも1回ログアウトして、少しだけお腹に何か入れましょうかね。
っと。馬車が止まりました。
ちょっと降りてみましょう、ずっと座っていたので腰が……
「わあ!」
小さな泉と、花畑!
ヒイラギが囲っているので、モンスターの心配は無さそうです!
そっとスクショします。
うん、綺麗です!
「ジル様、わたしは一度自分の世界へ戻ります。15分程度、頂いてもいいですか?」
「問題ないです。レグランも大分動けるようになりましたから、馬の世話は彼がします。ルーシーが食事の用意をしますので、ゆっくりとお戻りください」
「ありがとうございます」
わたしは馬車の近くで荷物を開くルーシーさんに声をかけます。
「ルーシーさん、食料は大丈夫ですか?」
「飛び出してきたので、少しだけですね。少しだけ狩りに行こうかと思っています」
ルーシーさんは、スカートの裾を持ち上げてごそごそして鞘付きの短剣を取り出しました。
わ、わあ!メイドさんの武器の隠し場所!
太腿ベルト……咄嗟に目元を両手で抑えました。
「お肉とお野菜なら!あるのでお渡ししますよ!」
「そ、そんなミツキ様にはこんなにお世話になってますのに」
「たくさんありますから!」
とりあえずお肉や野菜をルーシーさんにお渡しします。
調味料は、お持ちみたいです。あと食パンが包まれています。
「何から何まで、ありがとうございます。ミツキ様の分も、ご用意させて頂きますからね!」
「はい、よろしくお願いします」
わたしは、馬車の近くにテントだけ展開して、潜り込みます。
ガッツリではなく、少しだけお腹に入れてきます!
大きな力を使うのは怖いと思うんですよね。
少なくとも主人公は、使うまでは怖がるタイプです。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




