00 次会う時は笑顔で
大きなエネルギーの塊に取り込まれて、僕は空間を彷徨っていた。
上を見ても下を見ても色、いろ、イロ、見渡す限りいろんな色。
中心には大きな扉。それ以外何もない空間。
どれ一つ同じ色など無くて。その中をフヨフヨとただよいながら僕の色を探した。
何色かももう覚えていないその色を。ボクノイロを。
ボクノイロハ、ドこにアルノ。
しかし、その僕の問いかけは、カラフルな空間に放り出されたっきり帰ってこない。
ナンデ、だれもこたえテ、くれなイノ?
あれからどれだけ、ここにいたのだろうか。
いつしか、探し求めた物の事も忘れた。
自分のことも、皆のことも。ナニモカモ
......。
その時、そばに一つの色が寄ってきた。
蛍のように淡く光るその色は、僕と混ざって一つになる。
その時、『見つけた』なぜか、そう思った。
色の方も僕に応えるようにチカチカと嬉しそうに点滅している。
名前も分からないその色に、不思議と心が落ち着くのを感じる。
そうだ、君が僕の色だ。お帰り××色。
僕らが混ざり合った瞬間、それに応えるように空間の扉が開いた。
そして、僕達はその扉を吸い込まれるようにしてくぐり、新しい世界へ旅立っていった。
♦♢♦♢♦♢
さて、今日から僕も高校生だ。
全てが新しいで包まれている。
友達は100人は欲しい。勉強は1位をとろう。初彼女も作るんだ。
クラブは、まあレギュラーになれるように頑張る。
一見無理そうに見えるけど、ゲームと同じで目標は高い方がなんかいい気がする。
できなかったらできなかったで、まあ楽しく過ごせればそれでいい。
緊張と期待に包まれた教室にはザワザワと落ち着かない雰囲気が漂っている。
みんな、互いを探りあっている。今日はそんなざわめきすら心地よく感じる。
教室の前にある黒板をみて指定の席に着くと、すぐに隣の席の奴がボソッと呟いた。
「えっ、××色......珍しっ」
「っ!」
フフフ、さっそく友達一号こと、カモが来たぜ。
予想通りの聞きなれた言葉。もう百万回は聞いたね。
こんな時の対処は鬼ほど持っているから困ることはもうない。
だから、僕はいつも通り、満面の笑みで答えてやった。
「そう、××色なんだ!
いい色でしょ!」
僕の答えが意外だったちがいない、そいつは軽くとまどいながら答える。
「えっ、ああ、いい色なんじゃないか」
いいぞ、僕のペースだ。ここで、追撃の手を緩めてはいけない。
「ありがとう~。■■もいい色だよね~。それよりさ、名前なんて言うの?」
「え?
俺、■■。あ~後、さっきから気になってたんだけどさ、それ▲▲のライブ限定グッズだよな」
■■君が僕のカバンのキーホルダーを指さす。
「えっ、■■君、▲▲知ってんの?」
「いや、子どもの頃から好きなんだよね~。ほらあの高音の部分とかよくね?
あ、あと呼び捨てでいいから、俺も呼び捨てにするし。え~っと」
「××でいいよ!
で、■■は何の曲が好き?」
「おけ、××な。好きな曲だろ?
俺は♢♢かな~」
「あ~わかるわ~、♢♢いいよね~。あのベースが完璧すぎる」
「だろ!
あれいいよな!
わかるわ~、あ、あとさ!」
「は~い、皆さ~ん! 自分の席ついて前向いて~」
「あ、先生きちゃった、なぁ、またあとで話そう?」
「もちろん!」
Fin