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06 ××色の人生はいつだってハードモード

 

 ハッ


 僕は自分の部屋で目を覚ました。

 部屋にこもった、うだるような熱気といつもの天井に、今のが昔の話だと気づく。


「夢?

 ......か」


 薄っすらと開いた目と寝起きのぼんやりとした頭で、夢の余韻に浸りながら思った。


 あの頃は楽しかったな......。


 あの後、仲良くなった皆と学校や公園やいろんな場所で遊んだっけ。

 クリスマス会でプレゼント交換したり、友達の誕生会に行ったり、お年玉でゲーム買ってみんなで遊んだり。


 そういえば、あの時一緒に買ったゲームは今でも部屋のどっかにおいてあるはずだ。

 僕は気だるい体を無理やりベッドから起き上がらせると、沢山の物が散らかる部屋を見渡す。

 探してたものは、すぐそばの本棚にあった。


 そうそうこれこれ。懐かしいな。

 思った通りゲーム機とカセットはその一番下に置いてあった。

 あの時と変わらないその場所に。その上には軽く埃が積もっている。

 その寂しそうな姿が何となく、過去に置いて行かれた僕みたいに見えた。


 僕はその埃を払いながら昔の思い出をなぞった。



 やりすぎて親にコントローラーとり上げられて、それでも○○君のコントローラーを借りて遊んだんだよな。


 あんなに夢中だったのに、いつから遊ばなくなったんだっけ。



 ああ、そうだ......中学校に上がってからだ。


 僕の家は学区の外れの外れにあったから。

 皆と同じ中学校に行くことが出来なかった。


 その事実を知ったとき、学区を決めたヤツ誰だよマジで●●(ピー)(聞かせられないよ!)してやりたいって思った。



 そこら辺のお偉いさんは僕みたいな奴がいるってこと知らないんだろう。


 そんなこと微塵も考えず、多分めちゃくちゃ事務的に決めたに違いない。


 でもって思った通り、新しい中学は控えめに言って最低最悪だった。




 あーあこんなこと、思い出さなきゃよかった。




 今頃、○○も、△△も、他の皆も新しい環境で楽しんでいるのかと思うとシンプルに羨ましかった。中学校に上がってからも2人とは何度か遊びにいった。



 2人と部活のこととかテストのこととか、クラスの可愛い子の話とか、まあそんな他愛ない話をする。当然僕もすることになる。......そのほとんどが嘘なわけだが。


「おい、俺らがいなくても大丈夫なのかよ笑」


 って僕のことを揶揄(からか)いながら心配する親友に、新しい場所で2人がいなくても僕はうまくやってるって安心させてあげたかった。

 そこに少しの見栄があったのは否定できないけど。



 学校で友達がいない分、2人と遊ぶのはメチャクチャ楽しかった。


 でも、大切な友達だからこそ、今の僕を知られるのは恥ずかしくて、偽るのもなんか惨めで、作り笑いだけがうまくなっていく自分に嫌気がさしていたのも事実だ。



 僕は新しい環境には慣れることができなかった。

 入学式に自分の教室に行くとみんなが僕の色をチラチラ見ながら驚いてた。



 教室がザワザワするのが分かる。どうやら僕の変な色の話は、初対面の皆の共通の話題として非常に盛り上がっているようだった。

 まあ、僕の友達作りには一切作用しなかったけど。


 最高に皮肉が聞いてる。僕の色ならもっと僕の為に働けよと思う。


 それどころか、通り過ぎる時に大き声で「××色とかマジないよな、俺だったら恥ずかしくて歩けないわ~」って僕に聞こえるように言うやつもいた。


 プラスにならないどころかマイナスだ。

 僕の××色でマイナスコミュニケーション育みやがってマジでふざけんな。



 で、そんな風に学年中で変に噂になった僕を見て、話しかけようという猛者もさは誰もいなかった。


 さっきみたいに一部の奴を除いて誰も表立って口に出したりしなかったが、経験上彼らの態度を見ればどんなアホでもわかる。


 理由は“僕が変な色”だからだ。


 後、同じ小学校の知り合いがいないというのも大きい。

 今までとは違う。からかわれても誰も僕をかばってはくれなかった。


 彼らにとって“変な色の僕”は噂にするにはもってこいだけど、友達にするには相応しくないとでも思われたのだ。それはある意味、正常な反応ではある。

 誰だって入学早々、悪目立ち一人ボッチコースに行くのは嫌だろう。僕だって嫌だ。



 いつもこの色のせいで苦労する。ほんと、××色(こんないろ)なんてなければよかったんだ。



 いつの間にか、夢の中の楽しかったはずの思い出が、辛い現実にすり替わっているのに気づいてなんだか空しくなった。


 僕が何をしたって言うんだろうか。ただ××色だっただけなのに......。



「ぶっ!」


 その時、突如として風にあおられたカーテンが僕の顔を塞ぐ。


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