試練(1)
祠の中に入ったリーミア達は真っ暗闇の中に居た。リーミアが聖光を使って光を灯した。すると……彼女の光に応じたのか、祠の中の壁に付けられた灯籠が全て輝き出し、祠周辺を照らし出した。
「すごい仕組みね……」
「エルテンシア帝国だった時代の文明は、現在よりも遥かに優れた技術が使われていた……と言います。この祠もそれに応じた技術が使われていたのです」
それを聞いたリーミアは、ふと……扉の方を見る。
「襲って来ないかしら?」
「墓所の扉は魔族では開けられない様に魔法の効果が仕掛けてあるって聞いた事があります……」
負傷した男性神官に女性神官が光の魔法で治癒させる。
「それにしても、何故……助けたのですか?」
男性神官がリーミアを見て言う。
「貴方が危険だったからよ」
「光の聖魔剣を得る者の条件を知らなかったのですか?」
「条件……?」
「祠周辺で、戦闘した者は儀式での獲得が得られないのですよ。この上は、聖魔剣を管理する者との力比べで試練を乗り越えて獲得するしか無くなったのです。しかも……管理する者を納得させるなんて、通常の人間では難しい……と言われております」
「構わないわ、それが示された試練なら乗り越えるまでよ」
それを聞いた女性神官はクスッと微笑んだ。
「ねえ、私達が心配する事では無いみたいね」
傷が癒えた男性神官は呆れた表情でリーミアを見る。
「まあ……我々が心配するなんて、余計な事かもしれませんが……管理する者と力比べになった場合、決して諦めては成りませんよ。一度諦めると二度と試練は行われなくなりますので……」
「分かったわ!」
そう返事をしたリーミアは祠の中を見渡すと、少し先に降りる階段があり、その遥か前方に祭壇があるのを見つける。
「あそこに行けば良いのですね」
「ええ、そうです」
3人は一緒に祭壇へと続く階段を降りて行き、一本橋の様な道を進む。遥か前方に佇む。光の聖魔剣の慰霊碑の近くまで来る。
大きな祭壇を目の前にして彼等は口を大きく開けて見上げた。
「すごい……」
「立派な慰霊碑ね……」
「かつて世界を救ったセルティスの慰霊碑でもありますからね……」
ふと……リーミアは目の前に置かれてある短剣に気付く。
「もしかして、あれが光の聖魔剣なの?」
「多分……そうだと思います」
男性神官が言うと、リーミアは祭壇へと進み、短剣の側へと近付く。
祭壇に納められている短剣は、自分が所有していたテリオンの剣と何処か似ていた。神秘的な白銀の鞘には、複雑な紋様が刻まれていて、柄の先端には光輝く魔石が埋め込まれた状態だった。
神秘的な魅惑を放ち、それでいて不思議な形状を示す短剣にリーミアは手を伸ばした。
短剣に触れた瞬間ー
ゴゴゴ……
地響きの様な揺れがする。リーミアと神官達はその揺れに驚いた。
揺れが収まると、何処からとも無く声が聞こえて来た。
『我が光の聖魔剣を触れようとする主は何者だ?』
「だれ?」
リーミアは周囲を見回す。彼女の動作に神官達は不思議な表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「今……声が聞こえなかった?」
彼女の言葉に対して彼等は何も気付いていない様子だった。
『我が問いに答えよ、主は何者であるか?』
「私は、光の聖魔剣を必要とする者よ」
『なるほど……では、この場でお主が覚えた全ての光の魔法を唱えよ。真にそれを所有に相応しいか見定め様……』
「分かりました」
リーミアは瞳を閉じて深呼吸する。魔法陣を浮かび上がらせて、魔法を唱え始める。『聖光』––––そう叫ぶと、両手から眩い光が放たれ、周囲を眩く照らし出す。
『光源』そう叫ぶと、光の粒子が浮かび上がり、煌めき輝く。
『斜陽』その魔法を唱えると、周囲に紅い光が照し出され、上空に無数の光の刃が浮かび上がる。
『幻光』その魔法を唱えた瞬間、不思議な霧が発生しリーミアの身体が無数に分かれた。
『回源』そう唱えると、眩い光の粒子がパアッと広がり辺りを照らした。
『光炎』そう唱えた瞬間、リーミアの手から炎の様な光が放たれて、祭壇を紅く照らした。
『優光』その魔法を唱えた時、リーミアの掌から……ほんのりと淡く赤い色の光が放たれる。
『光輪』その魔法を唱えた瞬間、リーミアの身体に光の膜が浮かび上がる。
『列光』その魔法を唱えると、眩しい輝きの粒子状の光が放たれた。
『光皇』そう魔法を唱えた瞬間、リーミアの身体から光の柱が現れ、周囲を眩く照らした。
『浄化』その魔法を唱えると、粒子の様な光の波の波紋が、慰霊碑のある祭壇周辺を照しながら広がって行く。
全11の光の魔法を全て唱え終わると、再び祭壇前がゴゴゴ……と、地響きの音を立てて揺らす。




