高嶺の花
––––翌日……
「はあ……」
宿舎前、ケイレムは深い溜息を吐いて居た。
「なんだお前は、さっきから溜息ばかり吐いて……」
ぶっきらぼうな口調でエムランが言う。
「昨日の会議で、ナレフが討伐に参加するはずだったのに、何んで僕が参加する事になるんだよ!」
「仕方無いだろう。アイツが出られないと、言うから……お前が出る事になったんだ」
––––昨夜……義妹の入隊が決まった日、その夜エムランはナレフと一緒に酒場へと行き、夜遅くまで酒を呑んでいた。
今朝、早朝……ナレフはケイレムの部屋をノックして来た。寝起きのケイレムはレメミィに支えられて二日酔いの状態で彼の前に現れた。
「悪い……今日の討伐変わってくれ……」
彼は気分悪そうに言う。
「はあ?」
ケイレムは呆気に取られながら答える。
「ごめんなさい、お兄ちゃんの代わりお願いできますか?」
レメミィが申し訳なさそうな表情で言う。
ケイレムは戸惑いながらも、受け入れる事に決めた。
了解を得ると、レメミィが「ありがとうございます!」と、長い黒髪を垂らしながら頭を深く下げた。その仕草にケイレムは一瞬ドキッと胸が高鳴った。
ケイレムはエムランを見た。
「エムランは、二日酔いでは無いんだね」
「俺は少し酒を呑んでも平気だ!軟弱者のアイツと一緒にするな⁉︎」
(多分……同じ位に呑んだと思うな)
と、ケイレムは思った。多分……エムランを酔い潰すには酒樽くらいが必要だろうと、彼は感じた。
その後……アルムとルフィラが宿谷から出て来ると、皆は城へと向かう事にした。
エルテンシア国の王都に聳え立つ純白城は、常に出入りするのには許可証が必要だった。個人的な理由で城に入る事は許されず、何らかの許可を事前に用意してからで無ければ、城への入場は認められなかった。
以前……リーミアをチームに加えたフォルサが城に入れたのは、定期的に城を開放して、城の中を自由に見学させると言う特別企画があり、その時に城の中へと入ったのだった。
ケイレム達は初めて入る城に驚きながら周囲を見渡す。
城に入って、すぐ目の前には大広場が広がっていた。広場の中心部には大樹が植え込まれている。その大樹の先に、城の中へと続く大理石の階段があった。階段近くには既に数十名を数える程の人が集まっていた。
「すごいね……」
「純白城の基本的な構造は、400年前に造られたけど……100年前の魔獣との戦いで半壊してから、一部を修復、建て直しをして現在の形へになったのよ」
ルフィラがケイレムに向かって話す。
「へえ……そうなんだ」
彼等が会話していると、集まっている人達が突然騒ぎ出した。
何事だ?と……彼等が振り向くと、純白の衣装に身を包んだ若い男性が、側近達と共に姿を現した。
「見て、代理王よ!ねえ、見に行きましょう!」
ルフィラが興奮しながら皆が集まっている方へと向かう。
彼は、側近達と一緒に出席者達の名簿の確認を行う。
光花の順番になり、名簿を見る時、代理王は羊皮紙に書き換えがある事に気付いた。
「おやぁ?君は確かケイレム君だったね」
「あ、はい……初めまして。–—ん?以前何処かで会いましたか?」
「ああ……いや、何でもないよ。今日は頑張ってね。ハハ……」
彼は愛想笑いしなが彼は立ち去って行く。
それを見ていたエムラン、ルフィラ、アルムの視線がケイレムに集中する。
「なんだ、お前は……代理王と知り合いだったのか?」
「代理王と言っても、やはり民衆の上に立つ人だから、そう簡単に会えないのに……顔をしられるなんて羨ましいわ!」
「いや、そんな筈はないけど……だけど、何か……初めて会う気がしないんだよね。以前何処かで会った様な感じがするんだけど……何処だっけ?」
彼は首を傾げながら考え込む。
彼等がそう話し合っていると、側近の騎士団長が、壇上へと上がり皆に向かって話す。
「本日は集まっていただき感謝する。最近王都周辺に大型の魔獣が確認されたので、君達に討伐への依頼を申し込む事に決めた。無論……討伐成功の際には参加者達に報酬を差し上げる。皆が無事、城に戻れる様、我々も補佐するので、頑張って討伐に励んで貰いたい。以上–––!」
騎士団長の話が終わると全員意気込みながら威勢良く「オー!」と、大声で叫んだ。
彼等は、その後魔獣討伐へと列を成して城を出て行く。
夕刻時には遊撃隊が大型魔獣を数体倒した報告が成された。
この時、討伐に参加した中で光花のメンバーの活躍が一際評価が高かく、グループの知名度も一気に上がる事になった。
その後、グループの噂を聞きつけて入隊希望者が増えたが、レネラやマイリア、更に……アルファリオによる厳しい審査を潜り抜けるのが厳しかった。その為なのか不明だが、野良狩りをしてる人達に取っては、いつしか光花に入隊するのは『高峯の花』……と言う風潮が広まる様になった。




