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転生少女と聖魔剣の物語  作者: じゅんとく
第一章 マネニーゼ市場
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野営地

「へ…楽勝だな、この戦い」

「ちょっと予想外だったね」

「フッ…野営地制圧も時間の問題かな?」


余裕を見せていた直後だった、敵の1匹が角笛を吹き鳴らす。

角笛が鳴り響いた時だった。門付近から魔物の伏兵が現れて、弓で彼等を攻撃する。

ピュンピュン…と弓弦の音を鳴らし、敵の死角からの攻撃に皆は戸惑う。

幸いリーミアの魔法のバリアによって弓の攻撃は弾かれて全員助かる。


「マイリ、弓持ちを狙え!」

「え…何処?」


狼狽えたマイリは、焦りの色が濃くなり戸惑いを隠せなくなっていた。


「ねえ、マイリ後ろ!」

リーミアが後方を指して大声で言う。


野営地から離れていた魔物達の増援が、後方から現れて一斉に押し寄せて来ていた。

「げえ…そんな、50匹以上はいるぞ!」

マイリが後方の敵に向かって攻撃魔法を行う。


「火球!」


ズドーン!


マイリは敵を倒した…と思ったが、襲って来る敵達は怯む事など無く、勢いよく突進して来た魔物の1匹がマイリに一撃を喰らわせる。


「ギャア…」


深傷を負ったマイリがリーミアの足元に倒れ、魔物は彼女の杖を踏みつぶした。

更に後方から現れた敵が彼等を襲おとした時、ユウマが後ろの敵に対して応戦する、前後の敵との交戦に仲間達は焦りの色が濃くなり始めて来た。


「リーミアちゃん、君だけでも逃げろ!」

ユウマが大声で言う。


(このままでは皆が危ない…何とかしないとー)


震えながらリーミアは考える。

その時だった、自分の過去の記憶が蘇る。



少女の目の前で横たわる男性がいた。彼は少女に向かって手を差し伸べ…息を切らしながら囁いた。


(恐れるな…君は強い…誰にも負ける事は無い。自分の中に眠る秘めた力を信じろ…)



ドクン…ドクン…と心臓の鳴り響く音が聞こえ、気持ちが高鳴り、リーミアは目を開き自分の額にあるバンド型の額飾りを外す。


額には不思議な紋様が現れる。手にした額飾りをバックの中に入れ、スゥ…と息を深く吸い込むと、彼女の周辺から気流の様な風が巻き起こる。それに気付いた魔物達が一瞬ビクッと反応してリーミアの方に視線を向けた。

直後、リーミアは自分の持っていた魔法の杖を敵に向かって放つ。


「火球ー!」


ズウゥーン!


凄まじい轟音と共に炎と砂煙が広範囲に巻き起こる。爆風は彼等の側まで届く程の威力だった。


激しい爆風と共に小さな小石が飛びる。凄まじいまでの攻撃魔法によって襲って来た魔物の大半が炎の餌食になった。

ユウマとマイリは唖然とした表情で、その光景を眺めていた。


「すごい…なんて威力よ、まるで上級魔法じゃない」

マイリは呟く。


「今の凄い音は何?」

前衛で奮戦しているロメルが後ろに振り返って聞く。


リーミアの魔法の威力に追い付けなかった魔法の杖は、魔石が壊れてしまい…単なる木の杖だけになってしまった。


深傷を負っているマイリを見てリーミアは傷口に軽く手を差し伸べる。すると彼女の傷口は一瞬で回復した。


リーミアの放った炎に怖じけず突進して来る魔物の群れがあった。その1匹が槍を構えて迫って来ると、彼女は敵の槍を掴み上げて魔物を振り飛ばす。勢いよく投げ飛ばされた魔物は丸太のバリケードに刺さって生き絶えた。

更に彼女は敵から奪った槍を投げると、近くに居た魔物が3匹同時に串刺しされて絶命する。


後ろの敵が少なくなるとリーミアは前衛で苦戦しているロメルの方へと向かう。中々倒せない魔物達の群れの中に飛び込むと、杖を槍代わりにしながら魔物を叩き、短剣を鞘から抜き取る。


ヒュンッ!


風切り音と共に、数匹の魔物達の頭部が同時に体から落ちる。

苦戦していたロメルは少女が、見慣れない長剣を手にしている姿に驚く。


「何処から現れたんだ…あの剣は?」


その長剣をリーミアは、短剣の鞘の中に入れると、魔物の1匹が持っていた槍を掴み上げて木の上に投げ飛ばす。


「ギャー!」


呻き声と同時に木の上に隠れていた弓使いの魔物が落ちる。

弓使いの魔物の側へ行くと、魔物が使っていた弓と矢を持ち敵に向かって矢を放つ。

ピュン、ピュン…。押し寄せる敵達が次々と倒れて行く。草むらに隠れていた敵も見つけると、狙いを定めて矢を放つ。

門の近くまで接近する魔物も居たが…その敵に対して呪文を唱えて杖先に炎を発生させて、杖を投げ飛ばす。


「ギャー!」


見事に炎の杖が敵に命中して、魔物は絶命する。

向かって来る魔物が1匹いて、長剣の形をした聖魔剣を振り下ろす時、魔物が剣を横にして交わそうとしたが…聖魔剣は敵の剣と一緒に魔物を真っ二つに切り裂いた。


通常の鉄の武器すらも両断させてしまう程の威力を示した聖魔剣…しかも鞘から抜き出る度に剣先の長さが変わる為、敵も味方もリーミアの武器がどんな形状なのか解らなかった。

苦戦を強いられたユウマとロメルも、リーミアに続き奮戦する。


聖魔剣は、大剣の形として現れると、突風を起こして数匹の魔物達をなぎ払う。

更に後方に現れた敵が居た、敵は大きく鎌の様な大剣を振り上げる。その時リーミアは剣を鞘から抜くと、普通の短剣で魔法効果が無かったかと誰もが思った…が、敵の腹部に短剣が刺さると、そのまま敵の動きが停止した。


短剣が魔物の体から抜かれる時、キンッと凍結の様な音がして魔物の姿が真っ白になっていた。魔物は一瞬で凍死してしまっていた。

魔物の攻撃で負傷したロメルを見たリーミアは、側へ行き軽く手を当てると傷は回復する。


リーミアが前戦に立った事で、戦況の構図は大きく変わった。離れると飛び道具で攻撃、接近すれば聖魔剣の餌食。どう足掻いても魔物達に勝算は無かった。

聖魔剣は細身の剣で現れた時、敵の喉を刺して剣先が折れたが…鞘に入れて出した時は、新しい剣で復活していた。敵を数匹切り倒し血と脂でベットリになっても鞘に入れると新しい剣になる。正に無限の剣を使い回している様だった。


次々と倒されて行く魔物達、約30分後…野営地は魔物達の死骸で埋め尽くされた。

野営地での1番の功労者はリーミアだった。


(何なの…あの子、回復系なんて言うよりも、手練れの剣士じゃない…魔法も上級クラスに近いし…とても初心者なんかじゃ無いわ)

マイリは震えながらリーミアの戦闘を見ていた。


生き残っている敵の姿が無くなった野営地でユウマは敵将と思われる魔物の兜と、武器、敵地に掲げられている旗を袋に詰めて一同は凱旋する。

集会所に戻ると、受付のレナに袋に詰め込んだ物を提出させて報告をする。しばらくして、全員に奨励金が送られる。この時…誰が1番敵を倒したかも報告する様に決まっていた。

ユウマは、リーミアが1番の功績だった事を報告。すると…集会所を運営してる事務所から、鑑定結果の報告がなされてリーミアに2階級特進で青色の宝石が掲げられたネックレスが送られて来た。


「凄いな…僕達が青まで上がるまで半年も掛かったのに…」

「私もギルドの受付を長年しているけど…登録した日に特進する人は始めてみるわ」


皆が笑顔で見つめる中リーミアは、嬉しそうにネックレスを受け取る。周囲が彼女に拍手しているが…1人不服そうに見ている者が居た。


「私…この子と一緒に狩りはしたくは無いわ!」


意外な発言にユウマが驚いた表情でマイリを見る。


「どうしたのだよマイリ…?」

彼女は壊れた杖を手にしながらユウマに近付く。


「ユウマ…悪いけど、ここでハッキリと決めてくれない?彼女を残すか…私を残すか…?私は彼女と一緒なんてゴメンだからね!」


そう言われたユウマは少し悩んだ。


「確かに…マイリの意見も一理あるね…」

口数の少ないロメルが発言して来た。


「どうしたんだよロメルまで…」

「リーミアちゃんに助けられたのは感謝して居るよ、でも…回復系で仲間に入ったのに、彼女はいつのまにか前衛で戦闘して居たし…倒した敵の数も多い…。それに何よりもリーミアちゃんはとても強い…。正直言って彼女が今の僕達の処に居るのは、あまりに勿体無い気がする。僕達の様な小さなギルドでは手に余る存在だ。それよりも彼女に合った場所で活躍するのが1番だと僕は思うね…」


それを聞いたユウマが少し悩んでリーミアを見る。


「ゴメン…リーミアちゃん…、彼等とは旗上げからの仲なんだ。君は僕達にはあまりにも大き過ぎる存在だ、君に相応しい場所を見つけてくれ」

「分かりました」


話が決まるとユウマは受付にリーミアの除隊の報告を行う。

除隊が決まると、受付のレナが求人報告書の貼り紙にリーミアの名前を記入する。

リーミアは彼等が立ち去る時、彼等に自分の分の奨励金を渡した。


「え…良いの貰っちゃって?」

「ええ…杖を買ってくれたし、それにマイリさん杖壊れたでしょ?そのお金に使って」

「あ…ありがとう…」


マイリは申し訳無さそうな表情をしながら礼を言う。

彼等が立ち去ると、リーミアはレナを見る。


「求人に名前を出して、新しいギルドに入れるまで、どの位掛かるのかしら?」

「そうね…早ければ翌日には決まるけど…。何ヶ月も待たされる場合もあるわね…」


それを聞いたリーミアが少し溜息を吐いた。

そんな彼等の出来事を傍らで聞いて居た男性の姿があった。彼はニヤ付いた顔でリーミアを見た。


「フフフ…何か面白そうな者が集会所に来たな…」


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