新規入隊(1)
その日……
宿舎の前に3人の若者が訪れた。彼等は初めて見るギルドに所属している者達が利用する建物を見て、唖然としながら見ていた。3人のうち、1人はまだ年端の行かぬ少女で、残りの2人のうち、1人は逞しい男性で、もう1人は少し年齢が低い少年だった。
「凄いな……ここの盟主はギルドに参加して、まだ半年も経って居ないのに、こんな宿舎を構えてしまったんだよ」
ルフィラとロディオは、圧巻した様な表情でいた。
「相当な実力者で資産もある人なのね……アルム、貴方もそう思うでしょ?」
「どうだろうね……。でも、私達の元リーダーが評価してた方だ。きっと凄い人だと思うよ」
アルムが、そう言いながら、彼は建物へと近付き門番を務める神官に挨拶をする。
「こちらのグループに参加したくて来ました」
「分かりました。少々お待ちください」
神官は中へと入って行く。その光景を見ていたルフィラはアルムに声を掛ける。
「今、門番に居た人。あれ…神官じゃない」
「え……?何で神官が門番なんかしているの?神殿でも無いのに……」
「分からないわ。何か特別な理由でもあるみたいね」
彼等が会話していると、建物の中から若い女性が現れる。
「入隊希望者は、貴女達なのね……」
「はい、そうです!」
3人は、少し緊張しながらその場に立った。
「ふうん……皆若いのね。光花に興味を持った経緯は何?」
いきなり、女性が唐突に質問して来て皆は驚いた。
「アルファリオが、こちらのグループを評価してました。ここに居る全員アルファリオと行動したくて、こちらのグループに参加しようとした次第です!」
「そう…でも、そうすると…仲間同士で意見の対立とか発生しない?ここの盟主は彼では無く別の方になるから…。彼はあくまで副盟主と言う立場で、こちらのグループに入隊したのよ」
「それは聞いております。ですから…彼では無く、盟主の指示に従い、その上でアルファリオとも一緒に行動しようと考えております!」
アルムは、女性の前で意見を述べた。
「なるほど、盟主にはしっかり忠誠を誓う覚悟は貴方達全員あるのね」
女性の言葉に彼一同、声を揃えて「あります」と、返事を行う。
「分かったわ。貴方達を歓迎します。どうぞ…私達の盟主と会って話をしてちょうだい」
そう言って、彼女は広間へと案内させる。広間を見て彼等は口を開けてながら驚き、周囲を見回した。
「これだけの建物を構える盟主って、どんな人なんだろうね……」
「きっと、威厳があって、凄い人よ……下手したら、私達全員振り分けられるかも……?」
そう言うと彼等は緊張し始めた。
「そちらの椅子に座って居てくださいね」
「あ、はい!」
広間を見ると、建物内には他に人が無く、離れた場所で勉強している少女が1人居るだけだった。
(あの女の子……勉強している見たいね、きっと……盟主に勉強させられる様に言われたのね……。意外に厳しい人なのかも知れないわ)
しばらく経っても盟主らしき人が現れず、不思議に思ったアルムが女性に声を掛けた。
「あのぉ……盟主と言う方は、どちらに居ますか?」
「え、そこに居るわよ?」
「へ……?」
そう言って、彼等は離れた場所で勉強している少女を見た。
「盟主、入隊希望者が待っているわよ」
「え、ああ……」
そう言われて、慌てた様子で羽ペンを持ったまま、向かい側の椅子へと来た少女に彼等は驚いた。
「あ、すみませんでした。え……と光花の盟主リーミアです。宜しくお願いします」
彼女は軽く一礼しながら挨拶をする。
「あ、はい……宜しくお願いします」
皆も同じ様に一礼しながら挨拶をした。
広間のテーブルを囲んで、彼等は顔を見合わせた。建物を構える程のグループだからと思って、緊張していた彼等は、盟主と呼ばれた相手が、ルフィラやロディオと、歳の差がそんなに離れていない人物で彼等全員驚いた。
「入隊を希望するのですね」
「はい、そうであります!」
アルムは威勢良く声高々に返事をする。
「威勢が良いですね。あなた達の名前と使用する武器道具と称号等を教えてくれますか?」
その言葉に皆は互いに顔を見合わせる。そして最初に自己紹介を始めたのはアルムだった。
「自分はアルムと言います!クラスは柔術で、前衛が得意です。現在の称号は白銀です!」
「私はルフィラ、クラスは剣術。前衛が得意です。現在の称号は銀です」
「僕は…ロディオと言います。クラスは攻撃魔法で、後衛が得意です。現在の称号は銅です」
彼等の話を聞いたリーミアは成る程…と、軽く頷いた。
「自己紹介ありがとうございます。改めまして、光花の盟主を努めるリーミアと申します。以後よろしくお願いします。入隊を希望にするに当たって、何か聞きたい事とかはありますか?」
その意見に対して、彼等は顔を見合わせる。
「光花のグループとは、どんなグループなのでしょうか?市場では狩を主体としているグループや、魔獣討伐、隣国との抗争等…様々な目的の為に結成したグループが数多くありますが、こちらのグループの結成理由をお聞かせください」
「今は、魔獣討伐が主ですね。皆さんはメンバー達と訓練をしながら、最低月に1度以上魔獣討伐に参加して頂きます。あと……基本建物内での飲食、入浴、宿泊は全て無償で提供しますが……毎月の経費として魔獣討伐1体分程の、銀貨10枚は支払って頂きます。これはグループ内のメンバー全員同じ条件なので、グループ入隊後には、これに従って頂きます。他は……現時点では、無いですが……城や神殿からの依頼がある場合、従って頂きます。……と、私からの説明は以上になりますが……何かお聞きしたい事とかありますか?」
勉強していた少女とは思えない説明に、彼等は意表を突かれた様子だった。思わず何か言いそびれてしまった中、ルフィラが軽く手を上げた。
「グループ内での階級や規律制度はどうなっていますか?」
「今のところは考えて居ませんね」
「何故ですか。普通のグループなら階級制度を設けさせる事で仲間達で階級上げを目指せて、常に向上心も沸かせるし、意欲を高めようと励みにもなると思います。何よりも互いにライバル意識も高まるし、グループ内に活気が湧くと感じますが……」
ルフィラの言葉を聞いていたリーミアは、目を閉じて頷きながら考えた。
「悪くは無い考えだと思います。けれど……ここのグループは結成したばかりで、他のグループと比べても規模は小さいく。何よりも張り合う程メンバーも多くはありません。その中で階級上げで、派閥争い見たいな事が起きると、チーム内が上手く行かなくなる恐れが発生するかも知れませんので。今は……規律やグループ内の階級は控えさせて頂きます。ですが……決して、そう言った制度を無視するつもりはないですよ。もちろん最低限のモラルは持って頂きます。現に私のグループにも問題児は居ます。彼にはハメを外さない様に常に注意させて居ます。勿論……例外は認めません。グループに入った以上。皆とは仲良くしてもらいます。例え貴方達がアルファリオさんの紹介であろうと、その条件は同じです」
自分達がアルファリオの紹介だと既に知っている事に彼等は驚いた。
「だからと言って、貴方達の意見を取り入れないと言う訳ではありませんよ。皆からの提案は常に聞き入れる姿勢であります。階級も将来的にグループメンバーが1つの団体と呼べる程に膨れ上がれば自然と、そう言う日が来るかも知れませんね。一応……そう言う事だと頭の片隅にだけでも入れて置いてください」
「わ……わかりました!」
声高らかに、ルフィラは返事をしてしまう。
「では……」
彼等の目の前でリーミアは席を立った。
「挨拶も終わったし、ちょっと貴方達の実力がどの程度か腕試しさせてもらいましょう。最近狩に出られなくて、ちょっと体が訛ってしまって居たのよ」
「は……はあ?」
「あ、あのォ……」
ロディオがリーミアに声を掛ける。
「何か……?」
「入隊審査とかは、無いのですか?」
「審査なら既に玄関で行ったと思いますけど……」
「へ……?」
彼等は互いに顔を見合わせる。玄関で女性がアレコレ問い出して居たのが、審査だったの?と……少し呆れてしまった。
リーミアは席を立ち、持ていた羽ペンを勉強していたテーブルに戻すと、「どうぞ此方へ」と、手を差し伸べる。
彼等を引き連れて行く時、リーミアは改めて皆を見る。
「まあ……こう見えて、私は光花のグループ内では、皆から清楚で淑やかなお嬢さんなんて、良く言われる程なのよね、だから……あまり硬くならなくても良いですよ」
「へえ……そうなんだァ」
アルムを含めた彼等全員は、新たに盟主と崇める人物に好感を感じていた。




