副盟主(4)
完全に勝敗が決した所で腕試しを終わらせる。
「ご苦労様でした。良い勝負でしたね」
リーミアと他の皆が練習場へと入って来た。
「いえ……自分も、もう少し腕を上げるべきと感じました」
ルファは少し汗を流しながら答える。
リーミアはナレフに回復魔法を掛ける。
「ナレフさん、少し不利な相手だったけど……どうでしたか?」
「酷いよ盟主、負けると思っていて戦わせたの?」
「戦法を見誤らなければ勝てたわよ」
「そうなの?」
そう言ってリーミアは木剣を手にした。
「ちょっと、お相手良いかしら?」
「え、盟主様が……ですか?」
「本気で掛かって来て良いわよ」
「分かりました!」
ルファは、相手を真剣に見て、構えを取り素早く動いた。
「タアッ!」
凄い勢いでリーミアに突進する。
パンッ!パンッ!
「ハッ……?」
一瞬の動きにルファは息を呑んだ。
たった2撃でリーミアはルファから棒を弾き飛ばして、木剣が相手の喉元を捕らえた。
「い……一瞬……」
あまりの動作の速さにシャリナは驚いていたが……普段の稽古の相手をしてる皆からすれば、ごく当たり前の事だった。
「相手を油断させれば、勝てたわよ」
ナレフはリーミアの戦い方を見て溜息を吐く。
「盟主様見たいな事が我々に出来る訳ないですよ……」
「え……そうかしら?」
「貴女と我々では次元が違いすぎますからね……」
彼の言葉に周囲は笑い声が響いた。
腕試しの後……リーミアはロティスと広間で話をしていた。
「こちらのギルドに来るまで、どの様なギルドに居ましたか?」
「まあ……幾つかのギルドグループを転々としましたね。中には100人以上のメンバーで構成される大きなグループに居た経歴もあります」
「へえ……凄いですね」
「ええ、グループ内に階級制度があり。それに応じた役職と言うのもありましたよ」
「私達とは全然違うのね」
「本当にそうですね。メンバーが弱いグループッて、活躍の場がないから、自然消滅する場合が多いんですよ。不協和音で信頼関係が築けず崩壊ってパターンが多いんですよね!」
彼の話を側で聞いていたマイリアとレネラは、不機嫌そうな表情しながらロティスを見ていた。
「そ……そうなんですか、ちなみに……貴方から見てウチのグループはどうですか?」
「まだ結成したばかりだから何とも言えませんけど……それにしても、随分古い宿舎を購入した物ですね。他に良い物件は無かったのですか?こう言うのは失礼ですが……ワシの知っているグループは、新築の宿舎で、下位の階級でも室内にリビング付きの室内でしたね。何よりも殿方の疲れを癒してくれる御婦人方が付き添ってくれたり、討伐で疲れて戻って来た人達を持て成すサービスがあったりしましたけどね」
「そうですか……」
リーミアには少し意味が分からなかったが、聞いていたレネラとマイリアはイライラしていた。
たまたま近くに居たケイレムは、凄く不機嫌な表情の彼女達を見て「どうしたの?」と、声を掛ける。
「あのジジイ、このグループに女性の接客業を要求して来ているのよ。信じられないわ!ウチの盟主が、そんな事受け入れる訳無いでしょう。全く変なムシが来たわね」
それを聞いたケイレムは、一緒にロティスをの話を聞いた。
「こんな小さなグループで寂れた宿舎じゃあ、神殿からの依頼が来るのなんて、数年に一回あるか……どうかでしょうね。まあ……ワシが、このグループを市場最強に育て上げても構いませんよ。その代わり、相応の料金が必要となりますけどね……」
「そうですか……分かりました」
「まあ、取り敢えずは、盟主専用の部屋に行き、そちらで事務処理の仕事をしましょう」
「ええ、そうですね。ところで……私は、常に実践経験のある方を優先にしていますの」
「ほお……結構な事ですな」
リーミアは魔法の袋から、何時も使っている魔法の杖を出した。購入した時は新品だったが、何度か狩場で使っていて、少し傷等が目立って来た。
「宜しければ、こちらの杖を一振りして頂けますか?」
ロティスは、リーミアが使っている杖を手にした。
「これは、また見事な魔法の杖ですな……はて、盟主殿の称号は……?」
「私は銀です。階級から言うと……貴方は白銀だから、私は1つ下になりますね。流石に宿舎内で魔法を使う訳にはいかないから、軽く振るだけで結構です」
「成る程……」
階級が下と聞いて、彼は満面の笑みを浮かべた。これなら……自分が、このグループの盟主になって、自分の思い通りに出来ると確信した。
「まあ、ワシは良く人から大魔導師なんて呼ばれる事があります。こんな魔法の杖を軽く振って、この古い宿舎が倒壊しても、責任は負いませんよ」
「その時は、その時です……また新しい宿舎を選びます」
「そうですか、では……行きますぞ!」
ロティスは、魔法の杖を振った。
しかし……何の反応も起きなかった。
「おや……?」
彼は、再度降るが、何も反応が起きない。
「この杖、壊れているのではないですか?」
「そんな事は無いですよ。昨日も魔獣討伐で使いました」
リーミアは魔法の杖を受け取って、軽く一振りする。
シュッ
ゴゴゴ……
宿舎が軽く揺れ始める。
「わわわ……」
近くで隠れていたケイレムが慌てながら広間へと逃げ出してきた。
「な……何の揺れなの?」
レネラとマイリアが怖がりながら、リーミアの側へと近付く。
「ごめんなさい、魔法の杖の反応を調べて見たのよ」
そう言いながらリーミアは改めてロティスを見ると、彼は唖然とした表情で彼女を見ていた。
「そ……そんな、ワシよりも階級が下なのに、魔力が上だと……」
ロティスは、過去色んな魔術師と会って、常に自分が一番上だと思い込んでいたが……初めて、自分よりも年齢も階級も下でありながら、実力が上と言う立場の人間に会って彼は絶句した。
「有り得ない……こんな事絶対に有り得ない!」
そう叫びながら、彼はキッとリーミアを睨みつけた。
「だ……大体、貴女は一体何なんだ!ワシをコケにさせるつもりなのか!こんな侮辱を受けたグループなんて初めてじゃ!」
「貴方の今までの発言と比べたら、私のした事は大した事では無いかと思いますが……そもそもご自身で大魔道士と呼ばれていると言われるなら、魔法の杖を振った所で、何の問題も無いかと思いますけど……」
「ぐぬぬ……」
「もし、このグループが気に入らないのであれば、脱退しても構いません。しかし……ここで頑張るとお考えであれば、貴方自身、現在の気持ちを切り替えて貰います。ただし……現時点では、当初の事務処理の仕事は認められませんが……その予定でも構いませんか?」
それを聞いたロティスは、その場で座ってしばらく目を閉じて考え込む。少し間を置いてから目を開けた彼はレネア、マイリア、ケイレムがいる前で発言する。
「申し訳無いけど、ここは自分が思っていたグループとは違うから、脱退させてもらう」
その言葉に、レネア、マイリアは嬉しくて思わず手を叩いて喜びそうになった。
当のリーミアは少し残念そうな表情をしていた。
「そう……分かりました。せっかく増えたメンバーが減るのはとても残念です……」
リーミアはマイリアから脱退の書類を受け取り、彼にその書類を書き込む様に命じる。
「せっかく入ってきて貰ったのに残念です。ご苦労様でした」
リーミアは、彼を見送る為に一緒に外に出た。彼は別れ際に一礼して、石畳の道を下って行く。
副盟主となる人材が再び現れるのを待たなければならなくなり、リーミアはフウ……と溜息を吐いた。




