来客者
宿舎を利用する様になってからのリーミアの魔獣討伐は、1週間の間に2〜3回程に減ってしまった。その間に階級の称号も上がらず銀のままだった。
彼女の仕事は盟主専用の部屋で、書類書きと、提出された書類に目を通す事になっていた。そんな彼女にとって、唯一の息抜きは稽古となった。
その稽古による犠牲者……では無く、相手はリーミアの激しい攻撃に毎回打ちのめされるのだった。酷い時は、練習用の木剣が折れてしまう程の練習があった。
エムランがシャリナに医務室は「お前専属の部署」と、からかった経緯があったが……正にそれが現実と化した。
稽古する度に、医務室に怪我人が運ばれて来た。
激しい時は、稽古の最中に腕や足の骨が折れても、リーミアがその場で回復魔法で治療して、練習続行させる事もある程だった。
そんな激しい練習のせいかは不明であるが……ある時、魔獣討伐に参加したメンバーが、際立って動きが凄かった事に参加していた他のギルドメンバー達が皆驚いていた。
「あの剣士は何処の所属メンバーだ?」
「最近結成された光花と言うグループらしいですね」
羊皮紙で、剣士のグループを見て、一緒に居た人が言う。
「素晴らしい戦い方だ……余程訓練されているようだな……」
そんな彼等に対して、光花のメンバー達は「魔獣討伐の方が稽古なんかよりも全然気が楽だ……」と、言いたかった。
ある日の事だった。
「すみません盟主様……」
「何か?」
「木剣の追加発注の数が多過ぎませんか?」
「直ぐに木剣が折れてしまうのよ」
「普通の人なら、そう簡単には折れませんよ。そもそも稽古の度に1本折っている見たいでは無いですか?もう少しお手柔らかにしないと……」
「これでも手加減している方ですけどね……」
そんなリーミアに対して、彼女が部屋から出る時、階段に設置してある石が一瞬赤く光る事に気付いた彼等は、盟主が来る合図を知ってメンバー達が逃げる場合があった。
そんな日々が続く、ある日の事だった……
マイリアが盟主部屋をノックして入って来た。
「失礼します盟主様、お客様が来ております」
「お客……?」
机で書類の作成をしてるリーミアは不思議そうに首を傾げるが、マイリアの後ろに現れた人物が誰なのか気付くと、思わず席を立った。
「セフィーさん、戻られたのですね!」
「やあ、しばらく振りだね」
リーミアは、部屋の中央にあるソファーに彼を座らせて、小さなテーブルを挟んで、自分は向かい側のソファーに腰を下ろす。
「ラトム・ギルド集会所に行ったら、君が宿舎を購入したと聞いて、場所を聞いて来たんだ……つい三ヶ月前まで、小さなギルドのチームに入隊するのを選んでた少女が、何時の間にか、こんな立派な宿舎を構えて盟主になるなんて……世の中、何がどう転ぶのか分からないな……」
セフィーの言葉にマイリアが不快感を示し、彼に対して発言する。
「失礼ですが……雑談でのお話であるなら、後日改めて日を選んでお越し頂けますか?」
「あ、良いのよ。彼の場合は……色々私に助言して下さるし、彼の協力があったからこそ、私も今こうしていられるのよ」
「そうでありましたか、失礼しました」
マイリアはリーミアに対して軽く一礼する。
「悪いね、ちょっと挨拶するつもりが、少し話が逸れてしまって……」
「貴方がここに来たのには理由があっての事でしょ?」
「ああ……祠の結界を貼る道中でね、ちょっと……ある人物と遭遇したんだよ」
「へえ、どんな人物何ですか?」
そう返事をしたリーミアは、セフィーが携えている剣が、出掛ける時の剣と違う事に気付く。
「貴方が持っている剣……それ、国内の剣とは少し形が異なりますね」
「ああ……気付いたか、実は……ある人物がくれたんだよ」
「そうなんですか、その人物とは、どんな人なんですか?」
リーミアの問いにセフィーは少し間を置いてから話した。
「そいつは、炎の聖魔剣を所有していたんだ!」
セフィーの言葉にリーミアは衝撃を受けた。
「炎の聖魔剣……?」
「そいつも、あんたと同じ額に紋様があった。俺は彼を説得して、仲間になる様に申し出たけど、今は別の予定があるらしく、こっちへは来れないと言われた。だが……将来的には俺達の味方をしてくれると言っていたよ。ちなみに今のあんたの事を伝えて置いた。大変興味を抱いていたよ」
「そう……分かったわ。色々有難う。その人物が早くこちらに来てくれると、私も仲間が増えて心強いわ」
リーミアはまだ見ぬ、別の聖魔剣の所有者に対して少しばかり胸躍らせた。
「それと……旅に出る前に約束した件はどうする?」
「え……と、何でしたっけ?」
リーミアは、色々あってうっかりド忘れしていた。
「はあ……俺を仲間にするって事だよ」
「ああ、そうでしたね。えっと……魔物狩りとかはしたく無いのでしたよね?」
「そうだ。出来れば外交とかの職務の方が俺の性には合うかな……」
その言葉にリーミアはある事を思い付いた。
「では……一つお願い出来ますか?」
「どんな事だ?」
「私に合う魔法剣を見付けて来て欲しいのです」
「なるほどね……別に構わないさ。探す前に入隊とかの手続きが必要なんだろう?一回集会所に戻ってから、改めて以来の話しをしようか?」
「その必要はありません」
マイリアがセフィーに声を掛ける。
「手続きの書類は、こちらに用意してあります。今作成して頂ければ、明日以降私が集会所に届けます」
それを聞いたセフィーは、マイリアを見て「便利な世の中になったもんだ」と、一言呟く。
盟主専用部屋で入隊手続きを済ませたセフィーは改めて光花のメンバーに加わった。彼はリーミアの依頼で魔法剣を探す為に宿舎を出て、表の路地に待機させていた馬の近くへと向かう。その時、リーミアが追い掛けて来た。
「取り敢えず、前払い金として受け取ってください」
彼女は金貨の入った袋を彼に差し出す。
「おお、何時も悪いね。まあ……出来るだけ早く見付けて来るよ。じゃあな!」
そう言って彼は馬を走らせて、飛び去って行った。




