光の洗礼(8)
儀式が終えた後、大神官とリーミア、それに同行していた皆が広間に戻って来た。それに参列するかの様に、彼女に興味を持った神官達が集まり、既に広間に収まらない状態になっていた。
「リーミア殿、今後、しばらくの間は、7つの光の魔法の習得に励んで欲しい。そして貴女の付き添い人を紹介しましょう。サリサこちらへ」
「はい」
大神官に呼ばれて、美しく若い女神官が彼等の前に現れた。
品やかな身体に凛とした顔立ち、額には光の紋様が刻まれている。赤毛で長い髪を垂らしている。サリサと呼ばれた女神官は、他の神官とは少し違い、甲冑を身に纏っていた。彼女の腰には細身の剣が鞘に収められている。首には虹色のペンダントが掲げられていた。
「紹介しよう、神官剣士のサリサだ」
「宜しくお願いします」
彼女は一同を前にして、深く礼をする。
「綺麗なお姉さんだなぁ…」
ティオロが呟くと「ムッ!」と、リーミアは彼を睨んだ。
その後方でセフィーはレンティに向かって話す。
「神官剣士とは?」
「一般的には、神官の大半の職業は回復系が主だが、中には武芸に励んでいる者もいる。彼女はそう言った類の職業に特化した者だろう。護衛役を務める程だから実力は相当な者だろう」
「彼女、虹色のペンダントを掲げているな」
セフィーの言葉にアーレスが話し掛ける。
「ああ、王国騎士団もそうだが、彼等は王位継承の競技には参加しない意味で、虹色のペンダントを掲げているのだ。王国騎士団や神官剣士が参加したら、彼等だけでの競技になりかねないからね。競技に参加させない意味で、あの特殊なペンダントがあるのだよ。それにしてもサリサが護衛役か…まあ、彼女なら大丈夫だろう、安心して任せても良いかと思うよ」
「へえ…何だ知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとね…」
セフィーとアーレスの会話を聞いていた彼女がチラッとアーレスと視線を合わせて、クスッと微笑んだ。
アーレスはサリサが自分の方を見ていると気付くと、わざと視線を逸らした。
神殿に集まっていた一同は、その日の用事も終わり神殿の外へと出た。既に外は夕闇が広がって、薄暗くなっていた。
「所で…リーミアが光の紋様を授かり、王女様の転生者と言うのが確定された後って、光の洗礼はどうなるの?」
ティオロはレンティに何気ない質問をする。
「確定されても、王位に即位しない限り、光の洗礼は続くらしいよ」
「それって、つまり…何処の馬の骨かも分からない人を王位に授ける事なの?」
「出掛ける前にも話したが…正式な光の洗礼で紋様を授かるのは、正統な王家の者と大神官しかいない。洗礼だけ受けるなら、神殿は今後も続けるが。リーミアちゃんが王位に即位しない限り、転生者かも知れないと言う意味での洗礼も続行する予定だよ」
「でも…仮に、たまたま洗礼しに来た子が、光の紋様を授かちゃったらどうするの?」
「光の洗礼は、単に王位継承だけのものではありません。純粋で清らかな心の持ち主を見抜き、相応しい人を選ぶ儀式の場でもあります」
サリサがティオロに話し掛けて来た。
「自分が王女の転生者かも知れない…等と人から言われて光の洗礼に訪れる様な輩に、王女様の様な心を持つ者等おりません。光の洗礼とは、神聖な儀式の場でもあり、不純な心や、不心得が一片でもある者には、どんなに頑張ろうとも光の紋様を授かることは不可能です」
それを聞いたティオロは、リーミアが神殿に来たのもセルティスの剣を手にするのが目的であって、王女に即位する目的では無かったのを思い出す。
(純粋で清らかね…)チラッとティオロはリーミアを見ると、彼女は何かを悟ったかの様にジロッとティオロを睨み付けつる。
下手な口出しをすると、何をされるのか分からないから、少し離れた位置に移動する。
「今日は皆様お帰りください。私も明日に王女様が利用している宿に挨拶しに行きます」
「あ…あのぉ…」
リーミアが少し戸惑いながらサリサに声を掛ける。
「何か…?」
「王女様と言う呼び方、止めて頂けますか?」
「何故でしょうか?」
「まだ、正式に王位に即位した訳ではないので、その呼び方は少し不自然かと…」
「かしこまりました。では…リーミア様と、呼ばせて頂きます」
(様も必要ないけど…)
リーミアは敢えて、それは言わずに居た。彼女に付き添う面々は、事が一段落すると夕闇と共に神殿を後にして解散する事にした。




