疑惑
––––翌々日、早朝
リーミアは疲れで、丸一日眠ってしまった為、次の日になってようやく疲労も回復して、部屋から出て来た。
寝起きは、長い髪がボサボサだった為、髪を整え直して、神官達と一緒に食堂で食事を行う。宿泊施設のシェフが腕を振るって用意した、スペシャルコース料理がもてなされて、3人は朝から美味しい料理を堪能した。
朝食を終えるとリーミア達は神殿に向かう為の準備を行う。たった2泊3日だけの利用期間だけだったが、ルナは嬉しそうに見送りをしてくれた。
「また、何時でも来てね。今度は、もっと美味しい料理を用意しておくからね」
そう言ってルナはリーミアの手をギュッと握って、別れの挨拶をする。
「あ……はい、分かりました」
そう返事をしたリーミアは、ふと……宿泊施設の玄関に目を向けると受付をしていたラトスが申し訳なさそうな表情で、こちらを見ている事に気付く。
それを傍にしてリーミアは軽く手を振りながらラミウ宿泊施設を後にした。
––––同時刻……
エルテンシア国、王都……純白城と神殿の間には中間部があり、その少し外れの北部には山岳地帯が広がっていた。その山岳部の頂に、純白の天馬の側に立つ女性の姿が有った。ブロンド色の長い髪を風に靡かせて、銀色に輝く髪飾りを煌めかせ、色白の肌に、凛とした顔立ちをした美しき女性だった。
女性は上空を飛来していた鷲を、手甲を取り付けた腕に乗せる。彼女は、鷲の足首に羊皮紙を取付させると、餌を上げて鷲を飛び立たせた。
鷲が居なくなると……彼女の隣に居た天馬は白い翼を畳み休む。女性は愛馬の顔を優しく撫でる。しばらくすると、彼女が立つ側をピューッと疾風の様な風を巻き起こしながら、漆黒の様な姿をした翼竜が現れた。
翼竜には逞しそうな大柄の男性が乗っていた。彼は天馬が居る位置よりも、少し離れた位置に翼竜を休ませる。翼竜から降りて来た男性は、女性よりも背丈が大きく黒髪で、アゴにヒゲを生やし、眉が太く、銀色の甲冑に身を包んだ男性だった。
「よう、女神官長リーラ!わざわざ……こんな場所まで俺を呼び込むとは、相当大事な用なんだろうな?」
「ルセディ将軍、貴方にしか相談出来る人がいないから、こんな場所まで呼び出したのよ」
リーラと言う女性は、ルセディと言う名の男性を見て話す。
「ほお……俺を選んで呼んでくれるとは嬉しいね」
「ええ……神殿はともかく、王宮の人間となると、信頼できる人物が限られてしまうからね。だから敢えて、貴方に、場所を指定させてもらって、呼んで見たのよ」
「で……相談したい事とは、例の先日の転生王女の件だね?」
「そうよ、この件に付いて……どうしても私は気掛かりな事があるのよ」
リーラは真剣な眼差しでルセディを見つめて話す。
「気掛かりとは……?それは一体……?」
「王宮の高官や大臣は、元リムア姫が転生した少女を王位に就かせる気は無いのでは?と……言う憶測よ」
「ほお、それは初耳だ!と……言うよりも、何故そう言う憶測に至ったのかな?」
「現在のギルドのシステムを考えると……。王宮の財政が成り立たなくなるからよ」
「なるほどね……」
ルセディは腕を組みながら頷く。
「ギルド参加者が魔物の亡骸を受付に持って帰るのも、王宮にある錬金術が、魔物の亡骸を研磨剤、魔法粉、鉄、銀……等に変える技術があるからよ。それを売買して王宮は資金源を稼いでいるわ。更に……王宮の人間達は魔物を無限に発生させる闇の商人と太いパイプで繋がっている人間がいる……と言う噂よ」
「ふうむ……確かに、そんな噂を聞いた事があるけど……。でも、それが真実とも考えられないけど……」
「私も最初は、噂だと思ったけど……実は、最近噂では無いと感じたのよ。そもそも、何故……魔物狩は王国騎士団では無く、ギルド参加者にさせるのか……?王国騎士団の役割がギルド参加者への監視だけ……と言う、不規則な行動のみ……等と言う不自然な行動を紐解いて行くと、ある1つの疑惑が浮上して来るのよね……」
「それは一体……?」
「長年我が国で行われて来た王位継承権に競技大会が排除される……と言う噂よ」
それを聞いたルセディは衝撃を受けた。毎年決まった日に行われる競技大会。その開催や内容が排除されるのは、これまで一度も無かった。
「ま……まさか!」
「あくまで噂の範囲内でしか無いけどね……」
「ふむむ……」
ルセディはリーラの話を聞き不安そうな表情を浮かべる。
「ただ……既にリムア姫が復活しているのを知っている人間が居て、彼女が王位に即位すると、困る人間が、王宮や神殿内部に居ると言う可能性は否定出来ないわ」
「と……なると、そう想定して行動した方が良い、と……其方は思うのか?」
「いいえ、違うわ」
リーラはルセディの発言に対して首を横に振る。
「貴方には、王宮に戻って確かめて欲しい事があるのよ。それは……」
リーラはルセディに対して話す。それを聞いた彼は蒼白した表情を浮かべる。
「お……お主、本気でそれを言っているのか?もし、見つかれば……状況次第では我々は処刑されるかもしれないぞ!」
「それを承知で貴方にお願いしているのよ。別に嫌なら構わないわ。それなら私1人で行動するわよ。あの……神秘の少女に未来を託したいからね。何よりも……今の国家の力では、隣国が攻めてこられたら、この国が崩壊してしまうでしょう。この国を護る為にも、内なる野心の芽を早めに摘み取る必要があるからね……。処刑される覚悟で貴方に相談したのよ、でも……期待外れだった見たいね。もう少し話の判る方だと思っていたのに……」
彼女はそう言いながら、天馬の銀色のたてがみを撫でながら鞍に跨る。彼女は別れ際に横目でルセディをチラッと見つめた。




