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魔族少女の人生譚 旧  作者: 幻鏡月破
第一章 四天王となるまで
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第二話 白種のお話

リメイク済み

 朝だ。


 晴れた朝で、陽の光に当たる草木は鮮やかに輝き、窓から差し込む暖かな光は気持ち良く目覚めさせてくれる。

 はずなのだが――。


「むむむ……。――ぁ、今日、学校かぁ」


 今日が週の始まりだということを思い出し、気持ちの良い朝だということよりも面倒な一週間が始まるという憂鬱感が頭を占めた。


 だが通わせてもらっている以上学校に遅れるわけにはいかない。

 一つ大きな欠伸をしてベッドから降り、クローゼットを開ける。制服を取り出し着替えて、脱いだ寝衣は畳んでベッドの上へ。


「ふぁー……。今日の朝ごはん何かな、またパンかなぁ……」


 そんなことを思いながら部屋を出て洗面等を済ませ、リビングへと向かった。


 扉を開くとまず感じたのは、辺りを包み込むような香り。

 温かく湿っており、上品な甘さを感じさせるその芳醇な香りは――、


「……この匂い、白種(はくしゅ)だぁ!」


 炊き立ての白種の香りであった。


 白種。それは人間で言うところの米というもの。

 昔魔境でも米を栽培していたらしいのだが、魔境の土壌に合わずうまく育てられなかったらしい。そこで魔境で栽培できるよう品種改良をしていった結果、白種ができたそうだ。

 あまり違いはないらしいが、いつか米を食べてみたいものだ。


 しかし白種は麦に比べ栽培には手間がかかり、栽培する農家も少ないため少々値段が高い。朝ごはんから白種ということはお父さんの仕事がうまくいったのだろう。


 机の上には花瓶が飾ってあり、ここ最近の花は紫色のユメキキョウ。季節にもあっていていい感じだ。部屋に一つのアクセントがあるだけでも華やかに見える。


 ささっと椅子に座り朝ごはんを楽しみに待っていると、向かいの方の椅子に座っていたお父さんが、


「なんか嬉しそうだな、ウィディナ」


「そりゃあねぇ。お父さん上手くいったんでしょ?」


「ああ、この前の出張がな。ちょっと俺も白種が食べたかったんで買ってきたんだ」


 お父さんは魔物狩りをしており、狩った魔物を素材として売っている。

 魔物というのは魔力を扱うことができる動植物や、魔力の歪みからできる怪物のことだ。

 いつか戦ってみたいと思うのは、単にお年頃というやつだろうか。


 どうやらご飯が作り終わったようで、お母さんが料理を持ってきてくれた。

 今日の朝ごはんは至ってシンプル。白種、夏野菜のコンソメスープ、そして目玉焼きだ。目玉焼きは味が濃くないから本来の白種そのままの味が楽しめる。


「いただきまーす」


 コンソメスープの具を箸で掬い、口に入れる。角切りしてある夏野菜が口の中で楽しい食感を与えてくれる。

 箸を濡らしたならば次は白種だ。茶碗を手に取り一口。粘り気が強過ぎず、しかし硬い訳ではなく。噛めば噛むほど仄かな甘みが口の中を支配する。

 ついでにもう一口食べてから、メインの目玉焼きをいただくとしよう。黄身を端でつつくと、とろりと膜を破って中身が出てくる。醤油をかけ、それを白身と絡ませ口へと運べば、まろやかな黄身と程よい醤油の塩味。そして淡白な白身が口の中でプリっと踊る。

 その目玉焼きを白種と一緒に食べたらどうだ。もう美味しい。単純に白種と卵の相性が良いのだ。

 たったこれだけで、朝を幸福感で満たしてくれる。やはり白種は素晴らしいものだ。


「んぁ~、美味しい! 久しぶりに食べるとおいしいなぁ、白種」


「フィーは本当に白種好きよね。そうやってうれしそうに食べると何か羨ましくなっちゃうわ」


 ……まさか朝から白種が食べられるとは思ってなかったからなぁ。そりゃぁ嬉しくもなるでしょー。


 わいわい味わって食べていたら、思っていたよりも時間が経っていたようだ。もう時計の針が家を出る時間を指している。


「やばっ、もう行かなきゃ」


 もっと味わう時間が欲しかったと、なんならずっと続いてくれればと思いながらも、急いで残りを口へと掻き込み、ごちそうさまと席を立つ。


「あ、フィー、お弁当。忘れてるわよ」


「わわっ、ありがと、お母さん」


 お母さんから弁当を受け取り、気をつけて行ってこいとのお父さんに頷く。


 靴を履いて荷物を持ち、


「じゃ、いってきまぁす」


 そして扉を開いた。


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