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魔族少女の人生譚  作者: 幻鏡月破
第一章 四天王となるまで
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第一話 魔王のお話

リメイク済み

 魔王城。


 それは魔族を統べる王、魔王の城。

 魔族の領地、通称『魔境』の中心に聳え立つその城は、魔族にとっての夢、そして希望の象徴であった。


 かつてその地は陽の光が差すことは無く、草木は枯れ、あったとしてもちっぽけな雑草、枯れ木程度。


 湧き出る水は濁り、まるで生物が生きていられるようなものではない。

 見渡す限り大地は乾き、大岩がごろついている。


 魔境は不毛の大陸であった。



 ある日、人間は魔族を恐れ始めた。

 人間よりも力を持つ魔族は、我々に害をなす存在であると。


 人間界は世界議会にて魔族の追放を決定し、不毛の大陸へと魔族を追いやった。


 魔族は抵抗しなかった。

 人間に危害を加えなければ危険な存在でないことを解ってくれるだろうと。


 しかし人間はその意志を変えず、魔族を追放した後関係を絶った。


 魔族は絶望した。身勝手な人間と、抵抗しなかった愚かな己達に。そして同時に誓った。いつか必ず、あの人間共を同じ目に合わせてやると。


 そこで立ち上がったのが、後の初代魔王となる黒翼種の魔人であった。彼には類稀なるカリスマ性と、圧倒的な力があった。

 彼を中心に魔族は協力し魔境の開拓を進め、生物が生きられる程までに環境を整えた。


 だが魔族は目的を忘れはしない。

 勿論魔境の開拓と共に戦の準備をしていたのだ。


 魔族からの声もあり、黒翼種の魔人は自らを『魔王』と名乗り、兵をあげ、人間界へと攻め込んだ。


 彼らは圧倒的な力を持っていた。次々と村を潰し、街を破壊し、遂には四大国と呼ばれる国の一つを滅ぼしたのだ。


 しかしそれ以上は攻め込むことは無く、人間界に恐怖を植え付けることだけをして魔境へと帰った。


 それは滅ぼした国を元に、国としての体制を作るためであった。

 魔境の中心に魔王城が建てられ、その周りに央都が作られた。



 四天王。


 魔境が国として成り立った時、魔王直属の部隊、そして魔王軍のトップとして任命されたその四人は、魔王には劣るとも魔境では最も強い部隊であった。


 一人はその刃で死を(もたら)し、一人はその手で全てを壊し、一人はその(うた)で魔法の雨を降らし、一人はその力で人々を蹂躙した。


 四天王は各戦場にて戦う指揮官となり、数々の勝利をその手中に収めていく。

 指揮をとりながらも自身も戦いに身を投じるその姿に、多くの魔族は憧れと希望を抱くこととなった。

 

 魔族は徐々に人間を圧していく。

 そして魔王の手が再度大国の一つにかかる――。



 その時だった。


 人間は魔族に対抗すべく、四人の人間を集めた。

 神に選定されし勇敢たる者達――。


 “勇者”と呼ばれる、力を持った者達だった。


 彼らたった四人に、戦況を変えられた。

 彼らは少数部隊でありながらも圧倒的力を持っていたが為に、点として面を突破されたのだ。


 剣士、武闘家、魔導師、そして賢者。個々で圧倒的な力を持ち、それは四天王と並ぶとまでも言われた。


 その中でも抜きん出て強かったのが、剣士だった。奇妙で、しかし強い剣術を使って剣を振るい、力を見せつける彼には、誰も敵わなかった。



 遂に勇者と四天王が対峙する。


 しかしどれだけ優秀で力のある勇者でも、彼らよりも昔から戦場に出ている四天王には経験の差より敵わなかった。

 四天王は勇者部隊を壊滅させる。


 だが、剣士は立ち上がる。

 斃れた仲間を傍らに、剣士は立ち上がる。


 無論四天王は殺しにかかった。

 たった一人。なんて事ないと、そう思った。


 思った時、いつの間にか、眼前に地があった。


 そう、剣士は殺しは出来ぬとも、瞬く間に戦闘不能までに追い込んだのだ。



 そして勇者は魔王へ剣を向ける。


 今にも自分を殺さんとする剣を前に、魔王は問うた。


「何故、我々に剣を向ける。何故、魔族の血を求める」


 無論、「国を滅ぼして多くの人を殺したから」などという言葉を求めた訳ではない。

 魔王は勇者に「何故人間は魔族を追放したのか」。その意味を孕ませ問うたのだ。


 だが、言葉は返ってこなかった。

 勇者としての使命と、仲間を失ったことにより、最早勇者は魔王を殺すことしか頭にない。殺す対象が何を言おうが、聞く気はなかったのだ。


 そして二人の影が動く――。




 勝負はすぐ着いた。

 地に伏すは片方。


 魔王が強過ぎたのだ。




 勇者が敗けたことを受け、人間軍は撤退を始めた。

 それに伴い、魔族も人間界への侵攻を止めた。


 それ以降、魔王は人間界への侵攻を行うことをしなかった。

 魔王は人間の愚かさを実感し、あんな奴らの為に犠牲を払うわけにはいかないと、そう思ったのだ。


 だが人間は数年毎に魔境へ侵攻し、勇者を送り続ける。何年も、何年も――。


 その全ての勇者を葬ってきた魔王は、尊敬の意を表して『魔帝』と呼ばれた。


 そして魔境が国として安定し、盛ってき始めたその頃に、彼は不治の病でこの世を去った。

 彼は死ぬ間際に魔族へ言葉を残した。


「私がこの世から去っても、どうか魔境を守ってほしい。私がこの国の末を見届けられないのは無念だが、次の魔族に託そうと思う。

 魔族の頭として戦うことができ、そして皆から信頼がある一人を、次の魔王に任命する。そして今の四天王が引退したならば次に力のある者を四天王とする。

 この魔境は魔族の領地だ。今後永遠に守ってほしい」


                         ――魔境書紀 第一章要約




 少女は本を閉じる。

 魔境書紀と書かれた本を机に置き、そしてベッドに横たわった。


「初代魔王、カッコいいなぁ……!

 私、魔王とまではいかなくとも、四天王になれないかなぁ……」


 白髪の少女はそう呟いた。


 横を向いて布団に潜り込み、目を閉じる。

 自分が選ばれるような奇跡なんて、そんなものは起きないだろうなと、そう思いながら少女は眠りについた。

【筆者からのお願い】


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この3つを行ってくれると、筆者の励みになります!

何卒よろしくお願いいたします。

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