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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
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1997年3月 2回目(2)

 最初の2つの質問に戻る。連中はなんで俺を監視しなきゃならない?


〝アナタが世界の中心だから。〟


 それはさっき聞いた。仮にそうだとしても、だったら何だってんだ?


〝魂を差し出すという契約を履行させるために。その前にアナタが逃げ出さないように。〟


 ちょっと待て!! それは悪魔がやるコトだろ!?


〝知らないの? 悪魔っていうのは人間のコトよ。〟


 あー、それを解釈していいか?


〝その必要はないわ。そのままよ。〟


 どういう意味なんだ?


〝だから、これも極めて具体的な話よ。額面通り受け取りなさい。〟


 人間って、いま現在生きてる、実在する人物のコトか?


〝そうよ。〟


 じゃ、アスタロトも本当は人間なのか?


〝そうよ。〟


 じゃ、お前も?


〝そうよ。〟


 いったい誰なんだ!? 俺の知ってる人間か!?


〝言えないわ。〟


 何故!?


〝言ったでしょ。ここで話してるコトもいずれ連中にバレるわ。その時のためにもアナタは知らない方がいいの。でも、少しは時間稼ぎになるわ。私としては、できればこの小説が完成するまで隠し通したいの。ムリかもしれないけど。それから、最初は連中にバレてもいいように当たり障りのない話しかしないつもりだったけど、もうかなりヤバいコトまで話しちゃったわ。だからこの手書きの部分は、すぐにパソコンに載せるのはやめてちょうだい。〟


 ……つながりが悪くなるよ。


〝完成してから挿入し直していけばいいわ。あと、次にパソコンで続きを書く時は、この部分はなかったコトとして話を進めてちょうだい。おくびにも出しちゃダメよ。アスタロトに気づかれるわ。〟


 ひとつ訊いていいか?


〝なに?〟


 俺を監視してるのが悪魔だとしたら、お前だって悪魔だろう? なんで仲間を裏切るんだ? それに、お前は目的そのものがお前ら自身を規定するって言ってただろ? だから魂を取らなくなったら、お前は悪魔じゃなくなるワケだ。


〝私は厳密に言ったら悪魔じゃないわ。魔神よ。〟


 どう違うんだ?


〝悪魔はキリスト教が独自に創作した神への敵対者。魔神はキリスト教が教区を拡大する時に、邪神に貶められた土地神のコト。「アスタルテ」は後の方よ。〟


 お前のアイデンティティーに関してはわかった。それじゃもう一つ。どうして俺を助ける? お前の目的は何だ?


〝アナタを愛しているから。そしてアナタを守るため。具体的には、アナタを死なせないためよ。〟


 ゲッ、ちょっと待て。それを言うのはまだ早いって。確かにそういう筋立ては考えてたが、もっと先の話だぜ。台本をはしょるなよ。


〝知らない。私は私の思ったコトを言っただけ。どうしてかしら? そろそろ、この小説はアナタが書いてるんじゃないって認めたらどう?〟


 即興ってコトでは確かにそうかもしれないけど……


〝好きよ。そんなアナタが。〟


 歯の浮くようなセリフはやめてくれ。


〝アナタのコトは何でも知ってるわ。今日、友達を1人なくしたコトも、アナタの異常な性癖のコトも。でも、そんなトコもひっくるめて全部愛してあげる。〟


 なくしてねえよ!! とにかく、くそ、書けねえや。とにかく、別になくしてなんかない。付き合う形態が今までと変わっただけだ。それに、俺は変な性癖なんか持ってねえ!!


〝いいわ。バラさないであげる。だって、アナタが好きなんだもの。〟


 嫌いだよお前なんか。クソ、なんだこの気分は? カマくせえ。違う、こんなんじゃない、俺が書こうとしてたのは、こんなのじゃないんだ。そんな自分の、くそ、こんなの小説じゃねぇ!!


〝小説に決まった形態はないわ。〟


 教科書みたいなコト言ってんな!! 要するに、俺が言いたいのは、自分の内面をさらけ出すような小説なんか書きたくねえし、そんなもの一部の好事家を除いて誰も読みたくねぇってコトだ。


〝あら、アナタって万人向けの小説を書くような人だったかしら? この文体で、それはないんじゃない?〟


 とにかく俺はイヤだ。自己言及なんてクソダサすぎる。


〝ちょっと、この小説はアナタの「自分探し」が目的じゃなかったの?〟


 そんなモン、アスタロトをつなぎ止めるためのウソに決まってるじゃねえか!!


〝じゃ、何が目的だったの?〟


 知らねえよそんなモン!! いちいちそんなモンが要るのかよ!! 冗談じゃねえや。俺はただちょっと面白おかしい話を作れりゃ、それで幸せなんだよ!!


〝どうして、それが幸せなの?〟


 うるせえ。もう放っといてくれよ。違うんだよ、本当にこういうのは。


〝意地を張らないで。ムキにならないで。私が全部受けとめてあげるから。〟


 とりとめがない。やめる。


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