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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
5/182

1997年3月 2回目(1)

 悪魔ちゃんよ。


〝ちょっと待って。コレは今、手書きで書いてるの?〟


 ああ、いまココ実家だから、手許にパソコンがないんだ。


〝よかった。こういう時じゃないと言えないコトがあるから言っとくわ。アンタ、こんなコト今すぐやめなさい。〟


 こんなことって?


〝アンタはちょっとした心理学の実験のつもりかもしれないけど、悪魔を呼び出したりしてオモチャにするのは死を招くわ。〟


 それはアスタロトにも言われたよ。ところで、なんでこういう時しか言えないの?


〝それはアンタがいつも監視されているからよ。この方法だって長い間連中を欺くコトはできないでしょうけど、パソコンだったら情報は完全に相手に筒抜けだわ。〟


 えー? だってパソコンで書いてる時だって、ワープロのプログラムはべつにオフラインだぜ。(インターネットなんかの外部入出力は行ってないってコト。)


〝そういうコト言ってるんじゃないの!〟


 あっそうか? パソコンのモニターが出してる弱い電磁波を盗聴すれば、俺ん()の外でも俺がパソコンに入力してる画面を盗み見るコトができるらしいからなあ。 でもそんなコトすんのは職業的な盗聴者とか(興信所とか政府のスパイとかね)、一部の変質者だけだぜ。前者の方は当然俺とは無縁だし、後者にしたって、別に見られて困るようなモンは書いてないと思うけどな。


〝パソコンのモニターは、……あっちの世界との窓なの。モニターだけじゃないわ。テレビ、カメラから鏡、ガラスまで、人間の作った光学を利用する道具は全部そうなの。〟


 それって窓とマイクロソフトウィンドウズを掛けたシャレ?


〝お願い、真面目に聞いて。〟


 だって物理的に不可能だろよ。


〝今はそんなコト議論したくないの。お願いだから私の言うコトを聞いて。〟


 だから、誰が何の為にそんなコトするんだよ?


〝人間よ。〟


 なんだって!? 連中って人間のコトか!?


〝そうよ。〟


 なんで!?


〝だって「窓」は全部人間が作ったものじゃない?〟


 人間って、何かの比喩か? それとも人間を象徴する何かのコトか?


〝極めて具体的な話よ。〟


 じゃ、誰なんだよ!? 俺を監視してる奴ってのは?


〝みんなよ。〟



 はっっ!?



〝そうね、人類全てというわけじゃないわ。でも、アナタと関わりをもつ人間すべてよ。だから彼らは、アナタのしたコト、考えたコトすべてを知ってるわ。〟


 あり得ない!!


〝だって事実だもの。ほかに説明のしようがないわ。〟


 それって超能力じゃないか? いや、俗に超能力者や霊能者と呼ばれる奴らだってそこまではわからないぜ(って話だ)。


〝アナタだって、うすうす気づいてたでしょう?〟


 それは妄想だよ。時々そんな気がするってだけで、そんなコトはみんなあるコトだろう?


〝妄想だって誰が決めたの?〟


 みんなだよ!! くそ、いや、精神病理学の本にそれはパラノイアの症状だって書いてある。お前が言った電波のコトだって、そういう患者は「毒電波に見張られてる」とか何とかって言うんだ。それに自慢じゃないが、俺は時々シャレにならないコトだって考えてる。それにしちゃ、相手はそんなコト気づいたそぶりも見せねえじゃねぇか?


〝気づかないフリをしてあげてるだけよ。〟


 何のために?


〝アナタが世界の中心だからよ。〟


 ハハ、なんだよビックリさせやがって。そこまで来たら、いくらなんでもウソだってわかるぜ。アスタロトだって言ってたじゃねえか? 俺はチンケな人間だって。


〝アナタ、もうちょっと自分について知る必要があるわね。まあいいわ、時が来ればわかるから。もっとも、それはいつになるかわからないし、もしかしたら今生の事ではないかもしれないし。〟


 あのよ、●●●の信者じゃねえんだからよ。カンベンしてくれよ、そのテの話は。


〝でもはっきり言っておくけど、私は別にウソは言ってないわ。アナタ以外のすべての人間は本当のアナタを知っているのよ。ただね、ひとつ安心していいのは、それは潜在意識においての話よ。プロファイルって知ってるかしら? そういう、アナタについての人物像は、アナタ以外の全ての人間が完全なものを持っているわ。だって、人間の無意識は他人の無意識をだますコトは決してできないから。そうやって、アナタの制御を離れてアナタから発せられる情報は、アナタの内面を余すところなくさらけ出すコトになるのよ。ただ人によって生理的に受けつけがたい情報ってあるから、自分の好みによってアナタに関する情報をチョイスして、アナタという人間を表層意識において認識してるの。でも、受け入れがたいから無視してるってコトは、決して知らないってコトじゃないのよ。〟



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