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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
42/182

2001年7月(5)

 そうなんだ。だったら聞きたかったこと全部聞かせてもらおうか。今までをまとめると、レッドとの出会いはお前が仕組んだものじゃない。でも、付き合ってから起こった気色悪い偶然の数々はお前が裏で糸を引いてたってことでOK?


“私が糸を引いたのもあるし、アンタの単なる被害妄想もある。”


じゃあ俺が最初に東京行った時、離人症みたいになったのは?


“離人症はアンタが勝手になったのよ。レッドは私に植え付けられた「執着」のせいで、普段の彼女じゃ考えられないくらい積極的にアンタにアプローチした。ただし、私が関与したのはそこまでよ。アンタは一方的に彼女に押しまくられて、考える間もなく流されて気が付いたら彼女とのリアル交際が成立してたもんだから「俺は普通の状態じゃなかったんだ」とか都合良く考えたってだけ。でも状況に流されやすいのはアンタの元々の性格で私のせいじゃないわ。”


ぐぅっ……レッドに冗談で「悪魔」って言ったらブチ切れたのは?


“彼女は幼いころから正義感が強く裏表のないまっすぐな性格よ。だから相手を騙し小狡く振る舞う「悪魔」は自分から最も縁遠いものと思ってきた。そんな彼女だから、悪魔に例えられて怒るのはむしろ当然のことでしょ。”


あーそうだったのか。


“アンタ一体彼女の何を見てきたのよ。”


でもそんなに悪魔を毛嫌いしてるってことはさー、あいつにはお前に操られてるって自覚はないわけ?


“操ってなんかないわ。私は彼女と「執着」を共有してるだけ。ただ、そのせいで彼女の行動に影響が出てるのは確かよ。でも彼女は自分の行動の責任を誰かに転嫁するなんて思いも及ばない性格だし、そういう意味じゃ私の存在を彼女が認識していることはありえないわ。”


それさー、レッドの了解なしに影響を及ぼしてるって時点で「操ってる」状況なんじゃないの?客観的に考えて。


“影響を与えた結果どんな風に行動するのかは彼女次第よ。こっちの思い通りに動かせるわけじゃないんだから「操ってる」とは言えないでしょ。”


そうかなー詭弁くさいなー。じゃあ、レッドの電話に長尾を出させようとした作戦が3回連続で失敗したのは? あれもレッドが自発的に回避した?


“んなワケあるか!ナメた真似しやがって。私がレッドと長尾に干渉して、がっつり妨害してやったに決まってるだろ!”


えっ、ちょっと待って。長尾? 長尾も操れるの、じゃなかった影響を及ぼせるの?


“そうだけど。”


わからんな。どうやってそんなことが……レッドには「執着」の共有を通じて影響を及ぼしてると言ったな。だったら長尾とも何かを共有してるわけ?


“彼女はアンタの「鏡面体」よ。男女逆転した形でアンタ自身によく似ている。”


同じクズ同士似てるってか。


“それを利用して、アンタを観測する基準点になってもらってる。彼女がアンタに絡むことでアンタが何を考えてるのかがわかるの。それも表層意識から無意識の領域まで。”


何かを共有してるってわけじゃないんだな。


“彼女の中に私と呼応する部分が全くないもの。だから共有自体が不可能なの。彼女にはただ基準点の役割を与えて「陣」の一端を担ってもらってる。”


また変なことを言い出したぞ。「陣」?「陣」って何だ?


“アンタを逃さないように、各々役割を与えた関係者で囲い込んだ人間関係の檻よ。”


怖っ! その「陣」には他に誰が係わってんの?


“アンタの身の回りにいる女性ほぼ全員かしら。”


いや……なんで女だけ?


“私の属性が女性だから。共有するにしろ役割を与えるにしろ、同性の方が働きかけやすいの。”


じゃあエロチャットで知り合った女たちも?


“全員じゃないわ。アンタとバンドを組もうとしたカリナって子だけ。彼女の役割は「疑似餌」。バカなアンタが本格的にヤバイ女の方に行かないよう惹きつけてもらってるの。でも疑似餌だからアンタとくっ付く心配もない。彼女から見たらアンタはモブキャラでしかないから。”


もしかして「客と自由恋愛する店」で仲良くなった嬢も……?


“いや、アンタが彼女と知り合ったのはアスタルテと私がアンタを見失ってた時期でしょ。だから出会いは私が仕組んだものじゃない。ただ、アンタが私に再接触してからは速やかに「巫女」の役割を彼女に与えたけどね。彼女が最近アンタに言ったことの中にはアスタルテと私の託宣が混じってるわよ。私達がアンタに直接言いたいことを時々彼女に代弁してもらってるの。”


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