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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
40/182

2001年7月(3)

 だからって……


“つまりあなたは私の単なる名付け親じゃなく、私自身を造った創造主なの。子が親を慕うように、私もあなたを求めるの、どこまでも。”


 あっそ、好きにしろ。それよりレッドのことだ。あいつもお前と同じように俺に執着してるっていうんだな。


“そうよ。”


 でもな、それにしちゃ相反するような行動が多いんだよ最近。ささいな言葉でブチ切れたり血が出るまで腕を噛んできたり。こないだ俺が東京行った時も、引っ越したっていうからあいつん家までついて行ったら外に閉め出されたぜ? 最寄りの駅から家に行く途中さー、あいつは自転車(チャリ)押して俺は横歩いてて、そん時は冗談言いながら笑いあって雰囲気良かったんだよ。で、家っつーかアパートが見えてきたら「あそこの2階だよー」って言いながらチャリこいで先に行って、笑いながら階段上って部屋に入って内側から鍵かけたの。まあ冗談っぽい感じだったから最初は俺もそんなに深刻には考えずにレッドが入ってった部屋の前まで行ってピンポン鳴らしたの。でも出て来ない。鍵も開かない。しばらく待ってまたピンポン。でも反応なし。この辺からだんだん不安になってきたけど、しばらく間を置いてピンポン鳴らすのを4~5回やった。でも鍵は閉まったまま。意味が全くわからなかったけど、もうあきらめちゃってひとまず駅前に戻った。他に行く場所がどこにもなかったから困ったけど、前にレッドと一緒に行った深夜営業のゲーセンがあるのを思い出してそこに入った。「今晩どーしよっかなー」とか思いながら1時間くらいボーっとゲームやってたらいつの間にかレッドが横に来てて、「バカだからココにいると思った」とか言いながらなんかベソかいてんの。結局その後グズグズ泣くあいつをつれて二人でアパートに帰ったんだけどさ、この一連の流れ、俺はまるっっっっきり意味わかんないんだけど、アイツ一体何がしたかったのか教えてくれる?マジで。


“彼女もとまどっているのね。”


 いやそんなアナタ、一言でさらっと……


“あなたに執着する理由がわからないのよ。彼女自身の男性の好みは、きっとあなたとは別のタイプだと思うし。”


 そういやそんなこと言ってたな。文化系より体育会系、かなり年上の男っぽいタイプが好みだって。


“だから不安になる。あなたの何に惹かれたのかがわからなくて。その不安が、あなたを、そして彼女自身を試すような行為に走らせるの。でも無理もないわ。だって彼女の執着は自分の内から生じたものではなく私が与えたものだから。”


 えー、それってお前がレッドを洗脳したってことじゃない? ヒドイことするなあ。


“相性ってものがあるから「洗脳」とは違うわね。確かに私が外から働きかけた結果だけど、彼女の中にも呼応する部分がないと上手くいかないわ。それが相性。”


 呼応する部分って何よ?


“彼女自身が、執着する対象を切実に探していたのよ。ようするに、何でもいいから何かに執着したかったの。” 


 「何でもいいから」か……えらい言われようだなオイ。


“「何でも」とは言っても、極端に嫌悪を感じるような相手は無理だと思うからそこは安心して。”


 できるかぁ! じゃあ、まあいいわそれは。しかしレッドに執着させて、お前自身は最終的にどうしたいわけ?


“彼女は、あなたの魂を確実に手に入れるための手がかりになるはずだった。”


 確実も何も、そもそも今の所有権はアスタルテにあるって消えた方の(・・・・・)悪魔ちゃんが言ってたぞ。


“アスタロトとの回路が切れてから、私たちもあなたを見失ったの。だから所有権があっても回収不能な状態だった。でも、レッドと私は共有した執着を介してつながっていたから、彼女を目印にすればいつでもあなたを補足することはできた。”


 なるほど、あいつは俺の居場所を知らせるGPS発信器みたいなもんか。


“でもまさか、自分からこうして再接触してくるとは思わなかったけどね。そんなバカだと最初からわかってたら発信器は不要だったんだけど。”


 バカで悪かったな。じゃあレッドはもうお払い箱なんだから、俺への執着も消えるんじゃね?


“そんなわけにはいかないわよ。人間の心だもの。もう彼女は自発的にあなたに執着しているから、彼女が望まない限りそのままよ。”


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