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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
31/182

2000年11月(2)

 レッドとは月に1回、東京と九州をお互いに行き来している。俺が今月東京に行ったら来月はレッドが九州に来る、といった具合だ。俺が東京に行った時はレッドが予約したシティホテルで、レッドが九州に来た時は俺の下宿で週末を過ごすことにしている。なのでリアルで一緒に過ごすのは月に2~3日しかないわけだが、そこでもポツポツ喧嘩することが出てきた。きっかけはやっぱり会話の中のなんということはない一言だ。


 月1でしか会えないというのはわかるんだが、会ってすぐのレッドはよく喋る。だいたい電話で話してる時の1.5倍ぐらいのスピードでワーッとまくしたてる。あと、俺の髪とか服の襟や袖を直そうとしてよくいじってくる。先週東京に行った時もそんな状態だったんで、俺も微笑ましいなと思って「テンション高いなー(笑)」って言ったんだよ。そしたらスッと真顔に戻って急に喋んなくなった。晩飯食ってる間に話しかけても「ああ」とか「うん」しか言わない。ホテルにチェックインした後もそんな状態だったんで「どうしたの?」「何かあったの?」って話しかけても、頑なに「別に」としか言わない。寝る間際までそんな感じだったんで俺もすっかり参っちまって、

「ゴメン!!俺鈍感だから本当にわかんないんだ。きっと何か傷つけること言ったと思うんで教えてください!」

って頭下げたら「もういいよ……」とか言葉濁してたけど、それでも謝り倒したら「テンシュン高いって言われたから……」って白状した。この時はそれが原因とは思ってもなかったんで俺も「?」「?」ってなってどういうことなのか問い返したら「あたしだけが馬鹿みたいに浮かれてて、でもそっちは冷めてたからウザかったんでしょ?」って。……いや曲解が過ぎる!! そんなこと全く思ってないって、言葉を尽くしてイチから説明して一応納得させたけど、この時は翌日もぎこちなさを引きずったままだったわ。


 その前はもっとひどかった。レッドが九州に来た時、夜俺の下宿でくつろいでた時だったんだけど、たぶん俺の何かの言葉に反応したんだと思う(この時は何が原因とか後でどうでもよくなった)。急にレッドが自分のリュックに荷物を詰め込み始めて、「何やってるの?」って聞いたら「帰る」って言ったんで慌てて荷造りする手を抑えたら振りほどいて、まだ荷物を全部入れてないリュックを持って立ち上がった。そのままドアまで行こうとするからバックハグの形で引き留めて「帰るって、飛行機の便もうないよ」「落ち着いて」「今出て行っても泊まるとことかもうないから!」って言いながら力を込めた。するとレッドも振りほどこうとしたんだけど、力の入れ方がね、もうガチなの。男女の痴話喧嘩とかのレベル超えた渾身の力で振りほどこうとするのよ。でも夜中に女を独りで放り出すわけにはいかないから俺も力を入れて抑え込みにかかったら、「ン~!」「ンン~~ッ!!!」ってもがいてたけど急に俺の腕をガブー!!って嚙みつきやがった。めっちゃ痛かったけど力ゆるめたら本当に外に出て行きかねないからそのまま膠着状態でフリーズしてたら畳の上にポタっと何かが落ちた。血だった。レッドも違和感を感じたのか口を離して「血だ……」って言うと、そのまま俺を手洗い場まで急いで連れていって傷口を水で洗った。そのまま俺に動かないように言って、自分は部屋からティッシュ箱を取ってきて洗った傷口に何枚も当てた。意外と歯が深く食い込んでたのか血は10分ぐらいじわじわ出続けた。それをティッシュで押さえながらグズ、グズってベソかいてんの。やがって血が止まって絆創膏を貼ると(止まってみると傷口自体は小さかった)「ごめんなさい……」って言ってシュンとなった。「いやいいよ。俺もゴメン」って言うと「うん……」って、その後はずっと借りてきた猫みたいだったけど、いやいやいや、それまでの行動がちょっと常軌を逸っしてない!?


 悪魔ちゃんよ、消える直前に「運命の人」が俺に現れるって言ってたけどレッドがそうなの?! それにしては性格がエキセントリックすぎない? それとも「あえて」あの性格なの? だとしたらすっごい自分を「試されてる」感があるんだけど。このままだと何か刑事事件すら起きかねんぞ。


 て、自分独りで考えててもどうにも埒があかないわ。これはもう、悪魔ちゃんの意図がどうだったのかを何とかして知る以外に方法がない。ストーリーとして「悪魔ちゃん復活編」に舵を切るしかなさそうだ。出来るかどうかわからんけど。


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