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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
28/182

2000年9月(2)

 それからレッドに何らかの反応が出るのを待ったが、その間はピカードに丸投げとなって進展が見えなくなる。となると、また色々考えなくていいことを考え始める。そもそも別れたいなら本人に直接言えばいいものを、他人を介してまで不確実な方法を採って一体何がしたいのか。自分では合理的に考えていると思っているが実は何か理屈のつかないおかしなことをしようとしているんじゃないか。だいたい小説に書いたことが現実に影響を与えるなんて、そんなことを本気で恐れている時点ですでに病み始めているのでは?等々と考えて悶々としだした頃、連絡用に使っていたツーショットチャット(2人しか入れないチャットルーム)でレッドの様子に変化が現れた。


“おつかれー”

とタイプしたが返信がない。十何秒かくらい経った後、

“・・・”

と・を3つ返信してきた。

“どうしたの?”

すると、また何秒か沈黙を挟んで返信してきた。

“・・・バンドやってるの?”

“バンドって?”

と返信した後こちらも沈黙。シラを切る感じで不信感を演出する。

“あちこちでバンドメンバー募集の声かけてるって聞いたんだけど”

“ああーそれ俺じゃないよ。前に俺を誘った奴だと思う”

“知らないよ。そもそもバンドやってる事も初耳なんだけど”

“メンバー集まらなくて実質的に今休止状態だからね”

“メンバー集まったらやるの?”

“まあ、趣味の範囲内なら”

“ふーん。ところでこれ誰?”

と言って俺がカリナと映ってる写真の画像をチャットに貼り付けた。

“え、バンドのボーカルやる予定の子だけどなんでこの写真持ってるの?”

“ピカードも誘われてそん時にもらったってよ”

“マジか。あいつこの写真他の人にも見せてんのか”

と、実在しない第三者に向かって怒ってみせる。

“ちょっと電話で話せる?”

“いいけど”


で、レッドに電話をかけた。

「もしもし。」

『しかしお前この写真、満面の笑みだな。私にもこんな笑顔見せたことないのに。』

「いや最初にスタジオ入りした時でテンション上がってたんだよ。」

『顔もくっ付け合って。』

「それは自分でカメラ持って撮ったから仕方ないよ。でもこの写真そんなに出回ってるの?」

『さあ、誘った人みんなにバラ撒いてんじゃないの。』

「そんなの俺許した覚えないよ。すぐに止めさせるから」

『いやそれ以前に、大学院での勉強もしないで一体何してんの?って話だろ』

「ああ、それは……うん。」

『しかもこんなガキに鼻の下伸ばして……』

カリナは見た目幼いから高校生ぐらいに思ってるのかもしれない。

「いやそれはないよ。何とも思ってないから。」

『もっとしっかりしろって話だよ! 情けない。』


 この後しばらくお説教が続いたが、意外にもレッドはそれで引き下がった。

 明らかに年下のカリナに対して嫉妬している態度は見せず、というか浮気でないことは十分承知した上で、そのように見える隙を見せた俺に対して怒っているという感じだった。

 まあ実際にカリナとは何でもないわけだし俺の自作自演もあるから、これ以上話がエスカレートしても全バレの危険性もあるので、この件からはこの辺りで撤退するというのは俺にとっても既定事項だった。この件の役割は、「なんかコイツ信用できない……」みたいな俺に対する不信感の芽を植え付けることだったが、それについては成功したかどうかわからない。

 ちなみに、この時以降ピカードとはなんとなく疎遠になっている。ことの顛末をレッドから聞いたら、自分のせいで俺らの関係がこじれたと思うだろうから無理もないが……。実際は、俺の仕掛けた茶番にただ単に巻き込まれただけなんだけど。


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