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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
23/182

2000年8月(7)

 そこからの展開だけどさ、俺としては特に進展を望んではいなかったんだよね。もっとエロチャットのナンパとかでまだ遊んでたかったし。それにレッドと電話で話す時の俺はテレホンセックスモードでの人格なわけだけど、それって常にクドきモードで相手をホメつつ気遣ったりしてジェントルに見せつつ、本性は全く逆で「女を食い物にする」、が目的だからね。要はホストとか結婚詐欺師が身にまとうペルソナなわけですよ。でもこれ、完璧に演じようとするとつじつま合わせでかっなり大変なの。だからボロが出ないためには、どー考えても遠距離かつヴァーチャルな関係で現状維持ってのが最適戦略だったの。ところが敵はそれを見越したように次の展開を仕掛けてきたんだわ。


『ずっと遠距離は無理。』

「ああ、まあそうだよね。でも俺が大学院出るまでは九州から出られないしさ……」

『そうじゃなくて、ずっと会わないままだと、会える人の方に行っちゃうかもって話。』

「会える人?」

『前に言ったお寺のお坊さん。』


そういや、レッドのリアル友達の紹介で実質的なお見合いをした相手がそこそこ大きい寺の跡継ぎで、「経済的な苦労は絶対させないから」ってだいぶ前向きに交際を申し込まれてるって話をこないだしてたな。寺の坊主っていうパワーワードで思い出したわ。


「でもお寺の奥さんはなー……って言ってなかった?」

『そうだよ。一年中お寺の行事があるし檀家さんとのお付き合いとかも大変だから私につとまるとも思えないしね。それに今はゴロウがいるし……、でもずっと会えないままだったら私絶えきれないかも。そうなったら会えるお坊さんの方に行っちゃうかも……』


 なるほどそう来たか。ぬるま湯の現状維持は不可ってことだな。しかしそうなると、まだまだ遊びたい俺としては撤退するしかないな。まあ、前にも言ったけど、俺の意識としてはまだレッドと本当に付き合っているつもりはないしな。あくまで「(てい)」だ。だったら今別れても実質的なダメージはなかろうよ。が、そうなるとほぼ全敗のエロチャットナンパの日々に戻るわけか。……本当にそれでいいの? 虚しくない?、ってやかましいわ! だからレッドを一応キープしつつもエロチャットで気楽に遊びたくて現状維持を望んでるんだろうがよ。 いやだから!それを今ハッキリ拒絶されたんだよ。 あー、ようはレッドを取るかエロチャットをとるかっていう2択なんだな。……ふむ、考えるまでもない。エロチャットだ。 しかし、


もし今レッドの方に一歩進んで行ったらどうなるんだろ?


いやいやいやいや、ないないない。正気になれ。遠距離云々言う前に、まだ会ったこともない女だぞ? 今んとこ一番リアルに想像できるヴィジュアルは男女みたいな逞しい感じだぞ? そんなのと恋愛したら結婚だってありうるんだぞ? 中学生が夢見る結婚じゃないぞ。お前も相手も適齢期なんだから、生活感あふれる現実感MAXの結婚だぞ。そこまでの覚悟できてるのか?


そんなもんできてるわけないだろ。というか、今まで冗談めかして語ってきたけど、レッドとのマジ恋愛なんて悲惨な破局しか想像できんわ。主に俺の不道徳な行動のせいで。でもなあ。ほら、よくあるじゃん。崖に立ってる時に「これ1歩踏み出したらどうなるんだろ?」とか、刃物持ってる時に「今手首切ったらどうなるんだろ」とかさ。あれって、よく言われるみたいな「自殺願望の現れ」ではないよな。純粋に、「どうなるんだろ」って好奇心が膨れ上がって自分でもあらがえなくなるんだよな。もちろん死ぬようなことをしちまったら俺は今ココにいないワケだけど、そこまで行かないぐらいのことは、人生の中で何回かやったことあるな俺。うん。俺はそういうの、やる男だぜ。


「会いに行くよ」

『え!?』

「東京に会いに行く」

『ちょっと待ってちょっと待って。ずっと会えないなんて無理だから、私の方が九州に行くって今言おうとしてたんだよ?』

「うん。でもまず俺が会いに行くよ。ミサコのことを不安にさせちゃったしね」

『……本当?』

「会ってくれる?」

『本当に本当だな? よーし、いいよ!』

「明日行く」

『それは急すぎ(笑) じゃあね、今週の土曜にこっちで花火大会があるから一緒に行こ!』

「OK」

『あ、でも私その日仕事あるんだ。仕事の後で間に合ったらでいい?』

「いいよ」


というわけで、レッドに会いに東京に行くことになった。どーゆーことになるか全く想像がつかん。だがそこがいい。たぶん酷いことになるだろうが責任は持たん。


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