1999年10月(2)
“でも相手と最初に電話した時とか会えた時に必ずホメるのはいいぞ。ただヤリたいために必死なだけだろうけど、それでもいいから続けろよ。続けてりゃきっといいことがあるぞ。”
嘘つけ! もういいよ!やるよこんな魂なんか。エロザルの魂がそんなに欲しいんかよ。……てめ、何爆笑してんだよバーカ!
“あーおかしい。でも、今までネットで知り合った女性の中に運命の人がいるから。その人と付き合う時の練習と思って、今はせいぜい恥をかいておきなさい。”
運命の人って誰だ? 今メールやり取りしてる女の中で、付き合ってるっぽい感じまでいってるのは由衣ぐらいか? 人妻だけど。
“いや、そいつじゃねえから。ていうか、そいつただのビッチだから。”
1回テレホンセックスした絶倫看護師のヒロ?
“そいつにすっぽかされたんだろうがよ(笑)”
こないだリアルで会った大学生のカリナか? まだ何もしてないけど。
“あー、その子な。違うけど……まあ、気の毒な身の上だからやさしくしてやれ。”
なんだよ、もったいぶりやがって。誰だか教えろよ。
“その時が来たらわかるよ。”
本当かよ。そういう思わせぶりなセリフ前にも聞いたけど、現に今この有り様じゃん。
“今度は大丈夫。”
……。ところで修論は本当に大丈夫なん? さっきは俺「書けそう」って言ったけど、それは去年の箸にも棒にもかからない状態だった時と比べての話で、今んとこ修論指導じゃ突っ込まれまくりで終わりが見える気配ないんだけど。
“それも大丈夫。今メールでやり取りしてるドイツの教授を大事にしなさい。論文の「オチ」に至るアイデアは彼の助言が突破口になるわ。”
英語の試験は? こっちはマジでヤバイんだけど。
“今、ゼミで英語の勉強会してるでしょう? それを最後まで完走すれば、たぶん私が何とかしてあげられる。どの問題が出るとか、当日の体調とか、運がらみの条件に介入することで。”
なんだか心許ないな。
“回路の切断でアスタロトからの魔力供給が途絶えたからね。これで精一杯よ。”
ふーん。ところでさ、自分が消えるような犠牲を払ってまでアスタロトとの回路を切断したのは、そのまま続けてたら俺が死んでたから?
“まあね。”
そうか。ありがとな。
“どういたしまして。”