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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
12/182

1997年12月(2)

 まあ、聞け。これ以上の望みを叶えるには、俺の魂の器が小さすぎるってわけだろ。でも、この先俺の子の魂に見合うぐらい器が大きくなれば俺の魂でも充分だろ。要するに、俺の将来に投資しろってことだよ。人間ってのは、成長するもんだからな。


〝お前らしい、しみったれた条件だ。よかろう。しかし、我々の力で成長した分は勘定に含まぬぞ。それにお前のことだ、いざその時になればなにかとゴネるだろう。我々としては、お前の魂の価値を客観的に量る指標を要求する。〟


 俺は生まれてこのかた、誰かを幸せにしたことがない。もし誰かに幸福を与え、そいつが心から「幸せだ」といえば、それはマジでスゲエことじゃないか?


〝笑わせるな。〟


 でも今の俺よか、なんぼかマシになってることは確かだろ。それに今の俺じゃ、とうていムリそうだから言ってんだぜ。そっちにとっちゃ、あながち悪い条件じゃなかろ?


〝ずいぶん損な取引に思えるが、いいだろう、どうせ貴様には他人を幸福にできる甲斐性なぞないからな。〟


 へへ、結婚しないって手もあるしな。結婚したって子供作んなきゃいいんだ。


〝無論、我々は貴様が子供を作るように仕向けるさ。それに、もうどこかに居るかもしれんぞ。〟


 いねえだろ。……おい!子供ってのは今から作る子供のことだぜ?


〝これから作る契約にそれを盛り込めばよかろう。では、お前の望みを言え。〟


 そうさな、まず今のまんまじゃ博士号どころか修士号とるのすらおぼつかねぇ。アスタロトはすべての学問と知識を司るときく。俺に超自然的な力をもって、大いなる知の力を授けよ。それに、勉強がうまくいっても、いまはハッキリ言って経済的に苦しい。我に富を与えよ。多くは望まん。生活できるだけでいい。


〝よろしい。では、それと引き替えに貴様の魂の成長分をいただく。なお、これより先に生まれる貴様の子供の魂を担保とする。担保の回収条件は、子供が生まれるまでに心からの平和を他人に与えることができぬ場合だ。それから、貴様の望みを実現するために、貴様の精神と肉体の半分を徴発する。〟


 なんだと?


〝貴様の微々たる能力を元手にそれだけのことをしなきゃならんのだ。我々が直接介入しなくては、とうてい無理だ。我々が介入したとしても実際可能かどうか……〟


 魔力は依り代になる者の技量に依存する、か。さっきゲーテとかの名前出してたけど、俺があんな作品書けないのはそのせいだって言いたいんだろ?


〝実際、私にもなんでお前のような小物と契約せねばならんのかわからん。〟


 じゃあなんで契約すんだよ!?


〝天の(ことわり)だ。〟


 神の意思ってこと?


〝それをも超越するものがあるのだ。貴様には想像もつかんメタ・レベルの話だ。〟


 フン、なんにしても「泣き」が入っちゃオシマイだぜ。言っとくけど、俺が望んだ現世利益が実現できない時は、そっちの契約違反だからな。約束は全部反故(ほご)にしてもらうぞ。


〝わかった、わかった。正直、お前と話すのに嫌気がさしてきた。〟


 ところで、契約には血が要るんだろ。指でも切ろか?


〝要らん。あれは単なるマーキングだ。それとは別に、互いにわかる形で認証はいただく。〟


 ハイ用は済んだ。さようなら。


 おーい、悪魔ちゃん。おーい。


〝……〟


 何か言いたいことはアリマスカ?


〝別に。〟


 怒ってんの? おーい。 居ないよ。まあいいか。


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