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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
理論編
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幽霊の存在可能性の証明(2)

 時を戻そう。ここからは、科学的な立場から「肉体から独立した精神など存在しない」ということを前提に議論する。もしそうだったとしても、幽霊は存在しうるっていうのをオレはこれから主張したい。


 前に、肉体が滅んだ後でも存在する精神を、スマホが壊れたのに動き続けるアプリに例えたよね。これを否定派は「科学的に非常識」って批判するんだけど、本当にありえないのかな? だってアプリでしょ?壊れてない他の端末にインストールすれば動き続けるじゃん。でもそう言うと「人間の精神はアプリのように、他の端末(人体)に移し替えることはできない。1つの人体に固有の精神が宿っているのだから肉体が滅べば精神も運命を共にするのだ」って即座に反論するだろうね。うん。そう、そこなのよ。「他の端末(人体)に移し替えることはできない」ってとこ。逆に言うとこの部分が否定論の核だと思うわけ。そこが崩れれば、幽霊が世の中に存在する可能性も出てくる。


 その場合の幽霊っていうのは、複数の人体の間を渡り歩く精神体みたいな感じじゃないかな。ただその場合も「肉体から独立した精神など存在しない」わけだから、一時的にでも人体を離れることなく、他人の体に移ることができなくちゃならない。どうすればいいかっていうと、何らかの形で人体同士が接触した時に、チャンスを逃さず移動すればいい。でもそれって、もう細菌とかウイルスみたいな病原体だよね。いや、細菌は違うか。ごく短時間とか環境条件とかは限られるけど、細菌は人体を離れても生きられる可能性があるから。そういう意味じゃウイルスの方が近いかも。


 ところでウイルスと細菌の違いって知ってる? 大腸菌とかの細菌ってのは、たった1コの細胞で出来てんの。ここで細胞の仕組みを一通り説明しとくと、まず、細胞壁やら細胞膜やらっていうので覆われた袋状の入れ物の中にドロドロの液体的なものが詰まってて、その中に遺伝子が浮かんでる。袋にはべん毛っていう尻尾みたいな器官が付いてて、これを動かすことで液体中を自由に動き回ることができる。動き回りながら、自分が居心地いい場所(人間の体内とか食べ物の中とか)を見つけたら、周りの栄養素を使いながら遺伝子のコピーを作って2つに分裂する。よーするに、子供を作って繁殖していくんだね。


 一方、インフルエンザとかコロナなんかのウィルスは、殻みたいな入れ物に遺伝子が入ってる。それだけ。一見細菌と似た構造のように思うけど全然違う。そもそも、殻の中には細菌のようなドロドロが入ってない。ドロドロは細菌が細胞分裂するためのエネルギーを、取り込んだ栄養素から作り出す時に必要。逆に言うと、ウイルスはドロドロを持ってないから自分で分裂増殖することができない。べん毛もないから自分で動き回ることもできない。その代わり構造は単純だから、何らかの方法で遺伝子(とオマケの殻)さえ複製できれば繁殖完了っていうお手軽さはある。それに対して、細菌はドロドロ(に含まれるリポゾームやプラスミド)とかべん毛、動植物の細胞の場合はさらにミトコンドリアやゴルジ体といった複雑な諸々を全部複製しないと繁殖したことにならないから結構大変。


 では、ウイルスはどうやって繁殖するのかと言うと、他人の「体」を借りるの。つまり動植物の細胞や細菌に入りこんで、そこの遺伝子に成り代わる。遺伝子は細胞全体をコントロールする指令塔なんだから、それに成り代われれば細胞そのものを乗っ取ったのと同じ。後は乗っ取った細胞内の器官に命令を出して、自分をコピーするエネルギーを出させるってワケ。逆に言うと、だから自前の細胞膜やドロドロが必要ないってわけ。


 細胞を乗っ取る手段だけど、自分の殻の中から糸みたいな遺伝子を出して、相手の遺伝子が入ってる細胞核に侵入させるってやり方を使う。遺伝子の実体は、いわば細胞内のいろんな器官を動かすための命令の指示書みたいなモノだから、乗っ取られた核はウィルスに都合のいい指令を出すようになってしまう。これで乗っ取りは完了。


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