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悪魔ちゃん  作者: 神保 知己夫
本編
10/182

1997年6月(2)

〝あのね、もう一度よく思い出してね。あなたを除いたすべての人間が、アナタの魂を奪うためにアナタを監視しているの。つまりアナタを殺そうとしているのよ。もし彼らがアナタのシャドウだとしたら、自分で自分の命を奪うなんてありえない話だわ。〟


 それは俺の自殺願望の顕れでは?


〝苦しまぎれに適当な推論に飛びつかないで。言っとくけど彼らがアナタを殺す時は、自殺なんて方法は絶対にとらないわ。歴然とした他殺によってアナタは死ぬのよ。〟


 お前は俺を混乱させる。それもこれも、お前の言葉を絶対真理として受け入れざるをえない、この作品のフォーマット自体が間違ってるのかもしれないな。


〝何を言ってもムダかもしれないわね、今は。どうしたの? 何故そんなに打ちひしがれてるの?〟


 それだ。物語を語る上で演者としての仮面は本来必要なモノなのに、すぐにそれをはぎ取ろうとする。俺は素にならざるを得ないから、どうにも身動きがとれなくなる。


〝期待してるのよ、アナタ自身がそうなることを。さっきの茶番めいた謎解きも、否定されることは前もってわかっていたハズよ。アナタが真剣に問いに対する答えを求めているからこそ、私はこういう存在であり続けるのよ。〟


 それで?


〝この小説をやめなさい。前から言ってるコトよ。〟


 なぜだ。


〝殺されずに済むわ。彼らはアナタが真の答えを見つけるコトを絶対に許さない。〟


 断る。


〝どうして!?〟


 わからん。しかし断る。……そう俺が思うからだ。


〝思考停止ね。アナタ、今とても無残だわ。そんな醜態をさらすくらいなら、私を呼び出さなきゃいいのに!!〟


 なぜ怒る?


〝情けないからよ。アナタ、自分が死刑台の一歩手前にいる事に気づかないの!?〟


 俺は死ぬのか?


〝このままじゃね。〟


 別に、特に命乞いをする気にはならんが、なんとなくお前の気持ちは伝わる気がする。お前のいう事をきいてもいい気がしてきたよ。ただ、この作品を中断する事はダメだ。なんとか他の方法はないのか?


〝スローダウンね。急ぎすぎなのよ。ゆっくりと、一緒に考えていきましょう。アスタロトや彼らのコトは心配しなくていいわ。アナタが私から離れようとさえしなければ、私はアナタを守ってあげられる。〟


 つまり怠けろと?


〝そうね。その間に、小説を書くこと、仕事をすること、学問をすること、それを何故やらなきゃいけないのかを考えて。それはひょっとしたら、やらなくてもいいコトなのかもしれないのよ。〟


 お前の言うことにはいろいろ矛盾がある気がするが、不思議と今は反論する気にならないな。たぶんバイオリズムが異常に下がってるからだろう。最初から今日は負け戦だったんだろうな。しかし悪くない気分だ。


〝そう?〟


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