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朝、目覚めると、俺は見知らぬ家の住人になっていた。


「あら、今朝はやけに早いのね、了以」





その日、普通に朝、目覚めただけのはずだった。


「なん、、、だぁ?」


珍しく、すごくよく眠れたと満足に布団の中で伸びをしたら、手が何かにぶつかった。


痛いだろうと頭上を見ると、


スッキリと無駄のない様子は好みの部屋ではあるが、

しらない壁紙、

見たこともないカーテンの柄、

ふかふかのベッド


さっき当たったのはベッドの木枠だったのか。


俺は畳派だ。


ベッドなんて、部活の県大会でホテルに泊まったときか、

喜多の部屋に泊まったときかだ。



急いで、部屋から出て階段を降りると、背中から誰かに声をかけられた。


「…」


振り向いてみたその顔は、全く面識の無い女。


20歳を5歳以上は過ぎているだろうか。


ちなみに、俺は女嫌いで通っている。女性に触れられるとジンマシンが出るからだ。

自慢じゃないが、これは、近所中、校内中で有名だ。


母親はどうなんだ、とよくいわれるが、生まれつきなわけないだろう。

歳の離れた兄曰く、多分、幼稚園時代に散々、女の先生にかわいがられたからだろう。

ということだ。

両親は俺が5歳のときにはすでに他界しているから、真偽のほどはわからないままだ。


だから、俺の知り合いで、俺に話し掛けてくる女は一人もいなかった、はず。


 

よく見ると、恐ろしく整った、モデル並みの体型をしている。

俺より多分高い身長、180cmちかいよな?


日本人っぽいけど、目が青みがかってる。


「あんた、ニューハーフ?」


あ、間違えた、ハーフかって聞きたかったんだけどな。


「な…! 了以、あんた、やっぱり昨日の事を根に持っているのね!」


真赤になって怒った顔で言われても、はて、何のことだか。


「昨日? なんかあったか?」


女に聞いたわけじゃなく、純粋な疑問が口を衝いて出ただけだった。

が、女はかなり不振そうな顔を向けていた。


「なにって・・・」


言いにくそうだ。

よほどひどいことされたんだろうか、俺。


まあ、それは置いておいて、それよりも、昨日という言葉に対する異様な違和感がある。

(昨日・・・俺は何をしていた?)


「了以、あんたやっぱり医者に見てもらった方がいいんじゃない。

昨日の夕方に頭が痛いっていって、ふらふらだったでしょ。

あたしがMOを最強モードにしちゃって、高速で移動させちゃったからかしら」


女は、さらに不安げに言った。


そうして、俺の頭に女の細い手が伸びてきた。

一歩女から後退して、その手をよける。

その手が、目標を失って宙に浮く。


「了以!」


なんで、怒るんだ、触って欲しくないんだから仕方ないだろう。

女の声は無視して、自分で頭に手をやって調べてみる。


が、どこにも痛みはない。


それにどう記憶の糸を探ってみても、頭が痛かった覚えが無かった。

しかし、何か忘れているような気はする。


「今日は何月何日だ?」

 

女はいまだ宙に止まっていた手を、そのまま腕組みに直してしてから睨んでくる。

らちが明かない。


「何日だよ!」

「もうっ! 7月7日よ!」


7月7日ぁ?

うそだろ。

 

喜多の誕生日じゃないか!


「ここから一番近い駅はどこだ!」

「エキ?エキってなによ?」

「なにって、電車の駅に決まってんだろ」

「デンシャ? ・・・了以、あんた一体何語をしゃべってんの?」


それはこっちの台詞だ!

思わず、こぶしを握り締める。

やっぱり、俺にとって女は鬼門だ。

誰でもいいから、駅までの道を教えてくれる奴を探そうと目の前の玄関から出た。


「どうした了以? こんな朝早い時間に起きいてるなんて、珍しいな」

 

門の花壇に水をやっていた男が、俺に声をかけた。

こいつも、しらない男だ。


なのに、親しげに声をかけてくる。

俺は、悪い夢でも見てるのか?


「あんた!」

 

俺はそいつに駆け寄った。


「あ・ん・たぁ?」


「駅! ここから一番近い駅はどこだ?」


男は女と同じく変な顔をすると、俺の後ろにいた女に向かってこう言った。


「おい、タイプⅡ、了以の脳波を調べてくれ」

「何度言ったらわかるのよ! あたしは真理! 真の理と書いてマリと呼ぶのよ!」

「いちいち口答えするな。全く、了以が甘やかすから、アンドロイドがまるで人のようだ」

 

アンドロイド?

俺が甘やかす?

誰を?

ほうけていたら、真理と言う女に手首を掴まれてしまった。

やばい!

かゆくなる!


「ちょっ! はなせっ!」

「おとなしくしなさいよ、折れちゃうでしょ!」


あれ? ジンマシンが出ない。

女にちょっとでも触れただけで、赤いぶつぶつが出る体質だぞ・・・。


真理をじっと見た。

バスト95㎝、ウェスト58㎝、ヒップ95㎝くらいかな。

どっから見ても女だが。


「おまえ、やっぱり、女じゃないな」

「了以、この腕折ってあげましょうか?」


満面の笑みを浮かべながら、どこから出したのか、

ペンチのようなものをぐにゃりと折ってしまった。


その勢いで、本当に腕を折られたらたまらない。


「夕貴、脳波に以上は見られないわ」


真理という凶暴な女はやっと手を放してくれた。

しかし、脳波と言うのは手首の脈を診ただけでわかるものだろうか?


「俺の頭なんてどうでもいい。俺は行く所があるんだ。

あんた頼むから、この家から一番近い駅がどこにあるか教えてくれ!」


「・・・真理、本当に異常が無いのか? これで?」


 二人とも、俺の方を見て大丈夫だろうかと言った表情だ。


「もういい、自分で探す!」


外に出ようと駆け出した俺の手を掴む。


「了以、そんなに知りたければ教えるが」


 もったいぶらないで早く教えりゃいいだろうが!


「今の時代に駅なんてものは存在しない。駅を必要とした電車という乗り物が存在しないからだ。

5年前に製造された真里の知識の中にも組み込まれてない。それほど、アンティークな代物なんだ。

だから、外に出たとしても、お前が知りたい事を教えてくれるものはいない」

「な、にをばかなことを~! ふざけんな!」


ばかばかしくって、話にならない。

これ以上こんな奴等に付き合えない!

俺は格子の門を開けて外に出た。



「っうっ! わ~~!!」


なんで? 俺、落ちてる?

完結済みです。

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