悪口の岩
お子様に読み聞かせられるお話を意識しました。
昔々、ある村に「悪口の岩」と呼ばれる大岩がありました。
その岩に向かって悪口を言うと、なぜかとてもスッキリとした気持ちになるのです。
村人たちは、イヤな事がある度に「悪口の岩」に向かって悪口を言っていました。
「あいつは生意気で、腹が立つ」
「あの子は自慢ばかりで、イヤになる」
「あの人はワガママだ、大キライ」
悪口を言った村人たちは、スッキリとして帰っていきます。
ある日のことです。
村一番の暴れん坊の男が、「悪口の岩」に、自分の悪口を言われていると知ってしまいました。
「冗談じゃない。なぜオレ様が悪口を言われなきゃならんのだ」
暴れん坊の男は大怒り。
「悪口の岩」に向かって、村人たちの悪口をたくさん言いました。
それでも男の気は収まりません。
男は「悪口の岩」を叩き割ってしまいました。
「な、何だこれは」
なんということでしょう。
真っ二つに割れた「悪口の岩」から、黒い毛虫のような「悪口」が、うじゃうじゃと這い出てきました。
男が言った「悪口」たちが、男の体にまとわりつきます。
それだけではありません。
岩から出てきた「悪口」たちは、今まで悪口を言っていた村人たちにまで向かっていきます。
「た、助けてくれぇ」
「やめてくれぇ」
村人たちは、自分の言った悪口たちに襲われて、大混乱。
そこに一人のお坊さんがやって来ました。
お坊さんは、割れた「悪口の岩」をほこらにまつり、念仏を唱えます。
すると村人を襲っていた「悪口」たちはスーッと消えていきました。
お坊さんは村人たちに言いました。
「言葉は、いつか自分に返ってくる。悪口はむやみに言うものではない」
男も、村人たちも、みんな反省しました。
それ以来、村人たちは、ほこらにある割れた大岩に「良かった事」を話すようになりました。
「友達と仲直りできた。良かった」
「明日、結婚するの。幸せよ」
「お母さんにほめられた。うれしい」
村は前よりも、ずっとずっと明るくなりました。