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きっと4話 適当に進もう

「さて、どうしたもんか……」


 危機を脱した俺は、これからのことについて悩んでいた。

 進まなくてはいけないのは分かっているのだが、いかんせん森の出口の方角もわからなければ距離もまったくわからない。

 それに加えて、森を抜けたとしてすぐそばに人が住んでいるのかも不明だ。

 そもそもこの世界に人は存在するのか? そんな疑問まで生まれてくる。

 そんなこと考えてると、途端に不安になってきた。

 なので自分に必死に言い聞かせる。


 いやいやいや! 異世界転生したのに、無邪気で可愛いけも耳の獣人や美人で優しいエルフ様たちがいないなんてあるはずがない! こんな疑問、持つまでもないな。この世界は俺の思い描く理想の異世界だ。それで俺はこの森抜けたとこにあるデカイ町でハーレムを築くんだ!! その為には一刻も早くこの森を出る! 取り敢えず適当に進んでみる! はい、今後の方針、これで決まり!


 気分が晴れてきたな。よし、進む方向は天運に任せるとしよう。

 俺は靴を脱ぎ、そのまま上に放った。落下した靴の先が右を向く。


「よし! 右に進もう!」

 

 俺は元気よく歩き始めた。


 ~~~~~~~~~~~~~~


「はあ、はあ……。いったい……いつになったら……森を抜けられるんだ?」


 俺の体はすっかり痩せこけてしまっていた。

 額からは大量の汗が吹き出し、汗を吸ってすっかり重くなったカッターシャツやアンダーはところどころ枝に引っ掛かり破れている。

 足はパンパンに腫れ上がり、叩かれようものならそのまま崩れ落ちそうなほど痛々しい。


 歩く足取りは重く、フラフラしながらも前に進んでいた。

 しかも歩きだしてから一回も休むことなく歩きっぱなしだ。何度か休もうと思ったが、いつ何が出るか分からないような場所で気が休まるわけもなく、ぶっ倒れるまで進み続けてやることにしたのだ。


 そう決意したのは良いものの、さっきから視界が歪み、頭が回らなくなってきた。

 それもそのはずで、岩の窪みなどに水溜まりがあるおかげで水分不足は起こしていないものの、もう何日も食べ物を口にしていない。そのせいで栄養失調に陥っているのだろう。余計に休んでいる暇はない。

 俺は体に刻一刻と限界が近づいているのを感じていた。もはや動けなくなるのも時間の問題だろう。


 ……でも俺は心までやられてはいない。いや、むしろ体に限界を感じる度に自らの思いが強くなっていくのを感じる。


「せっかく、異世界に来れたってのに……こんなとこで野良死にしてたまるか……! 俺はこの森を抜けて……理想のハーレムを築いてやるんだ……! それまでは何があっても絶対に死ねんっっ!!」

 

 俺は目をギラギラ光らせながら宣言した。


 小さい頃からの唯一の夢が、しかし不可能だと思っていた願いが、今生き延びることで叶うかもしれないという希望。それが俺を突き動かす原動力となっていた。



 歩き初めて3日目。俺はめげずに歩いています。

続きます!

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