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きっと3話 許してください

 ケルベロスと目が合った。

 ……目が合ったので、とりあえず微笑みかけてみた。

 その後、自然に視線を反らす。

 とりあえず、こっちに敵意がないことをアピールしなくては!

 そうすれば、向こうもむやみに襲ってきたりしないはず……。

 そう思っての行動だったのだが。


「ははは~……なんでそんな敵意むき出しの顔向けてくるんすか。勘弁してくださいよも~。」


 ケルベロスはこちらを睨み付けながら、ゆっくりと立ち上がった。怖すぎる。

 そしてそのまま大きく跳躍し、こちらとの距離を詰めてくる。


「俺みたいな雑魚、わざわざ追い回さんでもいいだろうがぁ~っ!!」

 同時に素晴らしいスタートダッシュを切っていた。


 ─────


 数瞬後、俺は追いかけてくるケルベロスを撒くため、体の小ささを巧みに利用し、木々の隙間を縫うように逃げていた。

 それに加え、わざと木の密集しているところを通る。木の影に隠れ、どうにか視界から外れようという魂胆だ。

 一方、ケルベロスはというと……


「っ、それは反則だろっ!!」


 立ち塞がる木を、かわすでもなくなぎ倒しながら突っ込んできていた。

 それでも未だ追いつかれていないのは、突っ込んでくるといっても、木に衝突する度に速度が落ちているからだ。それでも妨害できるのは一瞬。木々の隙間の2,3メートルのうちに、木をなぎ倒す程の速度が回復するのだ。まさに『反則級』。


「GYAOOOOOOO-!!!」


「さっきも思ったけどなんでそんな声だすんだ! 仮にも犬なんだから、ワンとかガオーとかだろ普通! 可愛くねえなちくしょー!!」


 しばらく追いかけっこが続き、右に左に進路を変えながら必死に逃げていると、迫ってきていた足音が急に止んだ。


 撒いたか……?


 そう思い後ろを振り返ると、かなり離れたところでケルベロスがこっちを見ていた。

 そしてこっちを一瞥すると、元いた方向へと歩いていった。

 どうやら諦めてくれたみたいだ。


「た、助かった……。」

 死ぬかと思った。いや、わりとマジで。

 ……それにしても、なんで急に引き返していったんだろ? 助かったからいいけど。


「にしても疲れたな。もう俺一生分ぐらい走った気がする。」


 言いながら天を仰いだ。ほとんど枝しか見えないケド。

 疲れたと言っても、ここにいても仕方ないし、なによりこんなとこで休んでいても気が休まらないので、さっさと立ち上がる。

 立ち上がり、念のためケルベロスがいた方向に目を凝らすと、妙なものが目に入った。

 木の幹に爪痕のようなものが無数についているのだ。

 しかもその爪痕は、ケルベロスが寝ていた場所を囲むように緩やかなカーブを描きながら、一本線になるようにつけられていた。


 その光景を目にして、俺は思い当たるものを口にした。


「縄張り……か?」


 熊とかの強い動物は、こうやって木に印をつけて縄張りを主張するって聞いたことがある。

 そしてその印が、ケルベロスの場所を囲むように並んでいる。

 しかもその場所の中心地が、不自然に平地になっているのだ。

 なら、自然に導き出される答えが……


「あそこ、アイツの縄張りだったのかぁ……」


 でも、それなら全部納得だな。

 ケルベロスがあそこで昼寝始めたのも、俺を見て敵対心むき出しだったのも、爪痕付近で追いかけ回すのを止めて帰ってったのも全部!

 ようするに、俺はアイツの家に無断で上がり込んだから追い払われただけってことだ。


 なんで転生先がそんなクソみたいな場所だったの? とか、この先どこに行けばいいの? とか、いろいろ思うところはあるが、取り敢えずケルベロスにこれだけは言っておきたい。

 いや、これを言っておかないと後で後悔する気がする。

 ……安眠を邪魔された恨みは怖いのだ。俺なら絶対に根に持つ。

 

 だから、


「睡眠妨害してすんませんでしたっ!!」

 俺は既に誰もいない森に頭を下げた。

眠るの邪魔されたときの恨みは深い。


続きます!

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