表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

第0話 人生終了のお知らせ

今回はこれまでより少し長めです。

まあ前回までが短すぎたんですけどね!

 

 そ、そんなバカな……! 嘘だろ……? 嘘だと言ってくれっ!


 本当に短くて端的だが、俺に致命傷を与えるのに十分なメールを見ながら震えていた。


 <題名:すまん


 すまん、口が滑った。>


「……っっ!」


 俺は怒りに任せて大声で叫んだ。


「………っざけんじゃねえーっ!!」


 ………ふぅ。ちょっとスッキリしたな。 とりあえず落ち着こう。

 平常心、平常心。

 いつもの俺なら怒りにまかせて大事な家具たちに八つ当たりしていたかもしれないが、今日の俺はひと味違う。

 なぜなら……、君がついてるからだ!


「今出してあげるからねー! 愛しの天使!」


 透明の袋と大量のプチプチを破り捨て、中身を取り出し……


「俺を癒してくれぇ~っ!」


 ……そのまま抱きついた。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 そして今日。俺は愛しの天使の元を離れて、いつもとは違うであろう学校に足を運んでいる。

 もしかしたら『くだらないこと』としてあまり噂が広まってないかもしれないし、もうクラス中に広まっているかもしれない。

 牧野は友達が多いから、多分後者だろうけど……。


 いろいろ思考を巡らせているうちに通学路を歩き終え、教室の前に着いた。

 うじうじしてても仕方ないのでさっさと扉を開けて教室に入る。


「おはよー」


 近くにいた友人にいつも通り声をかける。

 すると、一瞬クラスメイト達の視線を感じた。が、振り返るともうこっちを見ている者はいなかった。

 その時俺は悟った。


(あっ、ばれてますなぁ……) と。


 試しに、普段からわりとよく喋るクラスの女子に声をかけてみた。


「よっ。おはよう。」


「う、うん。おはよう……。」


 はいアウトー!

 これもう完全にアウトっすわ!

 だって聞いた? 今の返事!

 いつもなら

「あっ、おはよう。海音(あまと)くん。」

 って返してくれるのに、

「う、うん。」だってさ!

 わかりましたよ! もう認めますよ。はい、噂、広まっちゃってるね! チクショウ!

 別にバレても虐められる訳じゃないし嫌われるわけでも無いんだけどさ。この微妙な距離感!

 こうなるのが嫌だったんだよ!

 なんかそんな反応されるとさ、話しかけるのが申し訳なくなるじゃん。

 向こうにそんな気はないのかも知れないけどさ。

 ……そんなことを思ってると、どこからか声が聞こえた。


「いや~、海音さん、流石っすわ~。 彼女通り越して今となっては嫁がいるんだからな~。マジ尊敬するわ! な!みんな!」


 声の主はすぐにわかった。牧野だ。

 なぜか牧野は少し必死そうな声と表情で辺りに言いふらしている。

 牧野の声を聞いて、周りの人らが苦笑いしながらこっちを見てくる。

 それと同時に怒りが込み上げた。


「おい! お前のせいでバレちまったのになに煽ってきてんだ! いい加減キレるぞコラ……!」


 俺は胸ぐらを掴み上げなg……掴みあげられず、両手で胸ぐらを掴みながら詰め寄った。

 すると牧野は以外な反応をした。


「ち、違うって……。流石に悪かったと思ってよ。イメージ回復させるために、いかにお前が度胸があって尊敬すべき人物かを熱弁してたとこなんだよ……。」


 ちょっと泣きそうな顔をしながらそんなことを言ってくる。 


「お前……まじで言ってんの……?」


 聞くと、牧野の顔が少し和らいで、


「あたり前よ……!」

 言いながらサムズアップを決めた。


 ……うん、嘘ついてるようには見えないな…。

 そうなんだよ、やっぱりコイツ根は良いやつなんだ。だから友達が多いんだろうし、たまにムカつくことはしてきても素直に憎めないんだろう。それは俺もよく知っている。

 だけど……それでも一つだけ言わせていただきたい。

 俺は大きく息を吸って、目の前のバカに向かって言い放った。


「かんっっぜんに逆効果だよっ!!」





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「はあ~。お前のおかげで、今日一日クラスのやつらの俺を見る目が少し遠かったよ……。」


「だ~から悪かったって! いい加減機嫌なおせよ!」


 今日の授業もすべて終わり、俺たちは帰路についていた。家が近くだとわかったこともあり、一緒に帰ることにしたのだ。

 普段の俺なら、帰り道が同じでも一人で帰るのだが、今日はコイツにイライラをぶつけたかったのだ。それに、もうなんか隠し事とか全部ぶちまけてスッキリしたい。そんな気分。コイツは根は良いやつなんだ。突拍子の無い話でも、きっと最後まで聞いてくれるだろう。

 こんどこそしっかり口止めはするけど。


 まあコイツが原因なわけだし、バチは当たんないよな。


「なー、牧野。この際だから俺の夢、聞いてくれないか?」


 急に遠い目をしながら問いかけてくる俺に、牧野は少し訝しげな顔をするも首を縦にふった。


「俺の夢はな……」


 一泊おいて、俺は願望をすべてさらけだす。スッキリしたいから。


「……ハーレムを作ることだっ!!!」


「………は?」


牧野が目を点にして困惑している。でもそんな反応は予想の内。当たり前の反応だ。だから俺は更に言葉を吐き出す。……いや、なぜか吐き出さずにはいられなかった。


「俺はいろんなアニメとか漫画とかラノベとか見てて、ずっと羨ましいと思ってたんだ!

 どの作品の中でも主人公は美幼女や美少女や美女に囲まれて甘い空間を作りやがって!

 周りの目も読者の目も気にせずにいつでもどこでもイチャイチャイチャイチャと……! しかも全員が全員主人公に惚れてるときたもんだ! とんだ女ったらしだよな! クソヤロウだよな! お前もそう思うよな!

 …………っ! ……でも! いくら主人公共に文句をつけ続けても!」


 俺は大きく息を吸って、一気に吐き出した。


「俺は!! ハーレムが!! 羨ましいんだあぁぁぁぁーー!!!!」

「そして! 俺もそんなハーレムを築きたぁ~い!!!!」


 終わった……。さようなら俺の陽キャモドキの人生。でも言いたいことは言いきった! 悔いはない!

 俺は息を整えると牧野のほうへ向き直った。

 だが牧野は呆然としていて動かない。

 なので俺から話しかけた。


「俺はハーレムが羨ましくて羨ましくてしかたないんだ。どうだ? 気持ち悪いだろう?」


 言うと、ようやく牧野が正気に戻った。心を落ち着かせる為か髪の毛をクシャッとし、返答してくる。


「あぁ…。めちゃめちゃ気持ちわりいな。」


 ヴッ!

 そこは嘘でもいいから否定してほしかった!

 心の中の俺が胸を押さえながら苦しんでいる。


「でもよ……、どんな夢でもよ。そんなに力強く示されちゃあ、お前の夢をけなすことなんてできねぇよ……!」


「え……? それってどういう……」


「だから!! どんなバカみてぇな夢でも! そんなに強く思ってるお前の夢を! 俺が否定するなんてできねぇってことだ!」

「どんなバカげた夢でも……お前が目指す限り俺は応援するぜ! 友達がハーレムを作る宣言とか確かにめちゃめちゃ気持ちわりいよ……。でも! 俺はお前の夢がいつか叶うって信じてるぜ! それが俺が思う友達ってもんだ! そんで、それがどんな夢だって変わらねえよ。」


 ……俺の心の奥から何か熱いものが込み上げてくる。

 そして、その熱さが視界を霞ませた。


「牧野……。」


「海音……。」


俺は牧野に少しずつ近づいて行く。頭ではそんなこと命令したはずは無いのだが、体が勝手に動くのだ。


「……牧野っ!!!」


「……海音っ!!!」


「お前ってやつは……、お前ってやつは本当に……!」


 言いながら俺は牧野に駆け寄る。

 それと同時に牧野も手を広げて走ってくる。


「ならっ!! 俺もひとつだけ言わせてくれ!」


 牧野との距離はあと少しだ。


「なんだ! 海音っ!!」


 俺は今日一番の大きな息を吸うと、拳を握りしめた。


「バカがバカバカ言ってんじゃねぇ! お前が課題終わらせときゃこんなこと暴露しなくて済んでたんだよっ!!」


 言いながら、駆け寄ってきていた牧野の顔面に美しい右ストレートを決めた。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ったく、最後の自爆は自業自得だろ?なんで殴られなきゃならないんだよ……。」


 何やらぶつぶつ言っているが、男が両手広げて駆け寄ってきたらぶっ飛ばすのが普通だと思う。


「でもまあ、俺の夢を応援するなんて言ってくれたの、お前が初めてだったから……。」

「まあ、なんだ……。ちょっと嬉しかった。ありがとう。」


 言うと、牧野がすごく嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「そうかい、そりゃ良かったよ……っと。」


 そうだ。俺は夢を肯定してもらえて嬉しかった。

 ハーレムを作れる作れないは別として、何かをしようとする時に一人でも理解者がいることは、それだけで心の支えになるものだ。

 そして、もっとコイツと仲良くなりたいと思った。

 ……こんな感情はいつぶりだろうか? なんだか妙にこっ恥ずかしくなって目を反らした。


「よーし、そんじゃ、駅まで競争でもしますか! 負けた方はジュースおごりな!」


 牧野が急にそんなことを言い出した。

 ……と同時に走り出す。


「ちょ……っ、ズルいぞ!ちょっと待てよ!」


 言いながら俺も走り始める。


 牧野は思ってたより足が遅くて、すぐに追いついた。

 ……と、そこで牧野が急に減速した。


 ……ん? 体力切れか? バカのくせに体力もないなんて、なんて可哀想なやつだ……。


 俺はその隙に一気に加速して追い抜く。

 顔だけ後ろを向けてドヤ顔をしたら、牧野が何か叫んでいた。風の音で内容までは聞き取れなかったが、大方抜かれたことへの言い訳だろう。


 そう思って視線を前に向け、目に写ったものは……、


 信号。色は危険信号であり警戒色の赤だった。



 瞬間、体に衝撃が走った


続きます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ