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んで29話 新武器は焦げたパン

「っはー! 旨かった。味付け無くても以外とイケるもんだな!」


 俺は今、長靴に入ってた魚を食べ終えたところだ。焼いただけで、これといった調味料も無かったが、これがなかなか旨かった。いつもワケの分からん魔物肉ばっかりだったから、余計美味しく感じたのかもしれない。


【見たことない魚でしたが、美味しかったのなら良かったですね。】


 そうそう。どんなアホみたいな取れ方でも、美味いなら両手広げて大歓迎だ。因みに、作った釣竿はそこらの木に立て掛けておいた。このまま壊すのはあまりにも不憫すぎる。……まあこんなとこに来る人はまずいないと思うので、壊しても壊さなくても一緒っちゃあ一緒だけど。


 俺はいつの間にか川辺に来ていたタマにもたれ掛かり、そういえば、と自分の左腕を見た。


「何にしよっかな……」


 左腕が開放されたってことは、これからは左腕も変型させれるってことだ。


【右腕の武器を決めたときは、剣が最強みたいなこと言ってませんでしたっけ。左も同じで良いんじゃないですか?】


 う~ん、まあ普通に考えたらそうなるよね。俺も二刀流が真っ先に思い浮かんだし。


「なんか両手に剣って戦いにくそうなんだよね。剣の達人とかなら良いかもしれないけど。」


【あー、言われてみれば、確かに戦いにくそうですよね。詰め寄られた時とかどうするのか気になります。】


「だよな~。コケたときとかどーすんだろって思ってたもん。あと走りにくそうだし。」


 あ、走るときは柄に仕舞うから大丈夫なのかな?


【そうですねー……、なら右腕の剣を大きくするのはどうでしょう? 変型に使えるバイオウェポンの総量が増えたので、今までの倍くらいの大きさに出来ますよ。】


 おお、そういえばそんな事言ってたな! 鎌とかハンマーはそれで諦めたんだっけ。総量が少なすぎて小さくなっちゃうからって。

 でも今なら大鎌だって作れるかもしれない。大剣……は流石に細めのくらいしか無理っぽいけど。


「それなら大鎌とかハンマーとか、あと大槍とか! 色々創ってみたいな。……あと、もし両腕を変型させるなら盾とかかな。見た目に難アリだけど、防御も大事だし。」


【あー、良いですね! 私は鎖分銅(くさりふんどう)とか好きです。完全に不規則な、分銅と鎖のコンボ技。あれは見てて楽しいです! ……ちなみに、盾はあまり意味ないと思いますよ? 結局自分の体ですし、体を攻撃されても再生しますし。】


「鎖分銅かあ~、俺は鎖系なら鎖鎌が好きかな。自在に長さとリーチを操って攻撃するあの感じ……カッコ良いよな。……あと、盾は全然アリな変型だぞ。腹ぶったぎられるより、腕攻撃された方が絶対痛くない。」


 盾にしても自分の体の一部だし、そもそも硬質化してるから確かに要らないんだけど、痛いのは嫌だ。腕を殴られるか腹を殴られるかで、腹を殴られるのを選ぶヤツは居ないだろう。居たとしたら、余程のドマゾか、筋肉自慢の腹筋バキバキ野郎ぐらいだ。……俺は勿論、特殊性癖もバキバキの腹筋も持ち合わせていない。


【あ、それもそうですね。痛覚の事を完全に忘れてました。】


「……おいおい、結構重要な事だぞ。忘れないでくれよ……。」


 コイツはたまに怖いことを言う。


【……まあ、物は試しです。一つ一つ変型させてみて、しっくりくるのにすれば良いですよ。しっくりきてもこなくても、登録しておけば無駄にはなりませんし。】


「ん。まあ、最初からそうするつもりなんだけどね。」


 言いながら、俺は左腕に意識を集中させる。なんだかんだ言って痛いのはすんごく嫌なので、まずは盾から試すことにしたのだ。ノーモア痛覚。

 レベルの上昇、バイオウェポンの増加に訓練の成果も相まって、今では変型に1秒とかからないぐらいになっている。勿論、俺が頭で構想練ってる内はウネウネするから、正確には、イメージが定まってから1秒だけど。


「ん、出来た。」


 俺が創ったのは手で持つタイプの盾ではなく、腕につけるタイプの物だ。手首の付け根辺りから肘に届かないくらいまでをすっぽりと覆う、漆黒の盾。形は五角形で、ホームベースみたいな形だ。剣道とかで使われる手袋型の防具、ガントレットから連想した。

 これなら手が自由だからあまり不便は無いし、実用的だ。それに、なんだか着けてるだけで安心感がある。やっぱり、防具があるか無いかでは精神的にも良いのかも知れない。


【おお……バイオウェポンの量が増えると、目に見えて変型が早くなりますね。】


「まあ確かに早くなったけど、できれば今創った盾の感想が欲しかったかな。」


 なんだろう。褒めてくれたのは嬉しいんだけど、若干ズレている気がする。例えば、難しい計算問題をしていたら”書くの早いね”って言われた時みたいな。いや、別に良いんだけど。嬉しいんだけど。


【盾の感想ですか……。】


 ララが若干言葉に詰まっている。俺の盾が素晴らしすぎて言葉が出てこないんだろう。これは仕方のないことだ。誰だってこうなるだろう。


【……と言っても、焦げたパンのような色だな。としか……】


「その評価はあんまりだと思うんだ、ララさん。」


 焦げたパンは流石に酷いと思う。


「ま、まあ良いよ。確かに真っ黒だしね。見方を変えれば焦げたパンに見えなくも──いや、見えないから! どっからどう見てもイカした漆黒の盾だから!」


 まあ、流石にこれはララのジョークだろう。もし本気でこれが焦げたパンに見えたんなら、一回医者につき出した方が良いかもしれない。


「……んで、この盾の名前だけど、剣道と同じでガントレットにしようと思うんだけど──」


『GRUOOOOOOー!!!!』


 名前にシールドが入るとなんだかカッコ悪い気がするので、籠手という意味のガントレットにすることを伝えようとすると、遠くからの遠吠えに遮られた。


「えっ。」

【おや?】


 俺は素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げた。あと、ララも。

 そして、体が無意識に震え始める。だって、この力任せに雄叫びを上げるこの声を、俺は知っているから。その恐怖を、体に叩き込まれているから。


「ケルベロス……、か?」


 俺は顔をひきつらせながら呟いた。

焦げたパンって、絶妙に不味くありません?

なんか、こう、噛めば噛むほど苦い──噛めば噛むほど甘いニンジンの逆バージョンみたいな?

 ……まあ私はニンジン好きですけど。


続きます!

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