恐らく11話 ドルクの映像記録2
【──新兵器が完成し、嬉々として俺たちは王都に向かった。その道中で、どうも妙な話が聞こえてきてな。「これでもうこの国は安心ね!」だとか、「これも賢者様たちのおかげね! あのお方にはもう感謝してもしたりないわ。」だとか。
俺は彼女らが安心している意味がわからなかった。だってそうだろう? 不安になりながら俺たちの研究結果を待っていたはずの民衆が、皆安心しきった様子で町の中を歩いているのだから。
そして俺は王城に着くと、国王に研究結果や新しい技術の開発に成功したことや利点、これを使えば迫り来る怪物に太刀打ちできるかもしれないことを告げた。
すると王は、よく頑張ってくれたと、お前ならやってくれると信じていたと、労いの言葉をかけてくださった。
……しかし王は、次にこんなことを言い出した。
「だがもう大丈夫だ。 もっと素晴らしい解決策が既にできたからな。安心してくれ。 彼らに任せておけば、Ifではなく絶対にこの国は安全だ」と。
俺は耳を疑った。 俺たちの研究が必要なくなったと告げられたのだ。俺はすぐに問いただした。
なぜ新たな兵器が必要ないのか。彼らとはいったい誰なのかを。
……王の話によると3日ほど前、不思議な力を持った戦士たちが現れたようだ。選定者なんて呼ばれてたらしい。そいつたちは森羅万象を自由に操り、俺の完成させた兵器などまるでおもちゃに見えるほど強大な力を持っていた。皮膚を硬質化させるどころか、風を纏って攻撃さえ通さないんだぜ? 考えられるか? しかも、その妙な力を持った動物、魔物も現れ始めたって話だ。
それで王にお払い箱をくらった俺たちは】
「長い。もっとわかりやすく端的に言ってくれない? ……眠くなってきた。」
まあ映像記録にこんなことを言っても意味が無いことぐらいわかっているが……
【俺はその後いろいろあって異端者として国を追われる身になってな。 非常事態のために選定者が作っていた転移用の魔法陣を奪い、研究所ごと転移したってわけだ。 よく使い方がわからなかったからな、こんな変なとこに来ちまったってわけだ。】
うわっ、通じた!? これ映像記録じゃないの!? ありがたいけど……怖いんですけど。……いや、助かるけど怖いんですけどぉ!?
俺は口元をヒクつかせながら質問をする。
「……じゃああの研究所に大量にある魔法陣は?」
【あれは俺が作ったんだ。成功した時は驚いたよ。何を隠そう、俺も選定者の一人だったんだ! 俺は直接風を操ったりは出来なかったが、魔法陣を組み立てて道具に付与することができる付与魔法、そして転移魔法付与という転移魔法を使うことができた。】
魔法のせいでな。とかなんとか言ってたくせに、それでいいのかドルクさん……。俺はてっきり魔法が嫌いで否定したから国を追われたんだと思ったよ!
【魔法はむしろ歓迎だ。それで国が救われるのなら本望だしな。俺が異端者とされたのは人体実験を繰り返していたからだ。それが国を救うために必要不可欠だったのならまた違ったのかもしれないが……俺は狂科学者として国民から非難轟々だった。】
あー……確かに人体実験して犠牲者出した挙げ句、完成したものが国のためにならないのならそうなるのも無理はないか。
【そうだ。それで俺は残った数少ない研究員と共に、この研究所でさらなる実験を繰り返した。魔法は確かに強大な力だが……、過程も何もなく急に現れた魔法に、俺の積み重ねてきた科学技術が負けるのが悔しくてならなかったんだ!】
……なんかナチュラルに心を読まれた気がするが、きっと気のせいだろう。たまたまだ、たまたま。
それにしても……
「まさか、その研究員たちも人体実験の犠牲になったわけじゃないよね? さっき実験室で骸骨があったのは人体模型だって信じていいんだよね?」
【…………】
なんか答えろよっ! 沈黙は肯定と取るぞこのヤロウ!
【まあ、なんだ。……とりあえずここでの実験のことは、引き出しの奥の方に入ってる生活記ろ…実験記録に書いてあるから、続きはそっちで語ろう。この魔法陣ももう魔力切れだ。】
そう言い残して消えてしまった。
俺は大きく息を吸って。
「続くのかよっっ!!」
ドルクの消えた部屋で、ひとり叫んでいた。
続きます!
あ、次は続きの映像記録見終わって、海音が自分なりにまとめたところからです!




