表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
412/446

従魔たち

 ちょっとした騒動にはなったものの、奇妙な侵入者は、俺の従魔であるということが判明した。

 ペシュの端的な説明では、従魔であること、名をチョビであること、という事実のみの確認くらいしかできなかったが。


「……従魔。こいつも人型に変化したりするのか?」


 俺が問いかけると、ペシュはフルフルと首を振った。


「でも……大きくなったり、小さくなったりは、する」

「なるほど、それなら小さくなってここまで辿り着いたのかな? でなきゃ、衛兵に見付かるもんな」


 手のひらに乗せたチョビは軽石のように軽かった。

 ツンッと背中をつつくと、こちらを見上げて、ちょっと首を傾げてスリスリと頭を擦りつけてくる。

 うっ、なんだこれ。可愛いぞ……痛いけど。


「なんというか……途中でメリッサに見つからなくてよかったな」


 素早く黒いカサカサ動くものを見つけたら、たぶんメリッサならスリッパ的なものでプチッと……まあ、この世界にアレがいるとはかぎらないけれど。


「神子様、お食事のご準備が出来ました。こちらのお部屋で召し上がりますか?」


 噂をすればなんとやら、先ほど一度出て行ったメリッサが、ノックとともに再びやってきた。


「ああ、今行く」


 庭園で意識を失った俺は、どうやらそのまま一昼夜眠っていたらしく、丸一日絶食状態だった。起きた時は驚きのあまり空腹を忘れていたが、夕食まで待てそうもなかったのでちょっと遅い昼食を用意してもらったのだ。

 裸足にスリッパのような下履きをつっかけて立ち上がると、途端にチョビが慌てたように背中に飛びつき、そのまま頭のてっぺんまで登って座り込んだ。

 ぜんぜん重くないので構わないのだが、またしてもメリッサに驚いた顔をされてしまい、エレに至っては無意識に後ずさっている。


「あ、行儀悪いか? それなら下ろすけど」


 考えてみれば食事中に動物(?)を頭にのせてるのはいかがなものか、そう思ったのだがメリッサたちは慌てて首を振った。

 話を聞くと、どうもチョビは希少種の幻獣なのだという。

 というか、もし辞典などに載っているとしたら「危険」との注意喚起が、二重にも三重にもされているような魔獣なのだという。

 ――溶岩の石ころみたいなコイツが?

 まあ、伝承とかそういうのは大げさに伝わるもんだしな。

 

「じゃあ、いただきます」


 俺が手を合わせてそう言うと、メリッサが「はい」とほほ笑んだ。

 初めてそう言ったときは目を丸くしていたが、今ではこうして返事をしてくれる。日本語そのままなので、たぶん意味は分からないだろうけれど、少なくとも食事の前の挨拶だろうことは伝わっているだろう。


「……またパン粥に逆戻りか」

「今日だけでございますよ。ご辛抱くださいませ」


 匙で温かい粥を掬いながら、ふと気になったことを聞いた。


「そういえば、俺を運んでくれたのってメリッサだよな? あの時、俺と一緒にいた親子のこと、なにか知っているか?」

お読みくださりありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ