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幕間ー留学と魔界とー

「……なるほど、電池か」


 思わず呟いた僕に、ベアトリーチェは首を傾げた。


「でん、ち? とはなんじゃ」

「あ、いやなんでもない。ちょっと口をついただけで、意味はないよ」


 適当なことを言ってごまかそうとしたが、彼女の中でなぜかそれがちょっとうまい感じにひっかかったらしく、うんうんと何度か頷いた。


「何かは知らぬが、語呂合わせがよいな。名前が思いつかなくて困っておったところじゃ、蓄魔電池! うん、いい! それじゃ」


 うーん、それだと蓄と池の溜めるという意味が重なっちゃう気がするけど……まあいいか。

 迂闊に口走ったばかりに、なんだかおかしな命名がされてしまったが、このシステムの考え方については間違いなく画期的に違いない。


「ちなみに妾の作ったものは大型で武骨な形になったが、蓄魔機本体だけでなく、こっちにも魔石を組みこむことによって、ラムネットはかなり小型のチョーカーに仕込んでおったのじゃ」

「……へぇ、あのチョーカーはこの原理を使っていたのか」


 話しを聞くと、どうやら以前は魔法錠を解除するのにかなり大きい装置を持ち運んでいたらしく、この発想にはとても感心していたようだ。

 あれほど小型にしようとすると、やはり魔石がものをいうことになるらしい。装置に必要な幾つかの工程を、魔石が肩代わりしているということだ。この世界での魔石って本当に万能感あるよね。まあ、それだけに手に入れるのは難しいし、高価でもあるわけだけど。

 確かに、この辞典サイズの電池はおいそれと持ち運びできないし、小さな魔道具には付けられない。しかも、この試作品は蓄えた魔力の流失などの問題もあり、実用化という点でかなり怪しいということだ。そういところも評価が貰えなかった要因ともいえた。

 僕からしたら、この発想だけでも満点じゃないかと思うんだけどね。

 

「学校には認めてもらえなんだが、ラムネットに褒められたので妾は満足じゃ」


 ラムネットの弟であるジャンと組んでいることもあって、原案をラムネットに提供し、開発協力とまではいかないが、基礎知識など足りない部分を補って貰っているのだという。

 塔での研究内容を漏らすのは禁忌だが、知識を与え、指導するのもまた塔の研究者の役割だ。こうして学生の援助をしたり、育てたりすることはよくあることで、今回のベアトリーチェのように、学生が研究原案や、成果を塔へ持ち込むことは、大いに推奨されるのだという。

 学生にとっても、それによって知己を得たり、塔への推薦をしてもらえたりと、少なからぬ利があるのだ。


「これを使えば魔力を持ってない人も、魔法の巻物を普通に使えるのかしら?」

「……り、理論的にはそうじゃな。ただ、巻物に必要な魔力はかなり多いゆえな、今の段階では、魔道具が使えるようになるくらいの段階じゃ」

「あー……、そうなっちゃうのか」

「当然だな、魔力を持ってるやつでも、能力以上の巻物は使いこなせないんだからな」


 カエデとベアトリーチェの会話に、肩を竦めたダリルが加わる。

 巻物の利点は「相応の魔力さえあれば」持ってない属性でも、習得してないスキルでも、使えるということだ。

 当然ながら、文字通り「相応の魔力」が必要となるわけだ。

 余談だが、僕が自分の魔力で描いた巻物を燃やしてしまうのは、本来は魔力を受け止めるべき魔法陣が存在しないのに、無理やり魔力を注ぎ込んでいたためではないかと、今では考えている。

 これらは学園長の仮定に基づいて想像した仮説ではあるけれど、結構本質を突いているのではないかと思う。


 というわけで、あらかた僕達が活動する学校の敷地は一通り見学し、授業以外の活動、ベアトリーチェが主催するクラブの説明も受けた。お祖母様曰く、他に興味のあるクラブなどがあれば、新学期が始まってからでも見学して自由に所属していいとのことだった。

 まあ、僕はそんな暇があまりなさそうな口調だったので、楽しくクラブ活動……とは、いかないみたいだけどね。

 さてはて、一体なにをさせられるのやら……。

お読みくださりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ベアトリーチェの自分の羽に対するコンプレックスは相当なものなのでしょう。 リュシアン、君なら彼女を助けられると信じて居るよ。 頑張れ!!。 作者様、巷では某ウイルスの騒動で騒がしいですが、お…
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