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知識の塔

 魔王国学校内、知識の塔。

 正確には「世界の知識」と呼ばれる最先端の研究施設を集めた塔の周辺に、入所希望の予備研究者たちが集い、徐々に学ぶための施設を整えていき、今の魔王がそれを支援した結果、今のような幼少期から学べるマンモス学校へとなっていったのである。

 お祖母様に連れられて、今日はその知識の塔の内部へやって来た。


「そういえば、ずっとリンを見ないけど……」

「リンはしばらく単独行動よ。彼女は協力はしてくれるけど、常に行動を共にしているわけじゃないのよ」


 そう言えば、リンはどの組織にも属していないと言っていたっけ。

 神の使徒という特異性もあって、ある程度の自由は許されているが、このことに不満を示す者は皆無ではないらしい。

 リンの性質は、精霊などと同じで基本的に人間のすることに深い関心がない。ただ、個人的に気にいった物や人物に執着したり、気まぐれのように手を貸したりするに過ぎないのだ。けれど、そのことを本当に理解している者はあまりにも少ない。自分たちの都合のいいように使えると、なぜか勘違いしているのだ。

 考えてみれば、湖の乙女と呼ばれる精霊リィブもそんな感じだった。

 一般的に精霊や、神獣と類される知性がある魔獣の多くは、我儘で独りよがり、いわゆる善悪にあまり関係がなく、気分ひとつで福音を与えたり、呪いをふりまいたりするという。

 僕からすると、彼らは自然現象に近い存在なのだと思っている。有り余るほどの恵みを与えてくれたり、時に安寧をもたらしてくれると思ったら、ある日突然、積み木のおもちゃを壊す子供の様に、無慈悲にひっくり返してすべてを奪い尽くす……。

 そんな彼らを、思うままに操れると思う方がどうかしているのだ。

 

「さあ、リュシアン。こちらの扉よ」

「この扉、この間ベアトリーチェが入れなかった……」


 先日、ベアトリーチェが開けようと格闘していた、受付のすぐ横に設置された大きな扉。

 ベアトリーチェが押しても引いてもビクともしなかったそれは、お祖母様が触れると小さな魔法陣が扉に浮き出て、軽くノブを回すだけで簡単に開いた。

 僕の記憶にある指紋や角膜、手のひらの毛細血管などで認識していただろう個人を特定したり識別したりする方法……こちらでは、ほとんどの場合、魔力によって識別しているのだとお祖母様は教えてくれた。

 

「六階から上に登るには、ここのワープ陣を使うのよ。ただし、ここから行けるのは七階だけ。そして七階から二十階までは階段があって、各階の要所要所に決まった階のみに行けるワープ陣が幾つかあるの」


 それらワープ陣や階段をギミックの様に組み合わせて、目的の階へ登っていくことになるようだ。数年通っている人でさえ、一つ間違えるだけで迷子になることがあるから注意するように、と脅された。

 何ソレ、道順覚えられるかな……?

 冗談ではなく、何年かに一度は、そういう騒ぎが起こるというから笑い事ではない。


「今日は、軽く顔見せと、幾つかの簡単な契約書を交わしてもらうわ。ごめんなさいね、国としてはいろいろ取り決めや、守秘義務のようなものがあるのよ」

お読みくださりありがとうございました。

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