表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
339/446

世界

 異界と呼ばれるそこには、もともとこちらにあったとされる大陸が存在する。

 そのせいなのか、今でもたびたび神隠しのような、まるで天が攫ったように人が消える現象――何らかのはずみで双方の世界の境界を越えてしまう、というようなことが起こっている。

 通信での交流はあったので、すべてではないが、幾つかの事例は確認もできているようだ。

 とはいえ、お互いに存在していることを知っていても、直接行くことも、物を送ることも出来なかったので、これらの事故が起こっても、元の世界には戻すことは出来なかったのである。

 ――今までは。

 数年前に、その状況は変わった。世界を自由に跨ぐことができる麒麟が現れたからである。

 神の使いの神獣だという理由で、女神を祀るソティナルドゥ教大神殿に預けられたリン。

 リンという名は、教皇が名付け親らしい。

 当時は、リンの所有権について大いに揉めたらしいが、麒麟のいななき一つで一蹴されたらしい。ちなみに名乗りを上げてきたのは前皇帝、今の皇帝の兄であるが、当人はすでに鬼籍となっている。なんでも恒例行事の凶鳥狩り(厄落としのような行事らしい)の最中に事故に遭ったとのことだ。

 それはさておき、リンの存在を得て、こちらとあちらは限定的にではあるが、本当の意味で繋がった。物も、人も、一応は行き来できるようになったのである。

 ただ、教会預りとはいっても、リンはどの組織にも属していない為、この能力は計画的に使える能力とは言えなかった。

 そこで、どうやら僕の登場らしい。

 前回、道案内こそリンに頼ったが、僕の能力のみでカエデと共にこちらの世界に戻って来た。

 まだ不確実な事はたくさんあるけれど、とにかく人の行き来が可能となったという前提で、双方の世界は急ピッチで動き出してしまった。それぞれのトップ、即ち王国や教会、ギルドなどの上層部が数回に渡って、積極的に会議を行ったというのだ。

 なんか、僕って道具扱い? と、ちょっと気分が悪かったけど、そのことで声を上げてくれた人がちゃんといた。誰あろう、お祖母様である。

 実のところ、お祖母様はもちろん、教皇様、アリソンさん、そしてリンも、誰一人として、僕の能力の件は口外しなかったそうだ。

 それがなぜ、このような事態になったのか。

 どうやら教皇のあずかり知らぬところで、ソナ教とソティナルドゥ教の幹部である枢機卿ら数人が、所属国家、ギルドなどの組織へと、勝手に公表したようなのだ。

 ある程度監視されていたようだし、どこかからか情報が漏れたのだろう。

 お祖母様は、今の状態で一般公表をして、物事を進めるべきではないと強く反対した。

 なにしろ、これはほぼ僕一人に頼った計画だからだ。

 だが、これほど革新的な事案を、世界が放置してくれるはずがないのも事実で……。

 そこから繋がるのが、この魔界留学というイベントだったわけだ。

 祖母は兄である魔王の協力を得て、ひとまず僕を魔界預り、という建前で世界を黙らせたのである。

 なにしろ、異界きっての経済大国であり、さらに軍事強国だ。いまや、最大の領地を持つ帝国といえど、容易に逆らえない大国なのである。

 

 そして本日、僕達は魔界の地へと降り立ったのである。

お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ