サラマンダー戦
「で、なにか手はあるの? ジュドさんも言ってたけど、弱点を突く以外では難しいんでしょ」
簡易的なマップを見つつ、僕達はダンジョンを奥へと進んでいた。これは、ジュドのパーティが階層ボスまでたどり着いた時に、ワープ陣からの道筋をおおまかに描いたものである。
「ちょっと試したいことがあってさ。いくつか、巻物を作ってきたんだ」
この日のために、ここ数日、ちょっと巻きで頑張った。
途中まで進めていたある魔法陣の試作を、なんとか使えるまでに急いで精度を上げたのだ。これには上級生のエイミの協力も得て、かなり突貫で頑張った。もともと今年の目標にしようとしていた課題だったため、途中までは進めていたのが功を成したともいえよう。
ぶっつけ本番なのが心配なのと、後々のエイミへのお礼がなんだか心配事ではあるけれど。
その方法とは、モンスターをマヒさせて行動不能にするというものだ。
前にも使った手だが、今回のこれは攻撃魔法ではない。雷魔法に付随するオマケとしての博打要素ではなく、補助魔法としての完成版を求めたものだ。
僕の本来のテーマにも絡めて、雷に水を加えた一枚魔法陣。
他にも水系で火、風、闇などを加えた「鈍化」があるが、これはもう属性が凶悪すぎて難航している。
ということで、今回はマヒ、というか正確には感電系の魔法である。
逆鱗が弱点と言われるように、その部分はひどく軟弱で、相手が暴れていなければ簡単に剥がすことが出来る。それでも、本来なら相手の懐に入るなどということは危険極まりない行為なのだが、今回ばかりはそうも言っていられない。
僕達は、細い通路からぐんと広がる大きな部屋へと入っていった。
その中央に、大きなトカゲが丸くなって眠っている。
ひときわ大きな体と、黒っぽい深紅の鱗が波打つ身体。あれがヘルサラマンダーだろう。周りには、子分らしきレッドサラマンダーがたむろしている。
「うわぁ、アレも倒さなきゃならないのね」
「レッドサラマンダーの逆鱗も貴重品ではあるけれど、今回はそれは完全無視で。弱点バンバン狙って、出来るだけ早く倒してほしい」
大部屋の前の通路で、確認とそれぞれの役割を決めていく。
「チョビは周りを巻き込んじゃうから、ここでもお留守番ね。手を出しちゃだめだからね」
ちょっと抗議するように、チョビが頭上で足踏みをしたが仕方がない。ここでヘルサラマンダーを黒こげにでもされたら目も当てられない。
「普段なら前線だけど、カエデは今日は回復要員だから後方でお願い。ダリルは前衛のニーナを援護しつつ、向かってくる敵を魔法で撃破よろしく。ヘルサラマンダーが参戦すると面倒だから、速攻でお願い」
眠っているヘルサラマンダーに刺激を与えないように、たむろしているレッドサラマンダーの気を引いてこちらにおびき寄せて殲滅、という方法である。
もし万一、ヘルサラマンダーを起こしてしまったら、戦闘を中止して即座に撤退すること、と徹底してさっそく作戦を開始した。
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