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リュシアンの出生

 リュシアンの母、アナスタジアは四人姉妹だったが、じつは一番上の姉だけが母親が違った。

 アナスタジアの父、アドルフは王都にいる頃、すでに結婚を誓い合った女性がいたのだ。彼女はコーデリアと名乗り、学生向けの魔法道具のお店をやっていた。

 銀色の長い髪に碧の瞳がとても美しい女性だったと、アドルフは今でもたまに思い出しては、現在の妻の顰蹙を買っているらしい。

 彼女との間に女の子が授かると、アドルフはコーデリアを妻として故郷に迎える準備を着々と進めていた。しかし、その最中に彼女は子供を残して忽然と姿を消したのだ。


 リュシアンは、父の話を黙って聞いていた。

 なるほど、どうやらのろけ話じゃなくてリュシアンの話へ移行していきそうな感じである。

 先日、父に例のギルドマスターの話をしたのだが、意外なことにエヴァリストは驚かなかった。そこは笑うところじゃないのかと、何度もつっこみかけたリュシアンは肩透かしを食らった。

 どうやら笑いごとでは済まなかった。なんといっても、こうして真剣な話が始まってしまったのだから。

 正直、鬱な展開は勘弁してほしいが、これはもうノンストップだろう。


 コーデリアの残した娘シャーロットは、特異な特徴を持っていた。見たこともないような、珍しい緑色の髪だったのである。

 親族の皆は、魔族の子ではないかと疑い、気味が悪いと言って引き取るのを反対したが、アドルフはそれを押し切って彼女を家に迎えた。

 アドルフは娘として大変可愛がっていたし、のちに授かった妹たちは姉として慕っていたが、やはり親族をはじめ屋敷での風当たりは厳しかったようだ。いつもバンダナとフードで髪を隠していた。


 ジーンが、今はもうエルフの特徴を覚えてる者も少ないと言っていたが、魔族自体も伝説の存在に近いので余計に情報が混乱し、ますます疎まれる結果になってしまったのだ。

 ところが、それらがいっぺんに吹き飛ぶ事件が起きた。

 なんと噂を聞きつけた王室が、ぜひシャーロットを王太子の妃にと言ってきたのである。

 王太子は一年前に正妃を失っており、今は第二妃のみだった。つまり三人目の妃としてシャーロットは王宮に入ることになった。

 亡くなった正妃は第一王子、今の王太子エルマンの母である。そして第二妃のイザベラは、第二王子エドガーと王女二人を授かっている。

 正妃は、有名な学園都市を持つ友好国、ドリスタン王国の二の姫だった。実のところ第二妃のイザベラの方が先に婚約が決まっており、彼女は当然正妃として迎えられるものだと思っていたらしい。

 けれど蓋を開けてみれば、自分は第二妃という扱いだった。

 イザベラは北の僻地の小さな王国の王女だったが、巨大な学園都市を持つ大国の姫とでは、結果は火を見るより明らかである。

 

 そこへもってきて、降ってわいたような三人目の妃。正妃がいなくなって、あわよくば自分が正妃の座につけるのではないかと期待した彼女の心中は穏やかではなかったに違いない。

 なぜシャーロットが王家に迎えられたのか、それはまさに彼女の容姿がすべてを物語っていた。


「エルフの血脈だったから?」

「それもかなり色濃く特徴を示した容姿の……、な」


 リュシアンが口を挟むと、エヴァリストは深く頷いた。

 この国の始祖は、エルフを妻に迎えたという記述があるらしい。だから王族には代々エルフの血が受け継がれてきたというのだ。そのおかげで王族ははるかに高い魔力と、わずかに長い寿命を持ってこの地を盤石に治めてきた。

 エルフが姿を現さなくなって約三百年、その血は薄れていき人間の記憶からも遠ざかっていった。エルフだけではない、獣人や魔族、その他あまたの亜人たちが、謎の事象によって多く姿を消し、そして記憶の彼方へと追いやられていったのだ。

 そこへもってきて、王家が望んだシャーロットという娘の登場。なんだかブリーディングのようで気分はよくないが、貴族や王家では珍しいことでもないのだ。確かに何代も続く魔術師の家系など、そうでないと高い魔力を保ち続けるのは難しいだろう。

 とはいっても、実のところシャーロットの場合、半分は一目惚れもあったようだ。噂の真偽を確認するために密偵が派遣されていたのだが、やがて報告だけでは我慢できなくなった当時王太子だった国王は、数日に渡りシャーロットを覗き見ているうちにすっかり恋に落ちたそうだ。

 なんだかストーカーっぽいな、と思わず呆れたように笑ったリュシアンは、不意にあることに気が付いて真顔になってしまった。


(って、あれ? もしかしなくても、その人僕の……)

お読みくださりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「やがて報告だけでは我慢できなくなった当時王太子だった国王は、数日に渡りシャーロットを覗き見ているうちにすっかり恋に落ちたそうだ。なんだかストーカーっぽいな、」 ずばり、ストーカーです。
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