豪邸訪問
休養日、すなわち日曜日。僕とニーナは、学園都市きっての高級住宅街に位置するとあるお屋敷のどでかい玄関の前に立っていた。
「何度見てもスゴイ門構えだね」
「ほんと、私の母の宮殿でさえここまで大きくないわよ」
そう言ってニーナがため息をついている。大国のお妃さまの宮殿より大きいって……それに、これって本宅じゃないよね。アリスの家がどれほどの金持ちなのか、まったく想像もつかない。
少なくとも、ウチよりは裕福なのは間違いなさそうだ。
「ふわあ……大きなお屋敷、というかこれってお城? え、アリスってお姫様だったの?」
大きな門を見上げて、口をぽかんと開けているのはカエデである。
「違う違う、カエデ。いいか、アリスの父親はな、この辺り一帯を金の力で牛耳っているドンだ。だから、お嬢ってやつだな」
「変なことを吹き込むな、カエデが信じるだろうが。まあ、ある意味間違ってないけど」
すっかりお上りさんのカエデを、ダリルが面白がって揶揄うのを、エドガーが呆れたように窘めた。
なんだか最近この三人、アリスも加えると四人だが、とても仲がいい。ここ数か月は、教養科を終えた僕達と行動を別にする分、四人は一緒にいることが多いせいもあるのだろう。
僕には何かと尖っているダリルも、何故かカエデに対しては優しく、エドガーとも意外にもうまくやっているようである。もちろん、人付き合いの上手なアリスは言わずもがなである。
というわけで、なんだか全員揃ってアリスの家への豪邸訪問という感じになっている。もともとは、ニーナと僕で行くつもりだったのだが、エドガーは無関係でないので声を掛けることにした。そして、一緒にいたカエデもそれに乗っかり、じゃあせっかくだからとダリルも誘ったら珍しく頷いたのである。ただ、ダリルはこれがパーティのダンスの練習会だとは知らないので、もしかしたらただのグループの集会だと思っているかもしれない。
後で知ったら激怒しそうだが、面白いから黙ってよう……だって、僕だけ恥をかくのは面白くないじゃないか。
ダンスの練習なんて、僕だって本当は逃げたいんだからね。
ニーナはお姫様で当然ダンスは上手だろうし、エドガーはあれで王子様だ。少なくとも、幼いころから仕込まれているに違いない。アリスも家にダンスホールがあるくらいだからちゃんと踊れるのだろう。
実家にいるとき、ダンスの教師からことごとく逃げてたことをちょっと後悔した。
そして、門番である使用人が、大きな門の隣の小さな通用口のようなところを開けると、アリスが裾の長いドレスを着た姿で僕達を出迎えてくれた。
「みんな、いらっしゃい。すぐにホールの方へ案内するわね」
お読みくださりありがとうございました。




