フラッグシップクラス2
魔法研究科は、修了学科による昇級ではなく研究成果によるものだ。王立魔法研究施設への推薦もあり、それこそ本当のエリートコースである。
研究者になりたい訳じゃないけど、魔法研究の最高峰というだけあってもちろん興味はある。
「でも、ほら。今年進めようって言ってた、通常魔法の魔法陣なら、写生できる人がいるかもしれないわね」
「そうだね。でも、今回は補助魔法を進めようと思ってるから、これもやっぱり不人気枠だし……どうかなあ」
もし成功したとしても、大した評価を受けない可能性があるのだ。
結構、画期的だと思うんだけどな、補助魔法。
複数の属性が必要になりがちな補助魔法が、一枚の巻物に収められるのは有意義な試みだといえる。もともと不人気の原因は、生活魔法と同様で、得られる効果と、必要な労力が釣り合ってないことがあげられるのだ。
ともあれ僕としては、色々試したいこともあるので楽しみな研究題材の一つである。
「そういえば、あっちでの戦いでも役に立ったって言ってたものね」
「うん。補助魔法ってあまり研究されてないからさ、やれることが多くて楽しみだよ」
向こうでの出来事は、ニーナを始め、エドガー、アリス、ダリルには一通り話してある。その際の、ダンジョンでの遭遇戦において、補助魔法の付加効果が大いに役に立ったことも。
けれど、僕がワクワクしているほどには、皆にはあまり響いてない様子だった。そんな反応からも、世間一般の補助魔法の地位の低さがうかがえたのだ。
「もちろん、ニーナ達は違う魔法陣の研究をしてもいいんだよ。なにも僕に付き合うことないからね」
「あら、私は面白そうって思ったわよ。どうせやるなら他人がやってないこと、やりたいじゃない? 私も、賛成よ」
チームのみんなとは、また話し合って今年度のテーマを決めることになる。カエデは、補助魔法の有用性を目の当たりにしてるので、否やはないだろうけれどダリルは文句の一つも言いそうだ。
「明日、薬草園での作業のついでに、ダリルに討伐した魔物の解体を手伝って貰うんだけど、ニーナもくる? こっちでは見たことない種だよ」
「もちろん! というか、私は朝から行くつもりだったのよ。薬草畑での作業もあるでしょう?」
そろそろ午後の授業が始まるので、どちらからともなく立ち上がって僕らは談話室を出た。
「ん? いやいや、いいよ。だって、畑仕事だよ」
「何を言ってるの、私は助手なのよ。ちゃんとカエデに聞いて知ってるんだから、例の土を入れるつもりでしょ? 一人じゃ大変じゃないの」
ニーナはクラフトの方の助手のはずだけど……まあいいか。
もともとニーナだって薬草学科は取ってるはずだから、お姫様とはいえ畑仕事だってしてるはずだし、それなら大丈夫だよね。
「そうだ、私とリュシアンの畑を統合してもらった方が都合がいいかも……学園長に相談してみようかな」
そして広大なキャンパスを、それぞれ違う学科への道へと分かれて歩き出した途端、後ろからブツブツとそんな独り言が聞こえてきたのだった。
いつもお読みくださりありがとうございます。
※書籍版におけるエピソード追加に伴う多少の差異があります。
少し説明を加えながら、書いていきます。




