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カエデの行く先2

「えっ!? が、学校があるの?」

「そりゃあるわよ。なによリュシアン、貴方まさか魔界はゾンビみたいなのが歩き回ってるような場所だと思ってないでしょうね」


 いや、……うん、そこまでじゃないけど、でもなんかすみません。


「魔術も、魔技も、それこそ人族が得意とする創作や技術開発なんかも、今ではこっちの方が進んでるかもしれないわね。私もこちらに来て、驚いたもの」


 どうらや魔界にある学校はかなりレベルが高いらしい。同時に、ドリスタン王国が誇る学園都市に劣らぬ、かなりのセレブ仕様の学校でもある。当然ながら、皇都からわざわざやって来る生徒もいるし、多くの貴族や、成績優秀な学者の卵が通う学校だというのだ。


「そ、それはもちろん魔界の学校は望むところですが、あそこは簡単には入れないと聞きますし、それにその……私たち一族は、やはり罪人扱いなので」

「それは帝都でのことでしょう? 魔界は、その管轄にはありませんし、学費にしたところで特待生の枠もあります。なにより強力なコネも、ほら、ここいるし」


 お祖母様は、そう言って自分を指差している。

 魔界は、帝国とも教会とも完全に切り離された国家だ。経済でも学力でも武力でも完全に独立した形態を確立し、領地こそ帝国の十分の一もないが、その力は拮抗しているといってもよい。

 そして、魔王の妹であるお祖母様はコネとしても申し分ない。


「もちろん能力がなければ入学はできないけれど、謂れなき罪状や、偏見くらいなら蹴散らすくらいの威力はあるわよ」


 そのありがたい申し出に、アリソンさんは思わず涙ぐみそうになりながら娘の方を顧みた。もちろん、アリソンさんに否やはないだろう。なにしろこちらにいたまま皇帝の手の届かない場所、それも望んでいた学校へ行かせてやれるのだから。


「え……私、でも」


 とはいえ、カエデにしてみればどちらへ行こうと、ほとんど未知の世界に変わりはない。僕と一緒に来れば、文字通りの異世界だし、魔界にしても全く違う新天地には違いない。

 アリソンさんにしてみれば、まだ魔界の方がまだマシだと考えるかもしれない。少なくともあそこには魔族が大勢いるし、そういう点での偏見はないだろう。


「お母さん、私……」


 そしてしばらく沈黙していたカエデは、一つの結論を出した。

お読みくださりありがとうございます。

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