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リュシアンとカエデ

「偶然じゃないってこと?」

「ええ、カエデさんが発したSOSを、リュシアンが無意識に受信したってことでしょうね。これも血が呼び合ったっていうのかしら」


 僕とカエデは何となく顔を見合わせる。確かに話しを聞く限り、かなり遠縁ではあるけれど、親戚といえなくもない。


「まだ聞きたいことある?」

「……あの、エルマン様のことを」


 ずっと、気になっていたことだ。色々な事実に戸惑いながらも、これだけは聞いておかなければと心に留めていた。エドガーにも報告したいし、これまでなにかと存在は感じてはいたが、なにしろ僕は会ったことがないのだ。

 いや、正確には赤ん坊の頃に会ったことがあるようだけど、もちろん覚えてはいない。


「ああ、そうね、忘れてたわ。あなたにとってはお兄さんですものね。もちろん、元気にしてるわよ。でも、今はある人の依頼でダンジョンに潜っているのよ。私たちに、つまらない低階層の調査をさせてね」


 ちょっと恨み節がこもった口調だったが、どうやら最初に罰……と口を滑らせていたことから、あの低階層の調査は、なにやら無理矢理押し付けられた罰ゲームのようなものだったらしい。


「もともと彼も、そちらの世界へ帰る手段を探していて、私やリンと出会ったんだけど……まあ、いろいろあってね。でも、いずれ会うこともあると思うわ」


 口ぶりからして、エルマン様は本当なら帰ることも出来るようだが、あえてこちらの世界に留まっているという印象である。誰かの依頼だと言っていたし、何やらこちらで自主的に動いているようだ。

 それ以上、彼の話をする気はないのか、お祖母様は次は? という顔をしている。


「あとは帰る方法、かな?」

「まずはそれを聞かれると思ったけど、それなら簡単よ。リンと一緒なら渡れるわよ。それにリュシアン、貴方はもう一人で渡ることが出来ると思うわ」


 薄々は気が付いているでしょう? とお祖母様は苦笑する。

 確かに心当たりはあるのだけど、何しろコントロールが出来たためしがない。自分の意思で出来る気がしないんだけど……。


「さあ、話しはおしまいかしら? じゃあ、準備を始めなさい」

「おしまいっていうか、え?……準備って」

「もちろん、帰る準備に決まっているでしょう」

「え!? って今から?」


 なにを思ったのか、お祖母様は急に畳みかけてきた。


「そうよ、だってこちらに来たのだってアクシデントだったんでしょう? それなら、ご家族の方に何も言わずに来ちゃったんじゃないの? みんなとても心配してるわよ」

「うん、それはそうなんだけど……でも」


 確かにいきなり行方不明になって、家族はめちゃくちゃ心配してるだろうし、早く帰って安心させてあげたい。でも、それにしたってせっかくお祖母様に会えたのに……。

 正直なところ、こちらの世界のあれこれをもっと見たり聞いたりしたい。なにしろ、書物でしか知らないことがここにはリアルに転がっているのだ。少なくない好奇心が疼かないわけはない。

 それに、お祖母様はなぜ急に……?


「あ、あの!」


 すると、 そこで、アリソンさんが勢いよく立ち上がった。

お読みくださりありがとうございます。

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