初心者ダンジョン
想像通り、かなり強かったゾラのおかげもあり、僕達は順調に二階層を攻略することができた。
ロックワームを始め、やたら毛むくじゃらの毛虫モンスターや、足の長い蜘蛛のようなモンスター、軒並み昆虫タイプは気持ち悪い系が多く、別段虫が苦手というわけではない僕でもちょっぴり萎えた。
また、爬虫類系も豊富におり、トカゲ型のモンスターは大型なものが多く、そして種類も多かった。
これだけの小規模ダンジョンにしては、モンスターの種類が多すぎるような気がするのだけど、気のせいなのだろうか?
ともかく弱いモンスターばかりだったので、遭遇率は高いが、それほど苦労せずに倒すことが出来た。地図によると二階層には空白地帯はないようなので、そのまま休憩なしで三階層まで行くことになった。
三階層は湿度が高く、なんだかじめっとした場所のようだ。
気のせいなどではなく、天井からは時折大きな水滴が落ちてくる。そのためか、天井にはまるでつららのようなものがゴツゴツと垂れ下がっていた。
なんだっけ、鍾乳石? だったかな。
「あれ? この匂い……」
「どうかしたの? リュシアン」
「磯の香りがする」
「そうね、ちょっとだけだけど……海が近いからかしら?」
確かに、このダンジョンがあるのは港町へと続く街道の近くだ。でも、まだ結構な距離があったと思うんだけど。
「確かこの先に、かなり大きな空白地帯があるの。そこからは三差路に続く道だから、ちょっと休憩しない?」
「そうだね、ずっと連戦だったし、一度休もうか」
このダンジョンが、新人研修に使われている理由の一つは、構造が単純なこと。
そして、もう一つがモンスターが多いことだ。これほどの小規模ダンジョンにしては、モンスターの遭遇率が高く、数も多いので、新人研修に結構な人数を送り込むことができるのだ。
さらに新人にうってつけなのが、レベルが低く性質的に厄介な敵がいないこと。
しかし、それは飽くまで新人にダンジョンが何たるかを教える教材として優良な、という意味である。
通常のダンジョンとしてはまったくもって魅力がない。段階的にレベルを上げるだけの階層がなく、モンスターの素材もそこそこ良い物が手に入るが、それはやっぱりそこそこでしかないのだ。先ほどのワームの土ように、ダンジョン産でレア度は高いが、なにしろ個体が小さく、売るだけの量をちまちま集めるのはかなり面倒である。僕みたいに自分で使う量を採集する分にはいいけどね。
ということで、冒険者たちのレベル上げにも素材集めにも中途半端で、結局新人のための練習場にしかならなかったというわけである。
「ここだね。あ、ちゃんと竈がある」
「普通のダンジョンでは大きな竈は厳禁なんだけど、ここはとにかく天井が高いし広いからね」
それに、ダンジョン内なのに風を感じる。比較的浅い階層なので、どこかで地上と繋がっている場所があるのかもしれない。ともかく、僕達は問題の地底湖へ行く前に、一旦休憩をとることにしたのである。
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