カエデのルーツ
「まあ、なんて格好なのカエデ。お客様に失礼でしょ、着替えてらっしゃい」
洗い物を済ませ、娘の分の朝食をテーブルに置いたアリソンさんは、指をクルッと回して、すぐさま回れ右をさせた。寝ぼけ眼だったカエデは、母の叱責に「気を付け」をすると、指示通りに回れ右をして部屋に飛び込んだ。
ちらっとゾラを見たことから、おそらく僕はともかく成人男性のゾラの前で、ほぼ寝間着はマズイと気が付いたのかもしれない。
疲れもあって寝過ごしたせいで、いささか寝ぼけた感もあったのだろう。神殿への旅にしろ、見知らぬ土地への転移にしろ、昨日までは極度の緊張状態だったのだ。母親に会って、一気に気が緩んでしまっても仕方がないのかもしれない。
「おはようリュシアン、ゾラさん」
あらためてテーブルについたカエデは、昨日まで着ていた服とは違うが、それでもどこか和テイストなすっきりとした装いだった。アリソンさんも同じような恰好だが、アルヴィナではカエデのような恰好の人はいなかったので、この服装は彼女たちの家族特有のものかもしれない。種族的なものか、家系的なものかはわからないけど。
カエデとアリソンさんは、親子だけど種族が違うからね。
「え? 曾祖父は人族だったの?」
「ええ、そのせいもあって曾祖父は、同じ人族の英雄王である祖父に憧れててね。彼が好んで身に着けていた衣装を模して着用するようになって、なんとなく代々うちではこの恰好なのよ」
例の英雄王は人族、カエデの家系は彼が娶ったうちの一人、魔族である鬼人族の妻の系譜だ。その息子、カエデからみて高祖父は種族こそ鬼人族だったが人族とのハーフ、そしてハーフエルフを妻としたため、その息子は人族判定だったというわけだ。彼は鬼人族を娶り、彼らの子供、つまりカエデが以前話していた祖父は、種族としてはダークエルフなのだという。
「祖父は判定上はダークエルフなんだけど、人族の血の影響が強かったらしく、姿はほとんど人族で、見た目も年相応なんだけどね」
僕も人族判定の、エルフの先祖返りって言われてるし、種族判定はあまりあてにならないよね。
もともと僕たちの鑑定って、物やモンスターに対しては正確だけど、人族やエルフ、亜人もだけど、その辺の数値は過去の偉人たちの計算式に則った後付けのものだって説が有力だ。
元始記憶層から読み取れないのは、僕達はなんでも神が後から放った箱庭の住人だから、とのことだが……その辺は眉唾っていうか、お伽噺っぽいけど。
話は逸れたけど、カエデが朝食を食べている間に、僕たちは今朝の出来事をカエデに話した。乙女と会話したという段になると、アリソンさん同様、驚きのあまり大きな瞳を何度も瞬いた。
「さすがリュシアンというか、貴方ってほんとおかしな人ね」
いきなりのおかしな人判定には物申したいが、問題はそこじゃない。
「とにかく乙女が腹を立てているのは、何も水を汚染した人だけじゃないってことなんだよ」
カエデは、母の焼いたパンケーキにバターをたっぷり乗せて頬張った。僕もさっき食べたが、ふんわりしていてすごく美味しかった。ハチミツかけたらもっと美味しいだろう、とちょっと思った。
もぐもぐ口を動かしながらも「え?」と顔を上げたカエデに、僕は続けて口を開く。
「村人たちは湖の水は使わないと言っていたらしいけど、乙女いわく、どうやら何人かは夜中に汲みに来たようで、それらを全部追い返したって言ってたから」
乙女の口ぶりから、彼女なら、村の井戸の浄化も可能なのではないかと思われた。それでも、今もって放置しているのがその証拠である。
自分たちからは動かず、教会の言いなりでなにも行動を起こさない村人。彼女がつむじを曲げても仕方がないのかもしれない。
お読みくださりありがとうございました。
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剣と魔法の世界なのにステータスほぼ1! 頼みの魔力も0……あるのは、もともと持ってた霊能力のみ。主人公で二十歳の有栖川 真人は、理不尽に連れて来られた異世界で、いきなりイケメンケモ耳の奴隷になったり、次々と出会う霊のお願いや依頼を解決したり、冒険者になったり、だけどなんだかんだとのんびり旅しちゃう感じの話。
まだまだ序盤で全然強くないマヒトですが、これから徐々に……かも?




